アクリル樹脂塗装
アクリル樹脂塗装の概要と化学的特性
アクリル樹脂塗装とは、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルを主成分とする重合体を結合剤とした塗料による塗装方式の総称である。無色透明で光学的性質に優れ、変色しにくいという化学的特性を持つため、照明器具のカバーやポール、配電盤の筐体塗装など、電気設備分野で広範囲に使用されている。
アクリル樹脂は、分子構造内に紫外線吸収基を持たず、エステル結合が強固であるため、紫外線による劣化が起こりにくい。これにより、従来のアルキド樹脂塗料やフタル酸樹脂塗料と比較して格段に優れた耐候性と光沢保持性を発揮する。
焼付乾燥型と常温乾燥型
設備機器に用いられるアクリル樹脂塗料は、硬化方式により大きく2種類に分類される。
- 熱硬化性アクリル樹脂塗料(焼付型):
メラミン樹脂などを架橋剤として配合し、120℃~180℃の高温で加熱硬化させる方式。架橋密度が高くなるため、塗膜硬度(鉛筆硬度2H~4H)、耐薬品性、耐汚染性が非常に高く、工場塗装される照明器具や金属製キャビネットの標準仕様となっている。 - アクリルラッカー・アクリルウレタン(常温乾燥型):
溶剤の揮発やイソシアネートとの反応により常温で硬化する方式。現場での補修塗装や、加熱できない建材の塗装に使用される。
塗膜性能とメリット・デメリット
アクリル樹脂塗装(特に焼付型)は、コストと性能のバランスが良い。メリットとデメリットは下記の通りである。
- 光沢保持性が高い:「白亜化(チョーキング)」に対する抵抗力が強く、長期間にわたり初期の美しい光沢と色調を維持する。
- 高い塗膜硬度と耐摩耗性:表面が硬く傷がつきにくいため、清掃時の擦り傷や、風による砂塵の衝突(エロージョン)に耐性がある。耐塩性も高く、沿岸部での使用にも適する。
- 耐薬品性:酸やアルカリ、中性洗剤などの薬品飛散に対して強い耐性を示す。
- 耐用年数の限界:フッ素樹脂やシリコン樹脂と比較すると耐候性は劣る。屋外暴露環境下では5~7年程度で光沢の低下が見られ始める。
- 溶剤の使用:有機溶剤を使用するため、塗装工程におけるVOC(揮発性有機化合物)排出対策が必要となる。近年は水性アクリル塗料や粉体塗料への移行も進んでいる。
素材別の下地処理(前処理)工程
塗装の耐久性は、塗料の性能以上に「下地処理」の品質に左右される。素地の種類に応じた適切な化成処理が必須である。
冷間圧延鋼板(SPCC)の場合、脱脂工程を経て、「リン酸亜鉛処理」または「リン酸鉄処理」を施す。これにより表面に不溶性の結晶皮膜を形成させ、防錆力と塗膜密着性を向上させる。その上に錆止めプライマーを塗装し、アクリル樹脂で上塗りを行う。
亜鉛めっき鋼板(SECC/SGCC)の場合、亜鉛表面は通常の塗料が付着しにくいため、物理的な目荒らしや、化学的なエッチング処理が必要となる。一般的には「ウォッシュプライマー」と呼ばれる酸性処理剤を下塗りし、亜鉛表面を微細に腐食させながら樹脂を食い込ませることで密着性を確保する。
劣化メカニズムとメンテナンス計画
アクリル樹脂塗装の劣化は、紫外線と水分による加水分解から始まる。初期段階では樹脂成分の減耗により表面光沢が低下し、進行すると顔料が表面に露出して粉状になる「白亜化(チョーキング)」が発生する。さらに放置すると塗膜にクラックが生じ、最終的に素地の発錆に至る。
一般的な屋外照明器具における塗り替え周期は5年~7年が目安とされる。(社)日本照明器具工学会のガイドラインでは、アクリル樹脂焼付塗装のポールについて7年~10年での塗り替えを推奨している。フッ素樹脂塗装に比べライフサイクルコストは不利になる場合があるため、塩害地域か、メンテナンスが容易かを考慮した選定が重要である。
ポール照明の詳細や設計方法については防犯灯の設置基準を参照。












