電気設備の知識と技術 > 電線・ケーブルの種類 > 光ファイバケーブル
光ファイバケーブルは、平衡対ケーブルや同軸ケーブルと違い、光の点滅のパルス列を伝送するための通信ケーブルである。伝送損失が極めて小さく、大容量の伝送が可能で長距離の伝送にも適している。
光による情報の伝送を行っているため、メタルケーブルで発生しやすい電磁結合や静電結合による漏話はまったく発生しない。外部からの影響も光の伝送には影響しない。
UTPケーブルやSTPケーブルを使用した伝送では、100mを超える通信では中継器を使用しなければならないが、光ファイバによる伝送は500~1,000mを超えるような長距離の伝送も問題なく行えるので、主に通信幹線用ケーブルとして利用されている。
光が通るコア部分が細い「シングルモード・ファイバ(SMF)」と、コア部分が太い「マルチモード・ファイバ(MMF)」の二種類に分けられている。
シングルモードはモードフィールド径9.2μmの極細径であり、光信号の伝播をひとつのモードにすることで、減衰を極力抑えている。MMFのように多くのモードを使用する伝送方法と違い、信号の到達時間がひとつしかないため、モード損失の発生がない。よって長距離・高速伝送に適している。
長距離LANに使用されることも多く、伝送距離は1~10km以上という超長距離の敷設が可能とされているが、ファイバ接続が困難であることや、ネットワーク機器に制限があり高価となるのが欠点となる。
マルチモードはコア径50μm・62.5μmが採用されており、光信号を複数のモードで伝送するため、信号の到達時間にズレが生じ、モード分散が発生する。モード分散によってデータ損失が発生するために、SMFほどの長距離・高速伝送は不向きである。
伝送距離は550m以下となるため、構内用光ケーブルとして利用されるのが一般的である。光ファイバーの接続が容易で、ネットワーク機器が安価に揃えられるという特徴があるため、構内用としての利点を数多く備えている。
石英またはプラスチックを主材料とした中空のケーブルで、コアとなる部分の屈折率を周辺部(クラッド)よりも高くすることで、光はコアで全反射し、遠距離まで光を伝送できる。電気信号の伝送ではなく光を伝送する方式のため、誘導による影響を受けることがなく、損失が小さい。UTPケーブルと比較し、長距離へのデータ伝送が格段に向上する。
光ファイバは中央にテンションメンバを設け、ファイバ敷設時の張力から保護している。材質は鋼線やFRPなどが利用される。さらに、側圧から保護するための保護層があり、押さえ層を介して外周をシースで被覆している。
保護層やシースによって保護されている光ケーブルであるが、電力ケーブルと比べても脆く繊細な仕様であり、取り扱いには特段の注意が必要である。
光ファイバは、光の伝搬中に数々の原因で分散し、伝送損失が大きくなる。分散には「モード分散」「波長分散」がある。
マルチモード光ファイバに発生する分散で、多数のモードをひとつのコア内に伝送することにより、光の到達時間がずれることで発生する。シングルモード光ファイバでは、伝送するモードはひとつに限定されるため、モード分散が発生することがない。
波長分散は、光の波長の違いによってわずかに生じる伝搬速度のずれによって発生する分散で、材料に起因する「材料分散」と、構造に起因する「構造分散」に分けられる。
材料分散は、光ファイバ内部の光信号が単一波長ではなくわずかに異なる波長が集まった光により、材料に対して反射し、わずかに屈折率や伝搬速度が変わる現象である。
構造分散は、コアとクラッドの境界面で本来全反射すべき光が、わずかにクラッド側に入り込んで反射することにより、屈折率や伝搬速度が変化する現象である。
この材料分散と構造分散は、どちらも光ケーブルの伝送を阻害する性質であるが、互いに反対の特性を持っているため、材料分散と構造分散が平衡すると、損失を最小となる。この最小となる波長を「零分散波長」と呼ぶ。
光ファイバには「ステップインデックス・マルチモード(SI)」「グレーデッドインデックス・マルチモード(GI)」「汎用シングルモード(SM)」「分散シフトシングルモード(DSF)」「非零分散シフトシングルモード(NZ-DSF)」の5種類に分類される。
