カクテル照明(混光照明)
2種類以上の光源を混合し、それぞれの演色性、光色の特徴を活かした配光を行う照明手法のひとつで、混光照明とも呼ばれる。野球場などのスタジアム照明にあっては、従来の白熱電球に加え、青白い光を放つ水銀灯を導入した。オレンジがかった白熱灯と水銀灯の組み合わせは、当時「カクテル光線」と呼ばれ。この手法により単一光源よりも明るさを確保しつつ、独特の温かみのある光環境を実現した。
従来から使われているHID照明では、照度と演色性は相反する性質がある。光束の高い器具は演色性が悪く、演色性の高い器具は光束が少ないという相反する性質を補うため、両方の照明器具を組み合わせて設置し、光束と演色性を補完するために用いられる手法である。
体育館の大空間では、メタルハライドランプと高圧ナトリウムランプを半数ずつ設置する例が多い。光色の「むら」が発生するため、種類の違う照明器具を大きく離隔するのは避けるべきであり、2台を1組として配置するのが原則である。
メタルハライドの高い演色性と、高圧ナトリウムランプの高い光束の利点を活かしつつ、互いの欠点を補うことで、単体照明では実現し得ない新しい光を生み出せるという利点がある。赤色の色温度を高めたければ、高圧ナトリウムの比率を高めることで調整できる。
近年ではセラミックメタルハライドやLED光源など、演色性が高く光束が多いランプが販売され、カクテル照明を行う事例はほとんどない。現代のLED照明は、単なる明るさの確保だけでなく、アリーナ全体のエンターテインメント性を高めるためにも活用されており、調光調色が可能な機種であれば、自由な点灯と消灯、減光、青色から赤色に変化する色温度の調整が自由自在であり、高度な演出も可能となっている。
体育館やスポーツ施設におけるカクテル照明は、かつての異なる光源を物理的に混ぜる手法から、LED技術を用いて光色や明るさをデジタル制御する手法へと進化している。これにより、伝統的な雰囲気を継承しつつ、より効率的で多様な演出が可能となり、スポーツイベントの価値向上に貢献している。












