アンナイト照明(光補償装置)
アンナイト照明の概要と必要性
アンナイト照明(光補償装置付放電灯)とは、水銀灯、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプなどのHIDランプ(高輝度放電灯)を使用した照明器具において、瞬時電圧低下(瞬低)や一時的な停電によりランプが立ち消えした場合に、即座に点灯して照度を確保するための補助光源(ハロゲン電球等)を内蔵した照明システムである。
HIDランプは、一度消灯すると発光管内部の蒸気圧が高温・高圧状態となるため、再始動(再点灯)させるためには温度が下がるまで5分~15分程度の冷却時間を要する物理的特性がある。この間、工場や体育館などの施設が完全な暗闇(ブラックアウト)になることを防ぐため、即時点灯が可能な白熱電球やハロゲン電球を同一灯具内に併設し、HIDランプが安定点灯するまでの「つなぎ」として点灯させるのが本装置の役割である。
動作原理と回路構成
アンナイト照明の内部回路には、主ランプ(HID)への通電電流やランプ電圧を監視する「電流検出リレー」や「電圧検出ユニット」が組み込まれている。動作シーケンスは以下の通りである。
- 始動時・再始動時:電源投入直後や瞬低による消灯時は、HIDランプにアーク電流が流れていない(ハイインピーダンス状態)。これをリレーが検知し、補助光源(ハロゲン電球)側の回路を閉じて点灯させる。
- 安定点灯時:HIDランプの放電が開始され、電流が安定して流れ始めると、リレーが作動して補助光源回路を開放(消灯)する。これにより、無駄な電力消費と熱の発生を抑制する。
高天井に設置されることが多いため、補助光源には小型で高出力な「ミニハロゲン電球(100W~500W程度)」が一般的に採用される。
LED化による技術の淘汰
近年、照明の主流となったLED照明は、半導体素子であるため、電源投入と同時に100%の明るさで点灯が可能であり、瞬低後の復旧も瞬時に行える。HIDランプのような再始動待ち時間が存在しないため、アンナイト照明のような複雑な補償装置は不要となった。
現在、新規設備でアンナイト照明が採用されるケースは皆無に近く、既存のHID設備をLED化(リニューアル)することで、瞬時再点灯機能と省エネルギー化を同時に実現するのが一般的である。
「保安灯」と「非常用照明」の法的区別
アンナイト照明の機能は、あくまで商用電源が生きている状態での「不意の消灯対策(保安灯)」であり、建築基準法で定められた「非常用照明装置」とは明確に区別される。
非常用照明は、火災等による「停電時」に、内蔵バッテリーまたは予備電源により30分以上点灯することが義務付けられている。一方、アンナイト照明は商用電源を用いて点灯するため、全停電時には機能しない。したがって、避難誘導のための非常用照明の代替としてアンナイト照明を設置することは法的に認められないため、設計時には用途の混同がないよう注意が必要である。
水銀灯などを含むHID照明についてはHIDランプの基礎知識を参照。












