電気設備の知識と技術 > 電線・ケーブルの種類 > 同軸ケーブル
同軸ケーブルの正式名称は、発泡ポリエチレン絶縁ビニルシース同軸ケーブルである。英語では(COAXIAL CABLE - コアキシャルケーブル )と呼ばれている。高周波の多重伝送に適しており、VHFやUHF、BSの信号の周波数である、70MHzから2,000MHzの高周波信号の伝送が効率的である。
主に電気通信用として使用される通信ケーブルであり、断面は円形状となる。テレビとチューナー装置の接続、ネットワークケーブル用など、幅広い用途で利用されている。
同軸ケーブルは、高周波伝送における損失が少ないだけでなく、施工性が良く、接続や中継が容易、直流電力を重畳できるといった利点により、画像信号線として幅広く利用されている。
壁に設置されたテレビアウトレットから、テレビ本体に同軸ケーブルを接続する場合は、S-4C-FBを選定するのが良い。「S」はCS放送までの高周波を伝送できるケーブルで、壁アウトレットと離れた場所にテレビを設置する場合でも、減衰を小さく抑えられる。
BS放送やCS放送を受信している場合、同軸ケーブルの種類に注意を要する。「3C-2V」や「5C-2V」は、UHF/VHFのみを伝送するための同軸ケーブルであり、BS/CS放送は伝送できない。
「5C-FB」は、比較的周波数の低い「BS放送」を伝送できるが、より高い周波数の「CS放送」を伝送できない。同軸ケーブルの種類に伝送できる放送の種類が違うため、同軸ケーブルを購入する場合は注意を要する。
ここでは、代表的な同軸ケーブルの受信電波と、減衰量を一覧表として記載する。
同軸ケーブルでテレビ画像を伝送する場合、周波数帯域と敷設距離に応じて減衰が発生する。減衰は、高周波を伝送するほど大きくなるため、地上デジタルの帯域よりも、CS放送の帯域が大きいという特徴がある。
今後広く普及することが予想される「4K放送」や「8K放送」は、CS放送よりも高周波な帯域を利用して伝送することになっており、さらに厳しい周波数計算が求められる。
太い径の同軸ケーブルを用いて減衰を抑制する設計手法では限界があり、複数のブースターを挿入する方法が合理的となる。下記の表は、1mあたりの標準減衰量[dB]を表としたものである。高周波帯域ほど減衰量が大きくなることがわかる。
名称 | UHF 470MHz | UHF 770MHz | BS 1300MHz | CS 2000MHz | 4K 2681MHz | 8K 3224MHz |
---|---|---|---|---|---|---|
3C-2V | 0.28 | 0.37 | - | - | - | - |
5C-2V | 0.20 | 0.29 | - | - | - | - |
7C-2V | 0.15 | 0.20 | - | - | - | - |
3C-FV | 0.24 | 0.33 | - | - | - | - |
5C-FV | 0.15 | 0.21 | - | - | - | - |
5C-FB | 0.14 | 0.19 | 0.27 | - | - | - |
7C-FB | 0.10 | 0.14 | 0.20 | - | - | - |
S-4C-FB | 0.18 | 0.24 | 0.32 | 0.41 | 0.49 | 0.54 |
S-5C-FB | 0.15 | 0.19 | 0.26 | 0.34 | 0.41 | 0.46 |
S-7C-FB | 0.11 | 0.14 | 0.19 | 0.25 | 0.31 | 0.35 |
同軸ケーブルに限らず、高周波伝送の場合は周波数が高いほど減衰の割合が大きくなる。VHFとBSを比較した場合、90MHz帯の付近を使用するVHFの電波よりも、1,300MHz帯付近を使用するBSの電波の減衰が大きい。
衛星放送を受信する場合、信号の減衰が大きくなる。長距離の伝送を行う計画では、サイズの大きな同軸ケーブルを使用したり、高発泡ポリエチレンの製品を採用するなどし、減衰を低く抑えた計画としなければならない。
「2K放送」と呼ばれるフルハイビジョンの上位規格として、2K放送の4倍の画素で表現する「4K放送」や、16倍の画素数で表現する「8K放送」への対応が求められている。
東京オリンピックやパラリンピックの中継放送は、4K・8K放送の実用化を前提としており、公共施設や宿泊施設のほか、一部マンションなどでも、4K・8K放送に対応した共聴設備が求められるものと考えられている。
