アンダーカーペット配線
アンダーカーペット配線の概要と構造的特徴
アンダーカーペット配線とは、フリーアクセスフロア(OAフロア)が敷設されていない既設オフィスビルや店舗等の改修工事において、床スラブとタイルカーペットのわずかな隙間を利用して電源や通信線を敷設する配線工法である。
本工法で使用されるケーブルは、導体を薄い帯状に圧延加工し、高耐久の絶縁体と保護層でラミネートした「フラットケーブル(平型ケーブル)」である。厚さはわずか1mm〜2mm程度であり、上からカーペットを敷設しても歩行感に違和感が生じず、露出モール配線のような段差による躓き事故を防止できる利点がある。
配線は厚さ1mm程度のフラットケーブルが用いられ、カーペットの下部に敷き込んでも歩行感が変わることがない。
デスク配置がアイランド状となっている部分への電源供給にも適しており、柱に接していないデスクや、受付機械のような単独機器への電源供給に適している。施工方法も容易であり、タイルカーペットを1列で剥がして、配線を敷設して復旧するという手順で導入できるため、改修工事などでも対応できる。
ケーブル構造は、充電部(導体)の上下を金属製の接地層(シールド)で完全に挟み込む多層構造となっており、万が一、画鋲や釘がケーブルを貫通した場合でも、導体に触れる前に接地層と短絡し、直ちに漏電遮断器をトリップさせることで感電や火災を防ぐ安全設計がなされている。
電気設備技術基準における「平形保護層配線工事」
電気設備技術基準および内線規程において、「平形保護層配線工事」として定義され、その適用には他の配線工法よりも厳しい制約が課されている。
使用電圧は300V以下に限定され、対地電圧も150V以下であることが求められるため、一般的な単相3線式100V/200V回路での使用が前提となる。また、施設場所は「点検できる隠蔽場所」かつ「乾燥した場所」に限られ、水気のある場所や結露の恐れがあるコンクリート直下などへの敷設は厳禁である。
電路には必ず感度電流の小さな漏電遮断器(地絡保護装置)を設置し、ケーブルの接地層にはD種接地工事(接地抵抗100Ω以下)を施すことが義務付けられている。これは、薄膜絶縁であることによる機械的損傷リスクを補うための必須要件である。
適用可能な施設と禁止場所の明確化
アンダーカーペット配線は、保守管理者が常駐し、適切な管理が行き届く業務施設での使用を想定している。したがって、不特定多数が出入りする場所や、就寝を伴う場所、重量物の移動が激しい場所では使用が禁止されている。
- 使用禁止場所:住宅、アパート、ホテルの客室、病院の病室、学校の教室、危険物取扱所、重量物が通過する車路、床暖房設置箇所など。
- 使用可能場所:事務所、店舗の売り場や事務室、ホテルのフロント内、展示場のブース内など。
これらの制限は、家具の頻繁な移動によるケーブルの圧壊や、就寝中に短絡火災が発生した際の避難困難リスクを排除するためのものである。
施工上の留意点と接続処理
施工にあたっては、通常のVVFケーブルやIV線からフラットケーブルへ変換するための「ジョイントボックス」を壁際などに設置する。床面へのケーブル固定は専用の強力粘着テープを用い、ケーブル同士の交差は、厚みの増加と発熱を避けるため原則として行わないこととし、やむを得ない場合は専用の交差用部材を使用すると良い。
コンセントの取り出しには、専用の「フロアボックス(取り出しボックス)」を使用する。これはカーペットを切り欠いて設置するが、数センチの突起となるため、歩行の妨げとならないよう、デスクの下や什器の陰など、動線を外した位置に計画することが設計上の鉄則である。また、キャビネットや金庫などの重量物をケーブル上に設置することは、絶縁破壊の原因となるため、避けるよう計画する。












