電気設備の知識と技術 > 電線・ケーブルの種類 > IV電線・HIV電線
IV電線は(Indoor PVC)の略称で、屋内配線用のビニル絶縁電線である。極めて広く普及している絶縁電線であり、照明器具やコンセントへの電源供給だけでなく、接地用の電線としても利用されている。スイッチやコンセント類の渡り線としても用いられる。
IV電線は色によって識別できるよう、多色生産されている。黒・白・赤・緑・黄・青など、多くの色が製品化されており、相や電圧種別に応じた使い分けが可能である。黒と赤を電源線、白を中性線、緑を接地線として使用するのが一般的である。
IV電線の絶縁体は、最高許容温度を60℃に設定している。許容温度以上まで温度上昇すると発熱によって損傷し、著しい性能低下を引き起こす。電線の温度は流れる電流の大小だけでなく、敷設場所の周囲温度にも大きく影響し、許容電流の変動につながるため注意を要する。
IV電線は、保護材となるシースが存在しないため、損傷を受けやすい「天井転がし」による敷設は禁止されている。電線管や金属ダクト、レースウェイなどの金属線ぴ、がいし引きなどでの施工が義務付けられる。
「IV電線を露出のまま施工してはならない」という法的な規制があるのではなく、「低圧屋内配線は電気設備技術基準 第156条 156-1表 に記載の施工方法とすること」が定義されているため、この基準に準拠した施工方法を選択しなければならない。
絶縁電線のまま施工できるのは「がいし引き」のみであり、電線管に収容するか、金属線ぴやダクトに収容するか、絶縁電線ではなくケーブルを用いるか、電気設備設計者が施工性やコスト面から検討し選択する。
天井裏に電線を敷設する場合、IV電線をシースで保護した「VVFケーブル」を用い、天井裏に転がす施工方法が広く普及している。照明やコンセントへ電源供給する場合も、VVFケーブルが広く用いられている。
電源供給のために使用するIV線を、ケーブルラックに固定する施工はできない。ケーブルラックは「表156-1」に規定された工事ではなく、ケーブル工事をより合理的に行うための支持材であり、電線管や金属ダクトではない。ケーブルラックにIV線を敷設できるのは、接地線に限られる。
がいし引きによるIV線の施工は、古い木造住宅で普及していた施工方法である。「碍子」と呼ばれる陶器製の支持材を天井裏の造営材に取付け、IV線を固定する施工であり、電線が持つ許容電流を最大限まで活かせるという利点があるが、シースが存在しないIV電線を天井裏にそのまま敷設するのは、安全性に不安が残る。
レトロな内装を重視する建築物で、意匠的に調和させるためといった特別な理由がない限り、新設する電気設備でがいし引き施工は避け、ケーブル工事を行うのが良い。
金属線ぴは「レースウェイ」「メタルモール」といった電線を収容する部材である。金属製の小型ダクトであり、内部に絶縁電線を収容できる。
天井のない倉庫や機械室、工場では、照明器具やコンセントへの配線をレースウェイに収容する施工方法が多く、現在も広く採用されている施工方法である。
金属線ぴの施工方法や法的規制はレースウェイ・メタルモールを参照。
HIV電線は二種ビニル絶縁電線と呼ばれ、IV電線よりも耐熱性能が高い絶縁電線のひとつである。
HIV電線の絶縁体の最高許容温度は75℃であり、許容電流はIV線よりも20%程度大きく確保できる。周囲温度が高くても正常な送電ができるため、安全性が高い。
高い耐熱性能と許容電流から、分電盤の盤内配線として広く利用されており、メーカーは統一して「黄色」のHIV電線を使用している。
HIV電線はIV電線と同様、シースで保護されていないため、電線管に収容して施工するのが基本となる。盤内配線のほか、防災設備への電源供給にも利用される。
HIV電線よりも高い許容温度が必要であれば、105℃まで許容できる「特殊耐熱ビニル絶縁電線(SHIV電線)」を選定する。許容温度が高い電線ほど高価であり、流通量が少ないためコストアップにつながる。
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