ベント型蓄電池
ガスを外部へ放出する開放型鉛蓄電池
ベント型蓄電池は、充放電の化学反応に伴って発生するガスを、容器に設けられた排気栓(ベントプラグ)から外部へ放出する構造を持つ鉛蓄電池である。一般的には「開放型」や「液式」とも呼ばれる。電槽内には電解液として希硫酸が満たされており、過充電時や浮動充電中に水の電気分解が起こることで、酸素ガスと水素ガスが発生する。
容器内部の圧力が上昇して破損するのを防ぐため、発生したガスは速やかに外部へ逃がす仕組みとなっている。この際、ガスと共に微細な硫酸ミスト(酸霧)も放出されるため、蓄電池室の壁や天井、収納ラック、接続端子などが酸によって腐食しやすいという環境上のデメリットがある。そのため、設置場所には耐酸塗装を施したり、ステンレス製の架台を使用したりするなどの建築的な配慮が求められる。
水素ガスの滞留防止と換気計画
ベント型蓄電池から放出される水素ガスは可燃性であり、空気中に4%以上混入すると爆発限界に達する。密閉された室内で水素ガスが滞留することは極めて危険であるため、建築基準法および消防法に基づき、専用の換気設備を設けて屋外へ排出する措置を行わなければならない。
換気ファンは原則として24時間の常時運転とし、万が一の故障に備えて予備機を設けたり、気流が滞留しないよう給気口と排気口を対角に配置したりする設計が必要となる。この換気設備の運転にかかる電気代や、ファン自体のメンテナンスコストは、蓄電池設備のランニングコストとして無視できない要素となる。
定期的な補水とメンテナンス
ガスの放出は、電解液中の水分が失われていることを意味する。ベント型蓄電池を使用し続けると液面が低下し、極板が露出して劣化や発火の原因となるため、定期的に精製水を補充する「補水作業」が不可欠である。
電槽は透明または半透明の樹脂で作られており、外部から液面レベル(最高液面と最低液面)を目視確認できるようになっている。多数のセル(単電池)が直列に接続されている場合、一つひとつキャップを開けて補水を行うのは多大な労力を要するため、一括補水装置(補水タンクと配管システム)を導入して省力化を図る事例も多い。近年では、これらのメンテナンス手間を嫌い、触媒栓を用いて水を還流させる方式や、完全メンテナンスフリーの「制御弁式(シール式)蓄電池」へ移行する傾向にある。
極板構造による用途の分類
ベント型蓄電池の内部構造(極板)には、主に「ペースト式」と「クラッド式」の2種類があり、負荷特性に応じて使い分けられる。
- ペースト式(HS形など):鉛粉を練ったペーストを格子状の基板に充填したもの。表面積を大きく取れるため、短時間で大電流を取り出す放電特性に優れている。主にUPS(無停電電源装置)や非常用発電機の始動用バッテリーとして採用される。期待寿命は5~7年程度である。
- クラッド式(CS形など):ガラス繊維などのチューブ内に活物質を充填した構造。活物質の脱落が少なく、深い充放電や長期間の使用に耐える耐久性を持つ。主に電話交換機や通信設備のバックアップ電源、フォークリフトの動力源として採用される。期待寿命は10~15年程度と長い。












