位相(位相角)
周期的に変化する波の、任意の起点に対する相対角度。位相は、電圧と電流の波形のずれを表す指標となり、交流回路では重要な要素となる。直流回路では電圧をかければすぐに電流が流れるが、交流回路では、コイル(インダクタ)やコンデンサ(キャパシタ)といったリアクタンス成分の存在により、電圧の波形と電流の波形の間に「ずれ」が生じる。この「ずれ」の度合いを示すのが、位相や位相角である。
電気設備分野では通常、電圧を基準にして電流がどの位置にあるかを示すことになる。周期的に繰り返す交流の波形(正弦波)の、サイクル内における特定の時点や位置を示しており、波形は時間とともに変化するが、その変化のどの段階にあるか示される。
回路にコイル成分があると電圧に対して電流が遅れ、コンデンサ成分があれば電流は進むことになる。電気回路に接続される負荷は多くが電動機であり、コイル成分が多いため遅れ力率となる。対して、白熱電球や電熱器は電圧と電流の位相にずれは発生せず「力率1」の理想的な負荷となる。
- 抵抗 (R):電圧と電流は同位相(位相差0°)である
- コイル (L):電流の位相が電圧に対して遅れ、理想的なコイルでは90°遅れる
- コンデンサ (C):電流の位相が電圧に対して進み、理想的なコンデンサでは90°進む
電圧に対して電流が遅れている場合は「遅れ力率」、電流が進んでいる場合は「進み力率」と表現し、無効電力の発生に影響するため、進相コンデンサによって力率改善を行うといった対策が行われる。位相角が持つ大きな要素として、電力効率への影響が挙げられる。
交流電力には、実際に仕事をする「有効電力」と、磁場や電場を作るだけで消費されない「無効電力」がある。電圧と電流の位相角が大きいほど、無効電力が大きくなり、電力の利用効率を示す「力率」が悪化する。
力率は、位相角θを用いてcosθで表される。力率が1、位相角0°に近いほど効率が良い。工場やビルでは、主に電動機に含まれるコイル成分により遅れ位相が発生するため、進相コンデンサを挿入して位相を進ませ、力率を改善することで電力損失を減らし、電気料金の割引を受けるといった運用が一般的に行われている。
位相角
位相角は、この位相を定量的に、角度で表現したものである。交流の波形を、円周上を回転するベクトルの動きとして捉えることで、ずれの大きさを角度で明確に示せる。通常、電圧の波形を基準(0°)とし、それに対する電流の遅れや進みを角度で表現する。
単相は位相が一つ、三相は位相が三つとなっており、120°ずれた位相により回転磁界の発生に影響を及ぼす。












