電気設備の知識と技術 > 電線・ケーブルの種類 > VVFケーブル・VVRケーブル
2024.10.05
VVFケーブルとは、( Vinyl insulated Vinyl sheathed Flat-type cable )の頭文字をとったケーブルの名称であり「600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル平形」のケーブルで、ビニル被覆の外側をビニルシースで覆っただけの単純構造である。
VVFケーブルは、低圧屋内配線で非常に多く使用される電線であり、15A程度までの照明やコンセント回路への電源供給用ケーブルとして普及している。空調機や換気ファンなど機械設備機器への電源供給にも用いられ、建物ひとつに対してキロメートル単位で敷設される高需要な電線のひとつである。
2心・3心・4心の3種類が生産されており、スイッチやコンセントなど用途に合わせて、心数を使い分けて配線工事を行う。心数の一つを接地線として用いることも可能であり、単相2線式の回路で3心のVVFケーブルを使用し、その内の1線を接地線とすることも可能である。
接地線用としてVVFケーブルの心線のひとつを使用する場合、シースに緑色のラインが入ったVVFケーブルを使用すると、接続間違いのリスクを軽減できる。電線メーカーもVVFケーブルの心線のひとつを接地線として利用する需要を把握しているため、接地で利用される緑色を含む電線を販売している。
VVFケーブルは、1.6mm、2.0mm、2.6mmが生産されており、1.6mm及び2.0mmのVVFケーブルが広く使用されている。盤から負荷までの距離が長かったり、負荷容量が大きい場合は電圧降下を考え、2.6mmのケーブルを用いることもある。
VVFケーブルは平形のケーブルであるが、VVRケーブルと呼ばれる丸形のケーブルも普及している。VVRケーブルは、( Vinyl insulated Vinyl sheathed Round-type cable )の頭文字をとったケーブルの名称であり「600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル丸形」のケーブルである。
ビニル絶縁体の外側をビニルシースで覆った構造をしており、VVFとほぼ変わらない。VVRケーブルは、丸型形状とするため内部に介在物が入っており、ケーブルの被覆を剥く場合は介在物の処理が必要となる。
VVRケーブルはVVFケーブルと違って丸型形状をしており、100sqや150sqなど大きな径の製品も販売されている。従来は幹線ケーブルとして利用されていたが、より機械的強度や許容電流が高い「CVケーブル」が普及したため、VVRケーブルを幹線として用いる事例はほとんどない。VVFケーブル、VVRケーブル共に、専門の電材店だけでなくホームセンターでも購入でき、入手は容易である。
VVFケーブルの表面色は、グレーだけではなく赤・青・黄色など各種カラーがある。一般的にグレー色が用いられるが、保安電源を持つ施設の場合、一般回路はグレーのケーブルとし、保安・非常回路は黄色や赤のケーブルとすれば、電源種別の判別が容易となる。
従来から、VVFケーブルの接続はリングスリーブを使用した圧着接続が行われている。最近では施工性の向上を目的に「差し込みコネクタ」なども使用される。差込コネクタは簡易に確実に固定できるとされているものの、レバーなどで電線を固定するという形状により、取り外しができる形状となっている。
リングスリーブによる圧着は、二度と取り外しができない接続方法のため、接続部に不備があった場合は切断するしかない。抜き差しができる構造そのものを、使ってはならないという事業主も多く、確実性を求めてリングスリーブを使用する事例が多い。
VVFケーブルは内線規程や電気設備技術基準において、天井の設けられている空間であれば、電線管などに収容しない「天井転がし」による敷設が認められている。何十本ものVVFケーブルが天井内に敷設されることになるが、天井内には給水管や排水管、ダクトなども敷設されているため、それぞれを整然と敷設しなければ点検や更新などで互いが干渉してしまう。そのため、ケーブルも束ねて整理することが求められる。