200万画素程度の表現で十分だった情報量が、4K放送で800万画素、8K放送で3,300万画素にまで拡充されることになり、65インチや100インチといった大型モニターに投影しても、違和感のない高画質な画像が楽しめる。
既に、BS放送やCS放送によって、実用化されている範囲の周波数帯域が専有されている。テレビ放送に利用されている周波数帯域を拡幅し、3,224MHzという高い周波帯域を利用することで、4K8K放送に対応する。
高周波帯域では、同軸ケーブルや分配器、直列ユニットによる減衰がさらに大きくなるため、より効率的な配線設計や、ブースターの挿入が必要となる。アンテナ、混合器、ブースター、分配器などはCS放送まで対応しているが、新たな規格となる4K8Kの帯域の信号は通過できない。同軸ケーブルを除くほとんどの機器が再利用できず、交換が必要とされている。
同軸ケーブルについては、最新のS-5C-FBやS-7C-FBなどを用いてあれば、ケーブルに際立った劣化がない限り伝送できる。長期利用により劣化が進んでいる同軸ケーブルであれば、減衰も大きくなることが予想され、交換が必要となる可能性がある。
テレビ受信用同軸ケーブルは、銅心線を発泡ポリエチレンで絶縁し、アルミ箔テープで巻き、外周を筒状の銅編組という網状の導体で覆い、外側をビニルシースで包むという構造になる。
高周波伝送において、伝送する信号は内部導体と外部導体の間を通過していくことになり、外部導体が編組だけでは信号が漏洩する。これを避けるため、アルミ箔テープと銅編組によってシールドを構成し、外部への信号流出を避け、かつ外部からの雑音による悪影響を低減させて、高い品質が確保できるように構成されている。
同軸ケーブルは、可とう性を確保するため、内部導体は比較的細い単線が用いられており、外部導体は編組線が用いられている。編組だけでは漏話特性が悪化するため、編組にアルミテープを巻き付けたり、編組を何重にも重ねて特性向上を図っている。
同軸ケーブルは、記号によって性能が定められている。S-5C-FBという表記から、同軸ケーブルの仕様を説明する。
ビルやマンションに敷設するテレビ共同聴視用の同軸ケーブルは、S-5C-FBまたはS-7C-FBの2種類を活用した設計を基本とする。屋上に共同受信用アンテナを設置し、UHFやBS、CSを混合し、1軸方式で計画する。
最も近い場所にあるEPSにブースターを設けて信号を増幅し、移行は大きな減衰が発生しないように配線計画を行う。長距離敷設による減衰が大きい場合は、S-7C-FBやS-10C-FBといった太いサイズのケーブルを選定すると良い。
幹線は7Cや10Cといった太い幹線となるが、分岐配線は減衰に問題がない範囲で、S-5C-FBやS-4C-FBなどの細いケーブルを用いてコストバランスを調整すると良い。全て高品位な同軸ケーブルを設置しても、画質が良くなることはない。
S-7C-FBは、S-5C-FBと比べて標準減衰量が小さく、長距離敷設においてもテレビ信号の品質を高く維持できる。しかし、ケーブル単価が4倍程度違うため、あまり多用するとコストが大幅に高くなる。さらにケーブル外径が太くなり、可とう性が悪く曲がりづらいために施工性が悪くなる。
テレビの信号は、受信点から送信局までの距離や、アンテナの性能にも左右され、受信した時点で画質は決定している。この受信点で得られた画質を、さらなる劣化を伴わずに受像機まで伝送するのが重要であるが、適切な位置にブースターを設置すれば、同軸ケーブルを高品質な製品にしなくても、十分な受信強度を確保できる。
末端受信強度は、VHF/UHFは70dB以上、BS/CSは57dB以上を確保するよう設計するのが基本であるが、地上デジタル化により、より小さな数値であっても受信は可能である。
壁に設置されているテレビ端子から、テレビ機器やチューナーには、市販の同軸ケーブルを使用して接続する。オフィスビルやマンションなどでは、幹線ケーブルとしてS-7C-FBやS-10C-FBが使用されているが、テレビ端子からテレビ機器までの間は距離が短い上、テレビ本体に接続が可能なケーブルサイズとしなけれはならないため、幹線で使用するような太いサイズの同軸ケーブルは適していない。
テレビ端子からテレビ機器までの配線は、S-4C-FB同軸ケーブルを使用すると良い。3m~5m程度であれば、径の小さな同軸ケーブルであっても大きく減衰することない。
テレビアウトレットからテレビ端子までの距離は、10m程度までが推奨されているが、テレビ端子での受信電波が良好であれば、より長い距離でも伝送できる。
