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UTPケーブルとSTPケーブル

構内ネットワークで用いられるLANケーブルとして、UTPケーブルとSTPケーブルがある。UTPケーブルは、シールドを施さずに、電線同士を撚り線状に加工しているため「非シールド対撚り線」と呼ぶ。対してSTPケーブルは、被覆にシールドを施すことで「シールド対撚り線」と呼ぶ。

UTPケーブル、STPケーブルのどちらも、構内LANを構築するために使用される通信用ケーブルであり、インターネットやイントラネットを基本とした通信インフラにおいて、無くてはならない構内通信用ケーブルのひとつとなる。

ここでは、UTPケーブルとSTPケーブルの違い、選定方法や、カテゴリによる通信速度の違いなどを解説する。

LANケーブルの拡大写真

UTPケーブルとは

構内LANで広く使用されているUTPケーブルは、ツイストペアケーブルとも呼ばれ、2対の電線をペアにした4組で構成されているケーブルである。単純にLANケーブルとも呼ばれている。

シールド保護されていない通信用ケーブルであり、家庭用やオフィスビルなど、一般的な構内LAN用ケーブルとして広く使用されている。両端をRJ-45コネクタという8極8心のモジュラジャックを取り付けて通信機器に接続されるが、主にイーサネット用として使用することが多く、特別なシールド処理は施されていない。

UTPケーブルは、電線を撚ることによって内部雑音を抑制し、高品位な通信を可能にしているため、コネクタを接続する際に撚りを解きすぎてしまうと、コネクタ付近で内部雑音の抑制能力が著しく低下し、近端漏話による悪影響が発生しやすくなる。

通信が突然切断されるといった悪影響を及ぼすことがあるので、施工には注意が必要である。

STPケーブルとは

STPケーブルは、シールドが施されたUTPケーブルであり、遮へい効果によってノイズに対する耐性が高い。UTPケーブルほど普及しておらず、採用範囲は限定されている。

ノイズの多く発生する工場や研究所など、特殊な環境において利用される。STPケーブルの機能を十分に発揮するためには、「ゼロボルトの基準点」となる通信用接地(クリーン接地)を設けて接続し、接続機器全体に接地をループした状態を構築しなければならない。

基準点接地が途切れた状態で使用すると、部分的にノイズが集中するなど、STPケーブルのシールドが逆に悪影響を及ぼすことがあり、採用には十分な注意が必要である。

家庭内用途であれば、STPケーブルを使用するほどのノイズ源の存在は考えづらい。基準点接地を住宅内に用意するのは非現実的であり、かつPCやスイッチングHUB、ルーター等の機器を全てSTPケーブル仕様とするのも困難である。STPケーブルを採用するメリットはないと考えて良い。

カテゴリ7のLANケーブルを接続しようとしている写真

住宅内LANでのSTPケーブル効果

STPケーブルを使用した通信インフラを構築する場合、専用として基準点接地の確保を行い、かつルータやハブなど全ての中継機器に対して、基準点接地を確保しなければならない。

一般住宅では、漏電遮断器を安定動作させるための保安接地として「D種接地工事」が施されているが、通信機器用の専用接地は供給されていない。

保安接地のみ供給されている環境では、接地線を共用している冷蔵庫や洗濯機、電子レンジなど水回りに設けられている電気機器から発生するノイズも影響し、これが「安定した接地系統」とはいえない。

かつ、購入したルーターやハブがSTPケーブル対応でなければ、接地の循環が途切れてしまう。一般的に、下記のような状態では接地の循環は途切れる。

住宅用途で、STPケーブルの機能を十分発揮させるのは困難である。家庭環境でSTPケーブルを使用しても、データ伝送の安定化や高速化は望めないため、ケーブルの選定には注意すべきである。

