フロアダクト工事
フロアダクト工事の概要と構造
フロアダクト工事とは、コンクリート床スラブの中に、断面が半円形または長方形の鋼製ダクトを埋設し、これを幹線や分岐配線の通路として利用する施工方式である。
一般的に、床下に碁盤目状にダクトを配置し、交差部分に「ジャンクションボックス」を設けることで、配線の分岐や引き出しを行う。フロアダクト工事は、絶縁電線を直接ダクト内に敷設することが認められており、オフィスビルや百貨店など、広範囲に電源や通信線を供給する必要がある施設で採用される。
類似の工法に「セルラダクト」があるが、セルラダクトが構造材であるデッキプレートの溝を配線路として利用するのに対し、フロアダクトは配線専用の独立したダクト部材をコンクリート打設前に敷設する点が異なる。近年はOAフロア(フリーアクセスフロア)の普及により採用頻度は減少しているが、ロビーや重量物が設置されるエリアなど、OAフロア化が困難な場所では重要な工法である。
建築構造への影響と断面欠損
フロアダクトはコンクリート内部に埋設されるため、建築構造上はスラブの「断面欠損」として扱われる。
構造耐力を維持するためには、ダクトの上部に十分なコンクリートかぶり厚さを確保する必要がある。そのため、通常のスラブ厚(例えば150mm程度)では納まらず、スラブ厚を増大させるか、あるいはダクト埋設部分のみふかし厚を設けるなどの対応が求められる。これは建物全体の重量増(死荷重の増加)や、階高設定、建築コストに直結するため、構造設計者との綿密な調整が不可欠である。
また、ダクト同士が交差するジャンクションボックス部分は、特に断面欠損が大きくなるため、補強筋の配置やボックス高さの調整について十分な検討を要する。
電気設備技術基準に基づく施工要件
電気設備の技術基準の解釈において、フロアダクト内部での電線接続(結線)は原則として禁止されている。電線の接続や分岐を行う場合は、必ず点検口を備えた「ジャンクションボックス」内部で行わなければならない。これは、保守点検の容易性を確保し、接続不良による発熱事故を防ぐためである。
フロアダクト工事は、使用電圧が300V以下の低圧屋内配線に限定される。ダクト本体は金属製であるため、漏電時の感電防止を目的としてD種接地工事(接地抵抗値100Ω以下)を施すことが義務付けられている。また、ダクトの接続部分は電気的に完全に接続されるよう、ボンド線などでボンディングを行い、電気的導通を確保する必要がある。
コンクリート打設時に、ノロ(セメントペースト)や水分がダクト内部に侵入すると、配線通路が閉塞したり、絶縁被覆を劣化させる原因となる。接続部や継ぎ目にはシール材やテープ巻きを施し、浸入防止措置を講じることが施工管理上の重要項目である。
配線敷設が可能な施工方法の一覧については電線管の種類と規格を参照。












