1回線受電
1回線受電方式の概要と基本構造
1回線受電(1回線引込)とは、電力会社の配電用変電所から、1系統の配電線のみを引き込んで電力を受給する方式である。受変電システムの構成が最も単純であり、イニシャルコストを最小限に抑えられるため、一般家庭から契約電力2,000kW未満の高圧需要家(中小規模の工場、ビル、商業施設)において圧倒的多数を占める標準的な受電形態である。
構造上、電力供給ルートが「一本道」であるため、配電線路や引込ケーブルのどこか一箇所でも事故(断線、地絡、短絡)が発生すれば、その故障点が修復されるか、電力会社側で配電ルートの切り替えが行われない限り、需要家側は完全な停電状態となる。したがって、データセンターや高度医療施設など、一瞬の停電も許されない重要施設では、この方式単独での運用はリスクが高く、UPS(無停電電源装置)や非常用発電機によるバックアップ対策が必須となる。
供給形態の分類:T分岐方式と専用線方式
同じ1回線受電であっても、変電所からの配電ルート構成により、信頼性とコストが大きく異なる2つの方式が存在する。
- 樹枝状方式(T分岐方式):
電力会社が敷設している一般配電線(本線)から、文字通り「枝分かれ」させて引き込む方式。最も安価で一般的だが、同じ配電線に接続されている他の需要家で事故が発生した場合、波及停電や、電圧降下の影響を直接受けることになる。 - 専用線方式(専線引込):
変電所から需要家まで、他と共用しない専用の配電線を敷設する方式。他需要家の事故やノイズの影響を受けにくく、電源品質とセキュリティが高い。しかし、ケーブル敷設にかかる工事負担金は需要家負担となるため、採用は大規模工場や研究所などに限られる。
運用上の制約とメンテナンス停電
1回線受電における最大の運用制約は、「設備点検時には必ず全館停電が必要となる」点である。
電気事業法に基づく保安規定により、受変電設備は定期的な点検が義務付けられている。1回線受電には予備の電源ルートが存在しないため、特高受電のスポットネットワーク方式や2回線受電(本線・予備線受電)のように、片系運転を行いつつ点検を実施することが物理的に不可能である。
設計者は、建築計画の段階で「年に一度は必ず全停電が発生する」ことを施主に説明し、停電作業中でも機能を維持しなければならない防災設備やセキュリティシステム、サーバー室への電源供給(UPSや発電機の容量選定)を計画する必要がある。
事故時の保護協調と責任分界点
1回線受電において、需要家構内で発生した事故(特に地絡事故)が電力会社の配電線へ波及すると、近隣地域一帯を停電させる「波及事故」となる。これを防ぐため、電力会社との責任分界点には、地絡保護機能を備えた開閉器の設置が事実上の義務となっている。
- PAS(柱上気中負荷開閉器):架空引込の場合、構内第1柱の最上部に設置する。SOG制御装置と組み合わせ、構内事故を検知すると即座に開放し、電力会社側への波及を阻止する。
- UGS(地中線用ガス開閉器):地中引込の場合、キャビネット内などに設置する。役割はPASと同様である。
これらの保護装置は、電力会社の配電用遮断器よりも早く動作するよう整定(保護協調)をとる必要があり、設計・施工における最重要管理項目のひとつである。
多回線受電との比較と選定基準
信頼性を向上させるための「本線・予備線受電(2回線受電)」や「スポットネットワーク受電(3回線受電)」は、1回線が喪失しても別回線から給電を継続できるため、停電リスクは劇的に低下する。しかし、受電設備スペースの増大、引込開閉器や保護継電器の複雑化、そして工事負担金の高騰を招く。
一般的なオフィスビルやマンションでは、コスト対効果の観点から1回線受電を採用し、非常用発電機でリスクヘッジを行うのが合理的である。一方で、半導体工場や都市銀行のデータセンターなど、電源の信頼性が事業継続(BCP)に直結する施設では、コストよりも安全性やBCP性能を重視することも検討すべきである。
契約電力やデマンド管理については契約電力とデマンド管理を参照。