カテゴリによる通信規格の違い

UTPケーブルは、保証する伝送速度や周波数のクラス分けにとして「カテゴリ」という区分がされている。カテゴリが大きいほど、高速かつ高周波帯域での伝送が可能である。ただし、ケーブルを高いカテゴリの材料としても、ネットワーク速度全体が向上するわけではない。

上位カテゴリ規格のLANケーブルは、低位カテゴリのネットワークで使用可能である。逆に、上位のカテゴリで規格された通信機器に対し、低位のカテゴリに区分されるLANケーブルを使用しても、ネットワークエラーによる切断や、十分な速度が得られないといった不具合の原因となる。

カテゴリ1(Cat1)

音声通話を適用範囲とし、20kbit/sまでの伝送速度を規定した規格である。電話用のモジュラージャックであるRJ-11は、カテゴリ1に規格されたコネクタである。4芯2対のケーブルを規定しているが、最大周波数は規定されていない。

カテゴリ2(Cat2)

ISDNやデジタルPBXなどを適用範囲とし、4Mbpsまでの伝送速度を規定した規格である。最大周波数は1MHzまで対応しており、低速データ通信用のケーブル規格となる。ケーブルは8芯4対となる。

カテゴリ3(Cat3)

10BASE-Tイーサネットやトークンリングを適用範囲とし、16Mbpsまでの伝送速度を規定した規格である。最大周波数は16MHzの性能要件を満足し、伝送性能区分は「クラスC」である。

カテゴリ4(Cat4)

トークンリングを適用範囲とし、20Mbpsまでの伝送速度を規定した規格である。新規に構成されるLAN環境は、カテゴリ5以上が一般的で、トークンリングによるLANシステムは、ほとんど使用されていない。最大周波数は20MHzまで対応している。

カテゴリ5(Cat5)

100BASE-TXイーサネットなどを適用範囲とし、100Mbpsまでの伝送速度を規定した規格である。100MHzの性能要件を満足し、伝送性能区分は「クラスD」である。

広帯域通信を行う場合には不安が残るため、カテゴリ5であればエンハンスドカテゴリ5を選定すると良い。純粋なカテゴリ5準拠ケーブルはあまり流通しておらず、カテゴリ5eと呼ばれる規格が占めている。

156MbpsのATMや、CDDIといった通信規格も、カテゴリ5のケーブルを使用して対応可能である。

カテゴリ5e(Cat5e)・エンハンストカテゴリ5

エンハンスドカテゴリ5と呼ばれるUTPケーブルである。1000BASE-Tイーサネットを適用範囲とし、1Gbpsまでの伝送速度を規定した規格である。

撚りピッチが小さく設計されており、遠端漏話の規定が加えられ、カテゴリ5ケーブルよりも性能が高くなる。最大周波数はカテゴリ5と同様に、100MHzまでの対応となる。

カテゴリ6(Cat6)

622Mbpsや1.2GbpsのATM、1000BASE-T/TXイーサネットなどを適用範囲とし、1.2Gbpsまでの伝送速度を規定したケーブルである。最大周波数は250MHzの性能要件を満足し、伝送性能区分は「クラスE」である。

ケーブルの中央に十字の介在物(セパレータ)が設けられており、損失防止が図られたUTPケーブルである。カテゴリ5やカテゴリ5eと比べ、重く曲げづらいため、施工難度が高くなる。

10GBASE-Tのネットワークに使用する場合、周波数特性の限界から、37mまでの距離であれば伝送可能とされている。37mを超過すると、エイリアンクロストークの影響により伝送品質の劣化をまねくおそれがある。

カテゴリ6a(Cat6a - Augmented Cat6)

10GBASE-T/TXイーサネットを適用範囲とし、10Gbpsまでの伝送速度を規定したケーブルである。

最大周波数は500MHzの性能要件を満足する。カテゴリ6よりも適用できる最大周波数が強化されており、37m以上では性能が保証されないCat6主体のネットワークにおいて、Cat6aを採用することで、通常の100m伝送距離を満足できる。

カテゴリ7(Cat7)