マルチモードの光ファイバは、コアを太く構築して多くのモードに分けて光を伝送する。コアの屈折率が一定なため、伝搬信号がコア内で何度も反射すると、直線的に進む光信号と比べて信号が歪んで遅くなり、モード分散により正常な通信ができなくなる可能性がある。
現在ではほとんど使用されることがなく、LANでの利用はグレーデッドインデックス方式が採用される。
コアの屈折率を分散させ滑らかにし、最短距離を直進するモードと、屈折して距離が長くなるモードを同じ速度にすることで、ステップインデックス方式で発生する伝搬信号の歪みを改善している。
複数のモードが同一時間で到達するので、安定したデータ伝送が可能である。伝送距離は550m、伝送速度は1Gbpsまでの範囲で、広く使用されている。
コア径をマルチモードよりも小さくし、伝送するモードをひとつに限定した光ファイバで、マルチモード方式のように複数のモードを伝送していないため、モード分散が発生しない。広帯域にデータ伝送が可能で、高品質かつ安定した伝送を実現する。
LANでは高信頼性を求められる幹線用として使用される。伝送距離は10km以上、伝送速度は10Gbpsまで対応しており、通信幹線用途として広く使用されている。
汎用シングルモードは1310nm帯で信号伝送されているが、より伝送損失が低い1550nm帯に零分散波長をシフトし伝送する方式である。伝送損失が小さいためより高い信頼性が求められる部分での利用となる。伝送距離・伝送速度は汎用シングルモード(SM)と同等である。
分散シフトシングルモードの1550nm帯にある零分散波長を少しだけずらし、非線形現象を抑制した伝送する方式である。波長分割多重伝送(WDM)に適しており、大容量・高速伝送が求められる基幹用の光ファイバとして利用される。
光ファイバを接続する場合、融着による方式と、コネクタによる方式がある。光ファイバの接続不良は損失の増加を引き起こす原因となるため、特に注意を要する。
光ファイバの光軸のずれ、ファイバ接続角度ずれ、ファイバが適切に突き合わせられていない場合の間隙など、接続部は各種の損失発生原因となる。
光ファイバの先端部を加熱して融解し、接続するファイバ同士の先端部を接着することで接続するのが通常の接続方法となる。
融着方式は、接続部の信号減衰が小さく、接続のために必要なスペースも小さく済むといったメリットがある。接続部は衝撃に弱くなり折れてしまうおそれがあるため、接続部はファイバ保護スリーブを被せて加熱処理し、心線補強を行う。
単心の光ファイバを調心して位置決めし、放電の加熱によって融着させる「コア調心方式」や、テープ心線など多心ファイバを一括接続する「固定V溝調心方式」など、敷設するケーブルに応じた接続方法がある。
融着方式では接続した後の取り外しが不可能となるが、コネクタを用いた接続であれば、容易に取り外しができる。ネットワーク構成を頻繁に変更するような場所では、コネクタで接続するのが便利であり合理的である。
LANケーブルはRJ45と呼ばれる統一規格があるが、光ケーブルは多種多様なコネクタが存在するので、いくつかを紹介する。
コネクタには、LANの伝送システムで利用されているプッシュプル方式の「SCコネクタ」「SCFコネクタ」、ネジ締めにより強度を高めた「FCコネクタ」「STコネクタ」、交換器などで実績の多いプッシュプル方式の「LCコネクタ」などがある。
宅内への引込みは「SCコネクタ」が一般的である。SCコネクタは、従来から使用されているネジ締め式の「FCコネクタ」よりも製造コストを下げたコネクタであり、接続と脱着が簡単という特徴を持っており1心による小規模伝送に適している。コネクタを外した状態での光漏れを防ぐシャッター内蔵の製品もある。
最近では、住宅でのFTTH利用に際して光ケーブルの現場組立需要が多くなっているため、ドロップケーブルとインドアケーブルに直接SCコネクタを接続する「FAコネクタ」が普及している。
通信幹線として用いられる光コネクタは、シングルモードの多心を同時接続できる「MTコネクタ」などがあるが、NTTなど通信インフラ企業の基幹ケーブルやビル内コネクタとして利用されるものであり、ホームユース用のコネクタではない。