電気設備の知識と技術 > 電気設備用語辞典 > アーク放電
いくつか存在する「放電」と呼ばれる現象のひとつで、熱電子を大量に放出し、かつ光の放射も強いという特徴がある。鉄などの溶接や、照明器具の発光などアーク放電を用いた技術は幅広くあるが、電気事故によって発生する場合もある。発生したアークをいかにして消滅させるかが、遮断器などでは遮断性能のひとつとして求められている。
水銀灯などはアーク放電を利用した照明器具のひとつであるが、電極の発熱や、空気の絶縁破壊を伴う発光方式であることから、電気回路に与える負荷が大きく、消費電力や始動電流が大きい。現在ではこのような発光原理を用いた照明具はあまり使われず、LED光源を用いた照明器具への置き換えが進んでいる。
アーク放電発生時の電圧は比較的低めであり、大電流が流れている状態である。身近な例では、コンセントを通電状態のままに抜き取れば、アーク放電を瞬間的に視認でき、すぐに消失する。供給されている電圧が低ければアーク放電は継続できないため、家庭用コンセント程度であればアーク放電はすぐに失われる。
低圧または高圧の電線路を保護するためには遮断器が用いられるが、電流が流れている状態を強制的に切り離す遮断器は、アークを消滅されるための機能が搭載されている。
近年は事故のために使われなくなった絶縁油方式のほか、不活性ガス内や真空中で遮断を行う方式や、圧縮空気の吹付けなど、アークを消滅されるための技術が多数開発されており、対応する電圧や規模によって使い分けがなされている。
アーク放電による発熱は1,000℃を超えるため、配線器具や電気機器に対する熱損傷を与える。配電盤など密閉されたケーシング内部でアーク放電が発生した場合、温度上昇によって内圧が上昇し、高温となったガスが周辺に放出され極めて危険である。
アーク放電は、直流回路の接点開閉でも発生する現象であり、発熱によって接点が局部的に摩耗したり、カーボン皮膜の付着を引き起こし、接点不良によるリレーの不動作を引き起こすおそれがある。
アーク放電は、誘導性負荷が含まれる電気回路において、接点の開閉による逆起電力を原因として発生するのが代表的である。一般的に用いられるモーターやソレノイド、変圧器、照明器具など電気機器のほとんどが誘導性負荷であり、開閉を行えば逆起電力は避けられない。
誘導性負荷が大きい場合は、火花消去器を搭載して対策する。コンデンサなど容量性負荷が大きい場合は、サージ・サプレッサーなどが用いられる。
ガス蒸気や粉塵内など、爆発を引き起こすおそれがある場所で使用する制御機器などは、電子回路から発生する微小なアーク放電であっても、着火する危険性が高いため、接点を不活性ガス中に密閉するといった方法で、可燃物との離隔を図っている。
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