本線予備線受電方式
本線予備線受電方式の概要と特徴
本線予備線受電方式とは、電力供給の信頼性を高めるために採用される受電方式の一つであり、常用として使用する「本線」と、緊急時に使用する「予備線」の2回線を引き込む仕組みである。一般に「2回線受電」とも呼ばれ、単独回線受電と比較して格段に高い信頼性を確保できるため、工場の製造ライン、データセンター、大規模病院など、長時間の停電が許容されない重要施設で採用される。
通常時は本線から電力を供給し、予備線は無電圧状態で待機させておくのが一般的である。本線側の配電線事故やケーブル故障によって停電が発生した際、受電遮断器を予備線側へ切り替えることで、短時間での復旧が可能となる。
「本線予備電源」との定義の違い
実務上、混同されやすい用語として「本線予備電源」があるが、厳密には電力の供給元によって区別される。
- 本線予備線:同一の変電所から、異なる配電線ルートで2回線を引き込む方式。変電所自体が全停電した場合は送電不可となるリスクがある。
- 本線予備電源:異なる変電所から、それぞれ回線を引き込む方式。一方の変電所が機能停止しても電力供給が継続できるため、より信頼性が高いが、受電コストは増大する。
都市部の大規模ビルなどでは、さらに信頼性を高めるために3回線以上で受電し、無瞬断での切り替えを可能にする「スポットネットワーク受電方式」が採用されることもあるが、コストや設備スペースの観点から、中規模以上の需要家では本線予備線方式が現実的な選択肢となることが多い。
インターロックと切替シーケンス
本線予備線受電方式を構築する上で最も重要なのが、インターロック(相互拘束)の構築である。本線と予備線の両方の遮断器(VCB)が同時に投入(ON)されると、電力会社の系統内で異なる回線同士が需要家構内を通じて短絡(ループ)してしまい、波及事故につながる危険性がある。
これを防ぐため、本線側のVCBが「切(OFF)」の状態でなければ、予備線側のVCBは「入(ON)」にできないような電気的・機械的な制御回路を組む必要がある。停電発生時の動作フローは以下の通りとなる。
- 1. 不足電圧継電器(UVR)が本線の停電を検出する。
- 2. 本線側の受電用VCBを開放(OFF)する。
- 3. 本線VCBの開放を確認した後、予備線側のVCBを投入(ON)する。
この一連のシーケンス制御により、安全かつ確実な電源切り替えが実施される。
導入に伴うコストと瞬断への対策
本線予備線受電方式を採用する場合、信頼性と引き換えにコスト負担が発生する。電力会社との契約において、通常の本線契約(実量制など)に加え、予備線に対しても「予備電力」としての基本料金が設定されることが一般的である。常時使用しない回線に対しても維持コストが発生する点は、導入検討時の重要な要素となる。
また、技術的な制約として「瞬断(瞬間停電)」が避けられない点が挙げられる。前述の切替シーケンスにおいて、本線遮断から予備線投入までの間には、数秒から数十秒程度の無電圧時間(タイムラグ)が発生する。
照明や動力機器であれば数秒の停電は許容される場合も多いが、サーバーや医療用電子機器などは一瞬の停電でもシステムダウンを招く恐れがある。そのため、本線予備線受電方式を採用する場合であっても、重要負荷に対してはUPS(無停電電源装置)を設置し、回線切り替え中の電力をバックアップする対策が不可欠である。












