SPD
SPDの概要と防護原理
SPD(Surge Protective Device)とは、落雷や開閉サージなどによって発生する過渡的な異常電圧(サージ)から、電気機器や電子機器を保護するための装置である。以前は避雷器(アレスター)と呼ばれていたが、現在では国際規格に合わせてSPDという名称が一般的に使用されている。
通常時、SPDは絶縁状態(ハイインピーダンス)を保っているが、設定された電圧を超えるサージが侵入すると瞬時に導通状態(ローインピーダンス)となり、過大な電流を大地へバイパスさせる。これにより、回路にかかる電圧を機器の耐電圧以下に抑制し、焼損や誤動作を防ぐ仕組みとなっている。
直撃雷と誘導雷に対するクラス選定
JIS C 5381-11では、設置場所や想定される雷サージの種類に応じて、3つの試験クラスが定義されている。
クラスI SPDは、建物の受電点や主分電盤に設置される。避雷針(外部雷保護システム)を持つ建物に直撃雷があった場合、雷電流の一部が接地系から電源ラインへ逆流してくる恐れがある。このとき発生する巨大なエネルギー(10/350μs波形)に対応するため、クラスIの設置が推奨される。
クラスII SPDは、分電盤や制御盤に設置される。配電線近傍への落雷による誘導雷や、クラスIで低減された後のサージ(8/20μs波形)を処理するために用いられる。一般的なビルや工場における雷対策の主力となる区分である。
クラスIII SPDは、コンセントや機器の直近に設置される。クラスIIを通過してしまった残留サージや、内部発生サージから、パソコンやサーバーなどの敏感な電子機器を保護するために使用される。
配線長と電圧防護レベル
SPDを設置する際、その効果を最大限に発揮させるためには配線長の管理が求められる。サージ電流が流れる際、配線のインダクタンスによって電圧降下が発生し、これがSPDの制限電圧に加算されて機器に印加されるためである。
この加算電圧を抑えるため、SPDの分岐点からSPD本体を経由し、接地端子に至るまでの往復の配線長を合計50cm以下にすることが推奨されている。物理的に50cm以下にすることが困難な場合は、V結線(ケリー渡り)を採用することで、分岐線の長さを実質ゼロにし、配線インダクタンスの影響を軽減する施工方法も有効である。
SPD分離器と故障時の安全性
SPDは、許容を超える雷サージを受けた場合や、経年劣化によって内部素子(バリスタなど)が短絡故障を起こす可能性がある。短絡故障が発生すると、電源から商用電流となる続流が流れ続け、発火や発煙に至るリスクがある。これを防ぐため、SPDには必ず分離器を直列に設置する。
かつては配線用遮断器(MCCB)やヒューズが代用されていたが、雷サージでは切れずに、SPD故障時の短絡電流のみを素早く遮断するという協調動作が難しかった。そのため現在では、サージ耐量と続流遮断性能を両立させた専用のSPD分離器や、分離器を内蔵したSPDを採用することが一般的となっている。これにより、SPDが故障した際も安全に回路から切り離され、システム全体の停電事故を防ぐことが可能となる。
弱電・通信設備の保護
雷サージは電源線だけでなく、電話線、LANケーブル、同軸ケーブル、信号線などを通じても侵入する。特に監視カメラや屋外センサーなどは落雷の影響を受けやすいため、電源用SPDだけでなく、それぞれの信号線に対応した通信用SPDを設置し、侵入ルートごとの多重防護を行う計画が望ましい。












