電気設備の知識と技術 > 電気設備用語辞典 > アイボルト
配電盤や分電盤の上部に取り付けるリング形状の金物であり、搬入時にクレーンフックやロープ、スリングを掛けるための鋼製金物のひとつ。配電盤や分電盤の上部に取り付けることが多く、搬入や搬出、移動の際にはアイボルトを活用して搬入作業が行われている。人の手で搬入するのが難しい重量物では、上部にリング付きボルトを設けて、ユニック車やクレーンで運搬するというのが一般的に行われている。
アイボルト本体は鉄素地にユニクロメッキや亜鉛ドブ漬けによるメッキを施したものや、ステンレス製の製品が一般的である。サイズは小型のものではM4から、大型ではM64、M80、M100といった超大型の製品まで幅広く存在する。
アイボルトの強度は、配電盤や分電盤の荷重に十分耐えるサイズとしなければならない。変形や脱落によって、吊荷が落下するおそれがあり大変危険である。特に、アイボルトは重量物を吊り上げるという用途に用いられることが一般的なので、破損時に発生する重量物落下事故は致命的な問題につながりやすい。
アイボルトの使用可能な荷重には安全率が定められているとしても、重量オーバーの選定をすることは避けなければならない。クレーンなどでは地切り時に衝撃を伴う荷重が掛かるため、安全率を見込んだ選定であっても破損するおそれがあり大変危険である。
例えば、M12のアイボルトは垂直吊りで220kgf、M16のアイボルトは垂直吊りで450kgf程度の使用荷重となっているため、分電盤などを吊り上げる際には吊り上げ対象の本体重量と比較して、重量過多にならないよう計画しなければならない。2~3tの重量があるような重量機器に対しては、使用荷重が3,400kgfのM42のアイボルトを複数設けるなどして、安定した吊り上げを可能としている。
なお、アイボルトは1本で垂直吊りをした場合と、2本取り付けて45°斜め吊りをした場合の強度を同じとして規定している。複数のアイボルトを設けても、強度が向上するものと考えてはならない。
盤製作時、上部にアイボルト取付用のネジ切りをしておき、アイボルトのボルト部分をねじ込むことで取り付けを行う。屋内用のアイボルトは取り外しが可能とし、搬入後に躯体等に固定完了した時点で、アイボルトが取り付けられていた部分は腐食防止のためキャップをしておくことが望ましい。取り外し時にキズが付いた場合は、タッチアップして置かなければ腐食が進行するため、適切な処置が望まれる。
アイボルトは搬入完了後に取り外してキャップするべきであるが、屋外盤ではアイボルト部分からの水浸入のおそれがあるため、盤本体に溶接し一体化することも一般的である。この場合、アイボルトの向きや大きさを統一し、かつ分電盤と同色に塗装すると見栄えが良い。
屋外盤は風圧力を強く受ける事が多いため倒れ防止を行う必要があるが、盤の背面から振れ止め金物を固定することが多いが、アイボルトを活用して倒れ防止を図ることも行われている。
アイボルトサイズ | 垂直・45度吊りの使用荷重 [kgf] |
垂直・45度吊りの使用荷重 [kN] |
M8 | 80 | 0.8 |
M10 | 150 | 1.5 |
M12 | 220 | 2.2 |
M16 | 450 | 4.4 |
M20 | 630 | 6.2 |
M24 | 950 | 9.3 |
M30 | 1500 | 14.7 |
M36 | 2300 | 22.6 |
M42 | 3400 | 33.3 |
M48 | 4500 | 44.1 |
M64 | 9000 | 88.3 |
M80 | 15000 | 147.1 |
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