かご形誘導電動機
かご形誘導電動機は、かごの形をした回転子を持つ交流電動機であり、三相電力を供給することで回転力を得る動力機器である。電動機のなかでも構造が簡単であり、高い安定性と耐久性を持っているため、建築設備の送風機やポンプ、工場の搬送設備などで広く普及している。
直流電動機などの複雑な構造を持つ電動機では、回転部分に電力を供給するためのブラシや整流子といった消耗部品が設けられている。かご形誘導電動機ではこれらの摩擦部品が不要な構造となっているため、定期的な部品交換の手間が省け、メンテナンス性が高いという利点がある。
インバーター制御の普及と高調波への配慮
かつて誘導電動機は細かい速度制御が難しいとされていたが、現在ではインバーター装置の普及により、供給する電力の周波数を変えることで回転速度の制御が容易となった。これにより、空調用のファンや給水ポンプにおいて、必要な風量や水量を細かく調整する省エネルギー運転が標準的な設計手法となっている。
インバーターを多用する上で注意すべき点は、電源系統における高調波の発生である。インバーター回路が電力を変換する過程で電圧や電流の波形が歪み、電気設備全体に悪影響を及ぼす高調波ノイズが流出する。そのため、インバーター制御を導入する際は、同時に直列リアクトルや高調波抑制フィルタを設置して、電源系統の汚染を防ぐ対策を講じる必要がある。
始動電流の大きさと配電設備への負担
かご形誘導電動機の動作特性として、電源を投入して回転を始める始動時に大きな電流が流れるという点がある。電圧を印加した瞬間から定格速度に至るまでの間、一時的に定格電流の5倍から8倍もの始動電流が発生する。
この大きな始動電流は、電力を供給する発電機や変圧器に対して負担となる。長時間にわたって始動電流が流れ続けると、回路を保護している配線用遮断器が短絡事故と誤認して不要なトリップを引き起こす原因となる。これを防ぐため、遮断器の容量選定においては、始動時の大電流を許容できるモーターブレーカーを採用するなど、電動機の特性に合わせた保護機器の選定が求められる。
容量に応じた始動方式の使い分け
始動時の大電流による電源設備への負担を軽減するため、電動機の容量に応じて始動方式を使い分けるのが一般的な設計手法である。
- 全電圧始動:電源の電圧をそのまま直接電動機に印加する方式である。構成が単純であるが始動電流が大きいため、出力が7.5キロワット程度までの小型機種に限って適用される。
- スターデルタ始動:始動時は固定子巻線をスター結線として電圧を抑え、回転が上がった後にデルタ結線に切り替える方式である。始動電流を3分の1に抑えることができるため、11キロワットを超えるような中型以上の電動機で広く採用されている。
- コンドルファ始動:単巻変圧器を用いて始動時の電圧を下げる方式である。スターデルタ始動よりも滑らかに始動でき、始動トルクの調整も可能であるため、大型の設備や始動時の負荷が大きい機械に用いられる。
保守点検と一般的な故障要因
構造が簡単で壊れにくいかご形誘導電動機であるが、長期にわたって安定稼働させるためには定期的な保守点検が必要である。電気的な故障要因としては、湿気や結露によるコイルの絶縁抵抗低下が挙げられる。これを防ぐため、メガテスターを用いた絶縁測定を定期的に実施し、絶縁性能が保たれているかを確認する。
機械的な故障要因としては、回転軸を支えるベアリングの摩耗やグリスの劣化が多い。稼働中に異常な振動や異音が発生した場合は、ベアリングの寿命が近づいているサインである。適切な時期にオーバーホールを行い、ベアリングの交換や再塗装などを実施することで、電動機本来の寿命を全うさせることができる。
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