同軸ケーブルを電気機器に接続するために、端部にコネクタが取り付けられる。一般的なテレビでは、同軸ケーブルから直接心線を取り出して挿し込むことでも受像できるが、心線を痛めたり、ノイズの原因となるため、接続部をコネクタ化するのを基本とする。
同軸ケーブルの端部をコネクタ化するためには、「接栓」と呼ばれる部品を使用する。
接栓とは、同軸ケーブルの端部コネクタである。ストレートタイプと呼ばれるワンタッチ接続式の接栓や、F型と呼ばれるネジ式接栓を使用し、同軸ケーブルの端末処理を行なう。4C用、5C用など、同軸ケーブルのサイズによって規格が違っている。
市販されているテレビ用の同軸ケーブルであれば、ケーブルに接栓が付属しているものを購入すれば良いが、同軸ケーブルと接栓を単独で購入し、電線を加工して自作することでも良い。
接栓付を自ら取り付ける場合、内部導体と外部導体が短絡していないか、強度が不足していないか十分に確認しなければならない。
F型コネクタは、テレビ用に普及している同軸ケーブル用コネクタで、接続部分が「ねじ切り」され回転して固定するタイプと「ねじ切り」されておらず差し込むだけの製品に分類されている。特性インピーダンスはテレビ用の同軸ケーブルと同様に75Ωである。
ねじ切りされた固定金物が付属していない製品は、差し込むだけで接続できるため取り扱いが容易であるが、張力で簡単に外れてしまうため、据え置き型のテレビへの接続には不安が残る。固定金物がねじ切りされており、テレビに固定可能なタイプを使用するのが望ましい。
F型コネクタには、心線をそのまま使用するタイプと「コンタクトピン」と呼ばれる、芯線に被せて耐久性や耐候性を高めたタイプがある。
心線をそのまま使用するタイプのF型コネクタでは、同軸ケーブルの被覆を剥がし、コネクタを被せ、心線を中心で揃え、飛び出した部分を切断するだけという簡易な構造である。
コネクタピンは同軸ケーブルの心線がそのまま使用されるため、コネクタ自身の伝送性能は定義されない。性能だけであれば、同軸ケーブルをそのままテレビの受像装置に差し込んでいるのとほぼ変わらない。
コンタクトピンを使用するタイプでは、心線にコンタクトピンを被せて、専用の圧着工具で固定するという手順が増える。屋外で使用する防水コネクタでは、コンタクトピンを使用して心線を腐食から保護している。
「Bayonet」と呼ばれるロック方式を採用したコネクタで「BNCコネクタ」と呼ばれる。「 Bayonet Neill Concelman 」の略称で、国内では「バイヨネット」「バヨネット」「バイオネット」など、メーカーによって呼称が若干違うが、同じ製品を示して呼ばれる。
数百回に及ぶ着脱にも耐えられる耐久性を持っているため、測定機器の接続コネクタとして普及している。ネジ止めをせず、差し込むだけでロックされる簡易機構となる。
使用する同軸ケーブルに合わせ、公称インピーダンス50Ωと75Ωの製品があるが、テレビ用は75Ω仕様が基本である。オシロスコープなど計測機器用の同軸ケーブルは50Ω仕様が広く使われているが、映像伝送や音声伝送に用いる場合は75Ω仕様としている。
家庭用のテレビ用同軸ケーブルも同様に、インピーダンス「75Ω」の同軸ケーブルが用いられている。大電力を伝送する、送信局などで用いられる業務用同軸ケーブルや、精度の高い測定を行う必要のある計測機器は、電気的な送電効率が重要視されるため、インピーダンス「50Ω」の同軸ケーブルが用いられる。
電気設備用途では、オーディオ機器のほか、アナログ監視カメラの映像伝送用として、同軸ケーブルにBNCコネクタを接続して使用する。
ケーブル同士を接続する場合には、BNC中継コネクタを用いると便利である。ITV用SPDやアレスタなど、避雷器のコネクタにもBNCコネクタが広く使われている。
BNCコネクタを設けた同軸ケーブルを、省略して「BNCケーブル」と呼ぶことがある。
同軸ケーブルは、高周波伝送を主体に行なうための電線であり、VVFケーブルといった強電線のように、重ね合わせてカシメるような接続方法はできない。伝送障害を引き起こし、正常な伝送が不可能となる。
同軸ケーブル同士を接続して延長する場合、接続するケーブル端末に接栓端子を取付け、接栓同士を「中継接栓」で接続すれば、同軸ケーブルの延長が可能である。ネジ式のF型接栓を設けてねじ込めば、一定の張力にも耐えられる。
接栓の締め付けは、電力ケーブルや電線管のように、レンチの工具で強く締め付けてはならない。変形して外れてしまったり、破損するおそれがある。
