一種耐熱形分電盤
一種耐熱形分電盤の概要と役割
一種耐熱形分電盤とは、火災発生時において、消火栓ポンプ、スプリンクラー設備、排煙機、非常用照明といった「防災負荷」に対し、定められた時間の電源供給を継続できる性能を有し、第三者機関の認定を受けた配電盤・分電盤のことである。
火災時には周囲温度が急激に上昇する。通常の分電盤では、熱により配線被覆が溶融して短絡したり、遮断器(ブレーカー)のバイメタルや樹脂部品が熱変形して誤動作(トリップ)や破損を起こしたりする。これらを防ぎ、避難と消火活動が完了するまでの間、確実に電力を供給し続けることが本設備の目的である。
耐熱性能の基準と「一種」の定義
耐熱形分電盤には「一種」と「二種」の区分が存在し、設置場所と耐熱性能によって厳格に使い分けられる。一種耐熱形分電盤は、その中でも上位の性能を持つ。
- 一種耐熱形:JIS A 1304(建築構造部分の耐火試験方法)に規定される標準加熱曲線に従い、周囲温度840℃(火災最盛期の温度)の環境下に30分間さらされても、内部機器が機能支障をきたさない構造であること。防火区画されていない一般箇所にも設置可能である。
- 二種耐熱形:周囲温度280℃の環境下に30分間耐える性能を持つ。一種に比べて耐熱性能が低いため、設置場所は「耐火構造の壁・床で区画された専用室(電気室や機械室など)」に限定される。
構造的特徴と構成部材
一種耐熱形分電盤は、840℃という極限環境から内部機器を守るため、断熱構造において特殊な設計がなされている。
外箱(キャビネット)は鋼板製であるが、その内側に「繊維混入けい酸カルシウム板」や「ロックウールボード」などの高性能断熱材が隙間なく貼り付けられている。さらに、表面には発泡性の耐火塗料が塗布される場合もある。これにより、外部からの熱伝導を遮断し、盤内温度の上昇を、内部機器の許容温度(一般に280℃以下)に抑え込む。
盤内に収納される配線用遮断器や端子台などの充電部は、通常のフェノール樹脂やABS樹脂では熱変形してしまうため、耐熱性の高いガラス繊維強化樹脂やセラミック材などが使用される。また、内部配線には耐熱電線(EM-SH-C等)を使用し、端子締付部が熱膨張で緩まないよう、スプリングワッシャー等による防振・防緩措置が徹底される。
施工上の重要管理項目:貫通部の熱処理
耐熱盤の性能を担保する上で、弱点となり得るのが「電線引込口(入線口)」の処理である。盤本体が堅牢な断熱構造を持っていても、ケーブルを引き込むための開口部に隙間があれば、そこから熱気が侵入し、内部機器に熱の影響を与えてしまう。そのため、電線貫通部には以下の施工管理が求められる。
- 耐熱シールの充填:ケーブルと開口部の隙間には、ロックウール等の不燃材を詰め込んだ上で、耐熱パテや耐火シール材を密実に充填し、外気を完全に遮断しなければならない。
- 隙間の排除:CVケーブルやFP(耐火)ケーブルのシース表面の凹凸や、多条敷設時のケーブル間の隙間は見落としがちであり、ここからの熱侵入が事故につながるため、耐火シール充填など入念な施工が必要である。
分電盤や配電盤の設計手法については分電盤・配電盤の仕組みと違いを参照。












