過電流強度
過電流強度の定義と変流器における役割
過電流強度は、変流器などの電力機器が短絡事故時に流れる大電流(短絡電流)に対して、電気的および機械的に損傷することなく耐え得る限度値を示す指標である。電力系統において短絡事故が発生すると、定格電流の数十倍から数百倍に達する数千アンペア以上の大電流が瞬時に流れる。
変流器は保護継電器や計器に電流を供給するため、主回路に対して直列に接続される。そのため、事故電流が直接変流器の一次巻線を通過する。この過大な電流による異常な発熱と強力な電磁機械力に耐え、変流器が破壊されないよう、施設される系統の最大短絡電流に応じた適切な過電流強度を持つ製品を選定する。
熱的過電流強度と機械的過電流強度の違い
過電流強度の検討においては、電流の熱作用に対する「熱的過電流強度」と、電磁力に対する「機械的過電流強度」の2つの側面から評価を行う。
熱的過電流強度は、短絡電流が流れた際に生じるジュール熱によって、巻線の温度上昇が絶縁物の許容最高温度を超えない限度を示必要があり、通常、1秒間に耐えられる電流の限度値として規定される。機械的過電流強度は、短絡電流の最初の半波において発生する最大の非対称短絡電流による電磁力に対して、巻線の変形や機器の破損が生じない限度を示す。
JEC規格等において、機械的過電流強度は熱的過電流強度(実効値)の2.5倍の波高値に耐えるよう設計されている。
過電流強度の計算式と選定条件
過電流強度は、定格一次電流に対する倍数で表される。選定にあたっては、系統の三相短絡電流と、上位の遮断器または保護継電器の動作時間(遮断時間)に基づいて、熱的および機械的な計算を行う。
例えば、定格一次電流100A、短絡電流12.5kAの系統において、事故電流の遮断時間を0.2秒とした場合の過電流強度の検討式は以下の通りとなる。
- 機械的検討:過電流強度 = 短絡電流 / 定格一次電流 = 12.5[kA] / 0.1[kA] = 125[倍]
- 熱的検討:過電流強度 = √遮断時間 × 短絡電流 / 定格一次電流 = √0.2 × 12.5[kA] / 0.1[kA] = 55.9[倍]
標準定格からの機種選定プロセス
算出された過電流強度の倍数に基づき、実際の製品ラインナップから適切な定格を選定する。日本国内の変流器における過電流定格(倍数)は、一般的に「40倍」「75倍」「150倍」「300倍」が標準仕様として規格化されている。選定においては、熱的検討と機械的検討で算出された値のうち、大きい方の数値を満たす直近上位の機種を選定する。
前項の計算例では、熱的検討で求められる強度は55.9倍であるが、機械的検討では125倍が求められる。両者を比較すると機械的強度の条件が厳しいため、125倍を満たす直近上位の「150倍」の変流器が選定候補となる。定格一次電流100Aで150倍の過電流強度を持つ場合、その変流器は実質的に15kAの短絡電流に1秒間耐え得る性能を持つ。
大型変流器における表記形式と保護協調
事故電流は保護継電器と遮断器の連動により即時遮断されるのが原則であるため、短絡時間が1秒未満となる場合が多く、多くの場合において選定結果は機械的強度によって決定される。定格一次電流が300Aを超えるような大型の変流器の場合、過電流強度は倍数ではなく「25kA」や「31.5kA」といった具体的な短絡電流値で直接表記される。
変流器の選定においては過電流強度だけでなく、大電流領域における鉄心の磁気飽和特性を示す「過電流定数」も考慮される。短絡電流が流れた際、変流器が早期に磁気飽和して二次電流が正確に出力されないと、保護継電器が正常に動作せず事故の遮断に失敗する。過電流強度によって変流器自体の熱的・機械的焼損を防ぐと同時に、十分な過電流定数によって保護継電器への正確な電流伝達を確保し、システム全体の保護協調を成立させることが求められる。