接栓や中継器によって、若干の減衰が発生する。多数の接続点を設けると、減衰の増大や強度の低下を引き起こすので、ケーブルはできるだけ切断せずに敷設できる計画とすべきである。
同軸ケーブルは、雨が当たる部分での接続は避けるべきであるが、やむを得ず雨が当たる屋外で同軸ケーブル同士を接続する場合、防水接栓を用い、自己融着テープと呼ばれる防水性能に特化したテープを巻いて、水の侵入を防止する。
同軸ケーブル内部は編組構造となっているため、水が侵入すると奥深くまで浸透し、編組を腐食させてケーブルが著しく劣化するので、水の侵入は厳しく制限しなければならない。
最も水の侵入のおそれが高い、アンテナ部分の接栓接続では、防水接栓の上に自己融着テープを巻き、更にビニールテープを上から巻くという工法が用いられている。
建築設備分野では、テレビのほか、ITV監視カメラの映像伝送に同軸ケーブルを使用する。近年はLANケーブルを用いたネットワークカメラが主流であるが、業務用アナログカメラの映像伝送を計画する場合、映像伝送線として同軸ケーブルを使用する。
同軸ケーブルは、テレビの伝送用と同じく75Ω仕様とする。ネットワークカメラの場合はLANケーブルが使われるが、LANケーブルの特性上、100mを超過するケーブル敷設はデータの伝送エラーを引き起こすので、リピーターを多段接続して伝送する。同軸ケーブルで計画する場合は、ケーブル径を太くすることで伝送距離を伸ばせる。
通常、200mまでは「3C-2V」、500mまでの長距離伝送であれば「5C-2V」が選定される。よほど大規模な敷地を持つ建築物でない限り「5C-2V」の同軸ケーブルを選定すれば、映像伝送に問題が発生することはほぼない。
同軸ケーブルに電源も重畳する「ワンケーブル」方式のカメラであれば、同軸ケーブルにカメラ電源も同時に乗せられるので、カメラ本体に別途電源を供給する必要もなく、良好な施工性を確保できる。ネットワークカメラで使用するLANケーブルであれば「PoE」と呼ばれる技術がこれに相当する。
近年では「HD-TVI」と呼ばれる、同軸ケーブルを用いたアナログ方式のまま、HD監視カメラを使用する新規格が普及しつつある。従来のアナログカメラを高画質なHDカメラに移行する場合、LANケーブルを引き直して、ネットワークカメラに交換するのが一般的であるが、ケーブル敷設は施工的に難しい事が多く、一式の交換は困難である。
HD-TVIでは、同軸ケーブルをそのまま利用し、カメラとレコーダーを交換すれば、アナログ方式のままにHDカメラ画像を伝送できる。
同軸ケーブルは、その用途に応じて多種多様な製品が開発されており、無線用、高周波機器の接続用として使われる一般ケーブルから、トンネルや地下道でも電波を受信できるように敷設する漏洩同軸ケーブルなど、数多くの製品がある。
無線受信用や、電力線搬送用給電線に使用されている一般的な同軸ケーブルで「3C-2V」「5C-2V」といった名称で呼ばれている。無線送受信、高周波機器の内部接続配線に使用されるケーブルで、外部雑音に強く、安定した特性を持っている。
特性インピーダンスは50Ωと75Ωがあり、75Ωタイプは「C型ケーブル」、50Ωタイプは「D型ケーブル」として区分されている。
「3C-2V」と表示されている同軸ケーブルは、特性インピーダンス75Ω、絶縁体外径3mm、絶縁方式PE充実形、1重外部導体編組+PVC被覆 という機能である。
CATV用に開発された同軸ケーブルで、絶縁体に高発泡プラスチックを使用し、外部導体にアルミシースが使われている。非常に低損失であり、強度が大きく軽量、外部誘導が小さいなど、多くの利点がある。
TV共聴用の同軸ケーブルとして使用される。発泡ポリエチレンを絶縁体に使用し、外部導体にラミネートアルミテープを使用した同軸ケーブルである。
絶縁体として採用されている発泡ポリエチレンは、気泡の均一性によりVSWRが小さく、ゴースト発生を抑制できる。外部誘導に強く、損失が小さいという特長がある。
外部導体にラミネートアルミテープを使用した同軸ケーブルで、発泡ポリエチレン絶縁ケーブル(FL同軸ケーブル)よりも減衰量が小さいという特徴がある。主に、衛星放送の受信用として使用されることを前提とし、衛星放送の受信帯域の減衰を低減している。
優れた減衰特性を持っており、かつ外部からの誘導に強い、吸湿性がないため長期間の使用に耐えるなど、数多くの特長がある。内部導体を高発泡PEFの絶縁体で包含し、黒色PEのシースで保護された構造となっており、屋外で使用できる。
