インサート
コンクリート打設前に仕込む「先付けアンカー」
インサートとは、鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、鉄骨造(S造)の建物において、天井スラブや梁から配管・ダクト・照明器具などを吊り下げるための「吊りボルト(全ねじボルト)」を固定するために、コンクリート打設前にあらかじめ埋め込んでおく「雌ねじ(メネジ)」を持つ金物の総称である。
コンクリートが硬化した後にドリルで穿孔して打ち込む「あと施工アンカー」と比較して、引き抜き強度が極めて高く、躯体へのダメージ(ひび割れや鉄筋切断のリスク)がないのが特徴である。設備工事においては、スラブ配管工事と同時期に、型枠やデッキプレート上に墨出しを行い、コンクリート打設前に設置計画を完了させておく必要がある。
材質選定と防食・結露対策
インサートの材質は、一般的に安価で強度の高い「鋼製(ユニクロメッキやドブメッキ)」が採用されるが、湿気の多い場所や屋外、あるいは外壁に面する部分では、錆による腐食膨張を防ぐために「ステンレス製(SUS304)」も選定される。
また、断熱材が施工されない地下ピットや半屋外の天井スラブでは、インサート金属部が熱橋(ヒートブリッジ)となり、結露水が発生して錆汁が垂れるトラブルが多発するため、断熱性能を持つ「樹脂製」や「セラミック製」、あるいは結露防止カバー付きの製品を選定することが推奨される。
異種金属接触腐食(電食)にも注意が必要で、アルミ製のスパンドレル天井下地を吊る場合や、ステンレス製の吊りボルトを使用する場合は、絶縁ワッシャーの使用や同種金属での統一を検討する。
施工用色分けルール(カラーインサート)
大規模な建築現場では、電気・空調・衛生・建築の各業者が大量のインサートを設置するため、コンクリート打設後に「誰のインサートか」が判別不能になるトラブルを防ぐ必要がある。そのため、インサート本体の樹脂部分や釘の色を工種ごとに変える「色分け(カラー管理)」を行うのが一般的である。
標準的な現場ルールとしては、「電気:黄」「空調:緑」「衛生:青」「防災・ガス:赤」「建築(天井):白」とされることが多いが、ゼネコンや現場ごとにルールが異なる場合があるため、必ず施工要領書や全体工程会議で色の取り決めを確認・周知徹底しなければならない。間違った色のインサートを使用すると、他業者が誤って使用してしまったり、手直し工事の原因となったりする。
型枠用とデッキ用の施工性の違い
在来工法の「合板型枠」に使用する場合は、インサートを釘で打ち付けて固定する。かつては鉄釘が主流であったが、型枠解体後に露出した釘が錆びたり、作業員の怪我やケーブル被覆の損傷原因となったりするため、現在は解体後に折って除去できる「樹脂釘」や、型枠を貫通しないタイプの製品が主流となっている。
一方、高層ビルや鉄骨造で多用される「デッキプレート(金属床型枠)」では釘が打てないため、専用の「デッキ用インサート」を使用する。ドリルで下穴を開けて差し込むタイプや、溶接不要でデッキの谷部にスプリングの弾力で固定するタイプなどがある。特にスプリング式は、コンクリート打設時の圧力や作業員の歩行振動で倒れてしまうと使い物にならなくなるため、強力なバネを持つ製品や、鉄筋への結束固定が可能なタイプを選定し、打設時の転倒防止措置を講じることが重要である。












