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🏠 電気設備の知識と技術 > 電気設備用語辞典 > USB PD
USBケーブルを用いて、大きな電力による急速充電を行うために定められた規格で、USBを用いた電力拡張規格のひとつである。USB Power Delivery(USB PD)は、従来のUSB充電規格よりもはるかに高速かつ大電力での充電を可能にする規格であり、スマートフォンからタブレット、そしてノートパソコンに至るまで、様々な機器で採用が広がっている。対応するコンセント充電器(ACアダプター)は現代のデジタルライフにおいて必須アイテムとなりつつある。
スマートフォンやモバイルバッテリー、タブレット端末、ノートPCなど、ユーザーが持ち運ぶ通信端末にはバッテリーが搭載されており、充電インフラの整備は不可欠となっているが、必要な出力も年々大きくなっており、大容量バッテリーに高速充電することが求められている。
USB PDは、USB Type-Cポートを通じて最大100W(最新のExtended Power Range規格では最大240W)もの電力供給を可能とする規格である。この大電力により、電力消費の大きいノートパソコンも家庭用コンセントから直接充電できるようになった。また、機器と充電器間で最適な電力を自動的に調整する仕組みを備えており、安全かつ効率的な充電を実現している。
従来のUSB規格では、通信端末として代表的な携帯電話の800mAh~900mAhといった小型のバッテリーに充電するのがシーンとして多く、最大2.5W(5V/500mA)という非常に小さな電力で十分であった。
現在では、スマートフォンやタブレット端末に4,000~5,000mAhの大型バッテリーが搭載され、モバイルバッテリーでは10,000m~20,000mAhといった製品も一般化しているため、出力の小さな充電器では充電に必要な時間が著しく長くなり、1日で充電し切れないということも考えられる。これに対応するため、18Wを超える大出力な充電器が販売されるようになった。
大出力の製品では、100Wもの電力をUSB端子から得ることが可能となっており。近年では、最大で240Wもの超急速充電が規格として定められている。
重要なのは充電器の出力電力である。充電したい機器が必要とする最大W数以上の製品を選ぶ必要がある。ノートパソコンは60Wから100W程度、スマートフォンやタブレットは18Wから30W程度が一般的である。複数の機器を同時に充電する場合や、将来的に高出力の機器への買い替えを検討している場合は、余裕を持ったW数の製品を選ぶと良い。
複数のデバイスを同時に充電したい場合は、USB-Cポートや従来のUSB-Aポートを複数搭載した製品が便利である。ただし、複数ポート使用時の総出力や各ポートの最大出力は製品によって異なるため、仕様をよく確認する必要がある。
GaNは次世代の半導体材料であり、これを採用した充電器は、従来のシリコン製充電器に比べて小型・軽量ながら高出力を実現している。持ち運びを重視するユーザーには強く推奨できる。なお国内で販売される電気製品は、電気用品安全法に基づきPSEマークの表示が義務付けられている。安全な製品を選ぶためにも、必ずこのマークが表示されているか確認すべきである。
USBからPDを用いた急速充電を行うためには、充電器、ケーブル、端末のすべてが対応していなければならず、いずれかが旧規格であった場合は、最も遅い速度が充電速度として設定される。充電器が65W出力可能としても、USBケーブルが急速充電に対応していなかったり、通信端末の最大充電速度が18Wといった場合、出力は最も低い18Wが設定される。
USB PDに対応した機器同士は、充電に対する電圧や電流をどう設定するかを通信しており、充電器からの過剰な電力を受け入れないよう安全対策が施されている。
60Wや100Wを超える急速充電を行う場合、USBケーブルについても対応品を選定しなければならない。60Wを超える電力を送電するUSBケーブルは、eMarkerと呼ばれるチップが搭載したものでなければならないと定められており、ケーブルが対応していない場合は100Wによる出力が実現できない。
ケーブルの発熱は電流Iと抵抗Rによって変動するものであり、発熱量 = I^2×R で計算することができる。大きな電流が流れることで発熱量は2乗で増加するため、電気抵抗による発熱の懸念には十分な注意を要する。
電流と抵抗が発熱に影響するものであり、USBケーブルは電力ケーブルなどと違い、心線が細く抵抗値が大きくなりがちである。また、繰り返しの抜き差しや、長期間利用による劣化、折れたり踏まれたりすることによる電気抵抗の増加なども、異常発熱が懸念される。