可動コイル形計器
動作原理と構造的特徴
可動コイル形計器(Permanent Magnet Moving Coil Instrument)は、強力な永久磁石が作る均一な磁界中に配置された可動コイルに電流を流し、その際に生じる電磁力(ローレンツ力)を利用して指針を駆動する指示計器である。
動作原理は「フレミングの左手の法則」そのものであり、コイルに流れる電流の大きさに正比例した回転トルクが発生する。このトルクと、渦巻きバネ(制御バネ)の復元力が釣り合った位置で指針が静止する構造となっている。これにより、回転角に関わらず磁束密度が一定となり、目盛りが等間隔(均等目盛)になるという、読み取り精度上の大きな利点を持つ。
分流器・倍率器による測定範囲の拡大
可動コイル自体は、数μA~数十mA程度の微弱な電流しか流せない繊細な構造である。したがって、実用的な電圧・電流を測定するためには、外部回路によるレンジ拡大が必須となる。
- 分流器(シャント抵抗):
電流計として使用する場合、可動コイルと並列に、抵抗値が極めて低いマンガニン線などの抵抗器を接続する。測定電流の大半を分流器側にバイパスさせ、その端子電圧(一般的に50mVまたは60mV)を可動コイルで測定することで、数千Aの大電流測定を可能にする。大電流回路では発熱を伴うため、放熱への配慮が必要である。 - 倍率器(直列抵抗):
電圧計として使用する場合、可動コイルと直列に高抵抗を接続し、電圧を分圧してコイルに微少電流を流すことで測定する。
交流測定と波形歪みの影響
可動コイル形計器は、電流の流れる向きが一定である直流(DC)専用である。交流(AC)をそのまま入力すると、トルクの向きが交互に反転するため、指針はゼロ点付近で振動してしまい測定不能となる。
交流を測定する場合は、ダイオードを用いた「整流器」を内蔵し、一度直流に変換してから測定する(整流形計器)。ここで重要な設計上の留意点は、整流形計器はあくまで「平均値」を感じて動作しているが、目盛板は正弦波の「実効値」に換算して校正されている(正弦波の波形率1.11倍を乗じている)。
したがって、インバータ回路やサイリスタ制御回路など、波形が歪んだ交流を測定すると、この前提条件が崩れるため、大きな指示誤差が生じる。真の実効値を測定する必要がある場合は、可動鉄片形などの他方式を選定しなければならない。
設備設計・運用における選定基準
可動コイル形計器は、可動鉄片形と比較して以下の特性を持つため、用途に応じた使い分けが求められる。
- 高感度・高精度:消費電力(VA)が極めて小さく、精密測定に適している。
- 極性の確認:直流専用であるため、接続時はプラス・マイナスの極性を厳守しなければならない。逆接続すると指針が逆方向に振り切れ、破損の原因となる。
- 機械的強度:可動部が軽量で繊細なため、過大な衝撃や振動には弱い。盤の扉開閉衝撃が直接伝わる場所への設置は避ける等の配慮が必要である。












