分配器
信号の均等分割とインピーダンス整合
分配器は、テレビ共聴設備や宅内配線において、1本の同軸ケーブルから伝送されてきた高周波信号を、複数の出力系統に均等なレベルで分けるために使用される伝送機器である。入力された信号エネルギーを、接続される出力端子の数に応じて等しく分割する機能を持ち、2分配器から8分配器まで、用途に応じたラインナップが存在する。
類似した機器に「分岐器」があるが、これは幹線ケーブルから一部の信号のみを取り出し、残りの信号を幹線として後段へ送るための機器であり、出力レベルが不均等である点が異なる。対して分配器は、全ての出力端子に対して同一の分配損失を与える設計となっており、一般住宅やマンションの各居室へ信号を届ける末端部分で主に使用される。また、分配器内部では75Ωのインピーダンス整合が行われており、入力信号を効率よく出力側へ伝達する回路構成となっている。
分配損失と適正な機種選定
分配器を選定する際は、必要な出力数に最も近い分配数の製品を選ぶことが鉄則である。分配器を通過する際に生じる信号の減衰量を分配損失と呼ぶが、これは物理的なエネルギー保存の法則に従い、分配数が増えるほど損失は大きくなる。
理論的には、2分配であれば入力信号の電力は半分(-3dB)になり、4分配であれば4分の1(-6dB)、8分配であれば8分の1(-9dB)となる。実際には回路内部の挿入損失や整合損失が加わるため、カタログスペック上の減衰量は理論値よりも大きくなる。
将来の増設を見越して過剰に多い分配数の機器を設置すると、無駄な信号減衰を招き、末端のテレビで受信レベル不足となり、ブロックノイズやブラックアウトを引き起こす原因となる。したがって、設計段階でレベルダイヤグラムを作成し、許容される損失範囲内で適切な分配数を選定しなければならない。
電通方式と衛星放送対応
BSデジタル放送や110度CS放送などの衛星放送を受信する場合、パラボラアンテナに搭載されたコンバータ(LNB)へ電源を供給する必要がある。この電源供給の経路を確保するため、分配器には「全端子通電形」と「1端子通電形」の2種類が設定されている。
かつてはリビングなど特定のテレビのみ電源を送る1端子通電形が主流であったが、現在は複数の部屋で独立して衛星放送を視聴するスタイルが一般的であり、どの部屋のテレビからでもアンテナ電源を供給できるよう、全ての出力端子から入力端子へ電流が流れる全端子通電形を選定するのが標準となっている。全端子通電形は、複数のテレビから同時に電源が供給されても問題が起きないよう、逆流防止用のダイオードが内蔵されている。
終端処理と反射ノイズ対策
分配器の出力端子が使用されずに空き端子となる場合、そのまま開放状態で放置してはならない。高周波信号が流れる伝送路において、終端が開放(インピーダンス無限大)されていると、信号がその端面で反射し、元の経路を逆流する「反射波」が発生する。この反射波が入射波と干渉すると定在波が生じ、デジタル放送信号の品質(MER/BER)を著しく劣化させる要因となる。
特に、3224MHzまでの高い周波数帯域を使用する4K8K衛星放送においては、この反射ノイズの影響が顕著になるほか、開放端子からWi-Fiや携帯電話の電波が侵入(飛び込み)したり、逆にテレビ信号が漏洩して通信障害を引き起こしたりするリスクがある。これらを防ぐため、未使用の端子には必ず75Ωのダミー抵抗(終端器)を接続し、電気的な整合を取ることが施工上の重要事項とされている。
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