演色性(演色評価数)
演色評価数(Ra)の定義と算出メカニズム
演色性とは、照明光が物体を照らした際、その物体の色をどれだけ忠実に再現できるかを定量化した指標である。JIS Z 8726(光源の演色性評価方法)に基づき、基準光(自然光や黒体放射)で照らしたときの色を100とし、試験対象の光源での色のズレ(色差)を減点法で算出したものが「平均演色評価数(Ra)」である。
算出には、R1からR8までの8種類の「試験色」が用いられる。これら8色の色ズレの平均値がRaとなる。重要な技術的留意点は、Raはあくまで「平均値」であり、例えば赤や青が極端に悪くても、他の色が良ければRaの数値は高くなるということである。したがって、Raが高いからといって全ての色が美しく見えるとは限らない。
特殊演色評価数(Ri)とR9・R15の重要性
一般的な設計ではRaのみが重視されがちだが、食品売り場、美術館、医療現場、化粧品売り場など、厳密な色再現が求められる空間では、Raに加え「特殊演色評価数(Ri)」の確認が不可欠である。
特殊演色評価数はR9~R15の7色で構成される。特に重要なのが以下の2つである。
- R9(赤色):鮮やかな赤を示す指標。一般的な白色LED(青色LED+黄色蛍光体)は、スペクトル成分として赤が不足しており、Raが80以上であってもR9がマイナス値を示す製品も存在する。肉や刺身の鮮度、血液の色味に直結するため、非常に重要な指標となる。
- R15(日本人の肌色):健康的な肌の色を再現する指標。R15が低いと、顔色がくすんで不健康に見えるため、鏡前照明や接客スペースではR15の高さを重視した器具選定が必要となる。
高演色化と発光効率のトレードオフ(背反)
照明設計における注意点として「演色性を高めると、発光効率(lm/W)が低下する」という物理的なトレードオフ関係がある。
LEDで演色性を高めるには、不足している赤色や緑色の蛍光体を多く配合する必要がある。しかし、複数の蛍光体を通すことで光の吸収ロスが増大し、器具から取り出せる光束(ルーメン)は、一般タイプと比較して15%~30%程度低下する。
そのため、美術館や高級ブティックのような特殊用途の内装において、Ra95以上の高演色器具を採用する場合、照度基準を満たすためには器具台数を増やすか、ワット数の大きな器具を選定しなければならず、イニシャルコストおよびランニングコストが悪化するおそれがある。
設計者は、空間の用途や色再現の重要度に配慮し、省エネルギー基準のバランスを考慮し、過剰スペックにならないよう適切なRaを選定することが望まれる。
新たな評価軸:TM-30(Rf・Rg)への移行
Raは1960年代に制定された古い指標であり、パステルカラーのみで評価するため、彩度の高い原色を正しく評価できないという欠点がある。これ補うため、北米照明学会(IES)が提唱するTM-30という新基準が普及しつつある。
- Rf(忠実性指数):99色の試験色を用い、Raよりも厳密に色の再現性を評価する。
- Rg(鮮やかさ指数):色がくすむのか、より鮮やかに見えるのかを評価する。Rgが100を超えると、基準光よりも鮮やかに(派手に)見えることを意味する。
アパレル店舗などでは、単に忠実な(Rfが高い)だけでなく、商品を魅力的に見せるために、あえて彩度を高める(Rgが高い)光源を選定する手法も採られている。
照明設計に関する情報については照明設計の基礎知識と設計手法を参照。












