電気設備の知識と技術 > 電線・ケーブルの種類 > HPケーブル
HPケーブルは、R型感知器の配線や、非常放送スピーカーの信号線に使用する消防用耐熱電線である。防災用の非常電源に用いる弱電回路への信号供給用、機器収容箱や消火栓等の表示灯回路にも使用される。
高い耐熱性が特徴であり、JISに定められた「建築構造部分の耐火試験方法」に示す加熱曲線に基づき、380℃で15分間の耐熱試験に合格する性能を持っている。
名称となっている「HP」は Heat Proof の頭文字を採ったもので、耐熱ケーブルを表現している。HPケーブルは、導体を絶縁体で被覆し、外側を耐熱性のシースでさらに覆った形状となっている。全線心着色識別により、誤配線の低減を図っている。
導体径は、0.9mmと1.2mmが製品化されており、平形では線心2本または線心3本、丸形多心製品では4~7本が一般的なラインナップがある。火災受信機から収容箱までの防災幹線や、排煙口の制御配線では、特に多対のHPケーブルが使用されている。
自動火災報知設備において、感知器への配線でAEケーブルとHPケーブルの使い分けが発生するため、設計時には注意を要する。
火災受信機にP型受信機を選定している場合、耐熱性を求められることはなくAEケーブルを使用できるが、R型受信機を選定している場合、HPケーブルを使用して感知器配線を敷設しなければならない。
P型火災受信機では、「警戒区域」という広いエリアで火災警戒を行っており、配線が火災によって断線した場合には「警戒区域内で感知器に異常が発生した」という信号により、火災を検出できるため、耐熱電線としてケーブルの断線に耐える必要はない。
R型火災受信機は、感知器個別にアドレスが設定されており、かつ警戒区域を跨いで2本線のケーブルを接続していくシステムのため、途中で断線すると火災の検出ができなくなる。耐熱電線として、一定時間は火災による熱に耐えなければならない。
非常警報設備において放送設備を採用している場合、伝送線はAEケーブルではなくHPケーブルを使用しなければならない。
業務放送設備では、ハイインピーダンス方式による配線系統となるため、AEケーブルを使用するのが一般的であるが、非常・業務兼用の放送設備では、火災時に電線が断線すると非常放送が鳴動できないため、HPケーブルを使用して耐熱化を図らなければならない。
HPケーブルは耐候性が低く、屋内での敷設を原則とする。直射日光が当たる場所への敷設は、シースや被覆の劣化を引き起こし、ひび割れによる絶縁不良の発生につながる。ひび割れによる劣化が進行すると、内部配線まで劣化し、短絡による誤警報の発生につながる。
直射日光や外的衝撃などを受けるおそれがある環境では、電線管に収容するなど、保護を検討しなければならない。
HPケーブルは制御用配線であり、電圧の低い「小勢力回路」として扱われる。
小勢力回路は、最大使用電圧60V以下で構成されている電路であり、充電部に接触しても人体に大きな影響を受けることはないが、強電流電線を平行敷設したり、高圧電動機など電磁誘導の原因となる設備があると、誘導障害による誤動作が発生するおそれがある。
強電線と弱電線の平行敷設は避け、やむを得ない場所では電線管に収容するなどして、電磁的な遮へいを施すと良い。
導体径 | 対数 | 仕上外径(mm) |
---|---|---|
0.9mm | 2C | 3.5×5.0 |
3C | 3.5×6.5 | |
4C | 6.1 | |
6C | 7.0 | |
2P | 6.1 | |
3P | 7.3 | |
5P | 10.0 | |
10P | 11.5 | |
15P | 14.5 | |
20P | 17.0 | |
30P | 19.5 | |
40P | 22.0 | |
50P | 24.5 | |
100P | 33.5 | |
1.2mm | 2C | 3.8×5.6 |
3C | 3.8×7.5 | |
4C | 6.9 | |
3P | 8.3 | |
5P | 11.5 | |
10P | 13.5 | |
15P | 17.0 | |
20P | 19.5 | |
30P | 23.5 | |
40P | 26.5 | |
50P | 29.5 | |
100P | 41.0 |
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