しかし、多くのVVFケーブルを一括で結束する場合、本数制限を行わなければケーブルの放熱が阻害されてしまい、所定の許容電流を確保できずに以上発熱となり、電線が焼けるといった事故につながるおそれがある。
VVFケーブルは、束ねる本数を5~7本程度とすれば放熱を妨げないとされている。ケーブル施工に際しては施工要領書を作成し、束ねて良い本数を周知した上で現地確認を確実に行うべきである。束ねる本数が8~10本になった場合といって、即時発火につながるとは言えないが、大きな電流を流すには不安が残るため、できるだけ少ない本数で束ねるのが望ましい。特に、分電盤の上部など多数のVVFケーブルが集中する箇所で発生しやすく、注意しなければならない。
天井内にVVFケーブルを敷設する場合、整線のために、束ねたVVFケーブルをビニルテープで巻くのは避けるべきである。ビニルテープは耐久性に乏しく熱にも弱いため、早期に粘着力を失い剥がれてしまう。壁内配線としてVVFケーブルをLGSに添わせて落とすことがあるが、ケーブルに対して直接ビニルテープ巻きしても、いずれ剥がれてしまうため避けるべきである。このような場所では電線管に収容するか、被覆付きバインド線やインシュロックを使用し、強固かつ耐久性のある固定方法とする。
VVFケーブルのうち、1.6mmの製品は許容電流が19Aと、20Aに満たないものが存在するが、20Aの配線用遮断器に接続することが認められている。これは内線規程3606-5「分岐回路の電線太さ」の3605-6表に定められているように、20A配線用遮断器に接続できる電線は「直径1.6mm」となっていることによる。これに補足して、「許容電流を満たす仕様のケーブルサイズを適用しても良い」とされている。
この仕様をもとにして、住宅用の分電盤は20Aで組み込むことが一般化されており、電灯分電盤の分岐回路にあっては、15Aのブレーカーを用いることはほとんどない。
ただし内線規程の勧告として、分岐遮断器から20mを超える敷設距離がある場合、第一分岐点までは2.0mm以上の電線を使わなければならないため注意を要する。
VVFケーブルを屋内で使用し、許容電流を超過しない安全な使用方法をしていれば、20年から30年の寿命を期待できる。しかし、適していない使用場所に敷設したり、許容電流を超過する電流を流すと、期待命が著しく減少する。
VVFケーブルは、仮設電源など一時的な使用を除き、原則として屋内使用とし屋外に露出して配線工事してはならない。ビニル絶縁ケーブルは直射日光に弱いため、数年で被覆が割れ、内部への水の浸透により絶縁の劣化を引き起こす。VVFケーブルを屋外で使用する場合は、電線管に収容するなどして直射日光を避ける。
ケーブルが寿命に至った場合でも、突然ケーブルが燃えるわけではない。ケーブルの絶縁抵抗測定を実施し、絶縁性能が失われたことが確認できればケーブルの寿命と判断する。
長期間に渡って絶縁測定を実施せず、絶縁性能が失われたケーブルを使用すると、人体や建物への漏電の原因となり、漏電部分から異常発熱により火災につながるため、定期点検を専門家に依頼するべきである。
外壁や天井の断熱材として利用される発泡ポリウレタンと、VVFケーブルは接触させないように敷設することが望ましい。特に、VVFケーブルの上から発泡ポリウレタンを吹き付けて密閉状態とするのは、厳しく避けなければならない。
断熱性能が高いポリウレタンによりVVFケーブルの放熱が妨げられてしまうこともあるが、発泡ポリウレタンの化学的特性により、VVFケーブルの絶縁性能が低下してしまうという懸念があるとされている。特にケーブル温度が高い場合に、被覆に悪影響を及ぼすという実験結果となっている。負荷の状況によってはVVFケーブルの温度が変動するため、表面に発泡ポリウレタンが付着することは望ましいことではない。
ポリウレタンが付着した状態で120℃に加熱した実験にあっては、接触していない場合よりも絶縁性能が低下したという記録があるため、絶縁不良のリスクを伴うことがわかっている。
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