10GBASE-Tを適用範囲とし、10Gbpsまでの伝送速度を規定したケーブルである。Cat7はケーブル外装がシールド化され、UTPではなくSTPとなる。最大周波数は600MHzの性能要件を満足し、伝送性能区分は「クラスF」である。

クロストーク・ノイズに対しての耐性を高めるため撚線にシールドを施し、かつケーブル全体にもシールドが施されたSTPケーブルである。

LANケーブルを多条束ねて敷設している場合、高周波による高速通信時に互いのケーブルが干渉し、エイリアンクロストークによる通信障害が発生するおそれがある。STPケーブルとなっているカテゴリ7のLANケーブルでは、クロストークをシールドによって防止できる。

カテゴリ7の規格は、シールドが施されたケーブルであり、UTP(アンシールド・ツイストペア)の規格から外れている。自己輻射ノイズや外部ノイズにも高い耐性を示すが、通信用クリーン接地の確保、STP対応のハブ・ルーターを使用するなど、Cat6以下のUTPケーブルを使用した通信インフラと違う機器構成が必要になる。

接地が途切れた部分はノイズ集中の原因となり、遮へい効果を失う原因となる。家庭用構内LANとしてカテゴリ7のケーブルを採用するメリットはほとんどなく、過剰投資となる可能性がある。採用には慎重な検討が必要である。

LANケーブルの種類と構造

LANケーブルは、ケーブルの結線方法、単線と撚り線の違いに特性が大きく違っている。

クロスケーブルとストレートケーブルの違い

UTPケーブルの結線方法は、クロスとストレートに分類される。ストレートケーブルはネットワークカードとハブ・スイッチ・ルータなどを接続する場合に使用し、クロスケーブルはネットワークカード同士の接続に使用される。クロスケーブルはリバースケーブルとも呼ばれている。

ストレートケーブルは、コネクタの同じピン番号同士を結線したUTPケーブルである。同一方向にコネクタを並べると、同じカラーの配線が同じ並び方で結線されていることがわかる。

クロスケーブルは、コネクタのピン番号を交差させて結線したUTPケーブルである。コネクタを並べると、違う色の配線が接続されていることがわかる。コンピューター同士を接続する場合、ネットワークカード同士の接続となるため、ストレートケーブルで接続すると送信端子同士が接続されてしまい、通信できない。

ネットワークカード同士を接続する場合、クロスケーブルを使用し送信端と受信端を合わせることで、正常な通信が可能となる。

単線と撚り線の違い

LANケーブルには、芯線の構成として単線と撚り線がある。一般に、単線は硬く曲げづらいため敷設が困難であるが、ノイズ耐性が高く、20mを超える長距離敷設に向いている。天井裏や壁内など、一度敷設したら移設することがない場所であれば、単線のLANケーブルを使用することが望まれる。

芯線が撚り線のLANケーブルは、柔らかく曲げやすいため敷設が簡単で、機器の移動や移設が簡単である。しかし、ノイズ耐性が低く、短距離敷設に限った使い方が望まれる。撚り線は高い周波数の信号を伝送するのに向いていないため、高速伝送を行う場合は単線を使用すると良い。

LANケーブルの屋外敷設と水対策

UTPケーブルは屋内用ケーブルであり、屋外に敷設する場合は耐候性が問題である。直射日光や風雨にさらされた場合、シース表面がひび割れるなどケーブルが損傷するので、正常な通信を阻害する可能性がある。

屋外にLANケーブルを敷設する場合、屋外用シースを施した耐候性の高いケーブルを採用するのが良い。地中埋設をする場合は、埋設管路や弱電用ハンドホール内部に水が溜まっていることがあり、通線時にケーブル端部から水が浸入するとその部分がノイズ源となる。伝送特性の悪化により通信障害の原因となるため注意を要する。

LANケーブルを通線する際には、ケーブル端末から水が侵入しないよう防水処理を施すべきである。

 
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