LCX( Leaky Coaxial cable )とも呼ばれ、信号をケーブル周囲に漏洩させることで、ケーブル近辺で電波を受信できる。ケーブル近辺でのみ電波を受信できるという性質から、トンネルなどの中で内部に通線すると、その沿線では電波を受信できる。
直線上のアンテナとして機能するため、長距離かつ電波の届きにくい筒状の構造物に、信号を伝搬する用途に適している。漏洩同軸ケーブルを敷設することで、トンネル内でラジオ電波を受信したり、地下鉄で携帯電話を使用したりということが可能になる。
漏洩同軸ケーブルを使用した無線LANも構築可能である。アクセスポイントを複数台設け、アンテナを用いる一般的な無線LANでは、電波が不必要なエリアにまで到達したり、障害物によって電界強度がばらつくといった不具合が考えられ、また情報セキュリティの観点からも不必要な場所に電波が到達してしまうといった欠点があるが、漏洩同軸ケーブルを利用することで、通信エリアを限定し不必要なエリアに電波を漏らさない計画が可能となる。
工場や倉庫など、障害物が多数配置されるような環境であっても、漏洩同軸ケーブルを張り巡らせることで、安定した通信が実現できる。
高温や低温の場所など、アンテナを直接設置することが難しい場所に対して、ケーブルによって電波を拡張できるというのも利点のひとつである。同軸ケーブルから放出される電波の到達距離が数mと短いため、アンテナのように反射によるマルチパスの影響が小さく、品質が安定するということも利点とされている。
無線LANアクセスポイントに複数のダイポールアンテナが設けられている場合、漏洩同軸ケーブルに変更することでアンテナを有線可することも可能であり、複数のメーカーが法人向けに漏洩同軸ケーブルを販売している。無線LAN機器に搭載されているMIMO機能についても、複数本の漏洩同軸ケーブルを接続すれば、そのまま機能するとしており、ダイポールアンテナを同軸ケーブルに置き換えることも計画可能となっている。
漏洩同軸ケーブルは、同軸ケーブルの外部導体にスロットと呼ばれる孔を設け、同軸ケーブル内部を伝搬する電波をケーブル外部に輻射させるよう構成されている。ケーブル表面の汚れが電界に影響しにくく、空気環境の悪い場所でも十分な電界強度を保つため、同軸ケーブルの保守が容易である。平行二線の漏洩線路と比較して、電界変動が少なく安定した電界を供給できる。
VSWR(電圧定在波比)は、高周波信号が回路上で反射する度合いを、1以上の数値で示している。アンテナに発生した信号を同軸ケーブルで取り出す場合、どれだけ効率良く信号を伝送できるかを示す指標である。
VSWR値が「1」であれば、全く反射のない理想的な伝送路という。高周波信号を伝送する場合、VSWRができる限り1に近いことが望まれる。
定在波は、給電線に含まれる進行波と反射波を合成している。信号を伝送する場合、送信機から進行波と呼ばれる順方向の電流が流れるが、インピーダンスの不一致があると、送信機側に電流が戻ってしまい、反射波となる。
反射波が大きい場合、給電先に正規の電流が流れないことがある。送信側に電流が戻ってしまう事象もあり、品質の低下につながる。同軸ケーブルの場合、急激な屈折、接続不良により反射が発生し、信号の伝送不良の発生につながるので、施工にも注意が必要である。
現在のLAN構築は、LANケーブル(UTPケーブル)を用いたシステムが一般的であるが、10BASE2や10BASE5といった通信規格では、同軸ケーブルを用いて伝送することが定められており、同軸ケーブルによる伝送が一般的に行われていた。
10BASE2、10BASE5どちらも、伝送速度10Mbpsという、現在では低速規格に分類されるが、10BASE5ではケーブル長500mまで対応可能とされており、比較的長距離を中継装置なしで伝送できる規格である。
情報通信用の同軸ケーブルは、テレビ伝送と違い非常に太い同軸ケーブルが用いられ、かつ「バス方式」と呼ばれる一筆書きのネットワークを構築する必要があり、ネットワーク機器が1台でも故障すると、ネットワーク全体が停止するというものである。
既存のテレビ用同軸ケーブルを利用してネットワークを構築する技術として、TLCと呼ばれる技術がある。コンセント回路を用いた「PLC」と類似しているが、TLCは同軸ケーブルが使われ、同軸モデムを接続してネットワークを構築する。
既存のテレビインフラとして敷設されている同軸ケーブルを活用することで、新たにLANケーブルを敷設することなく、早期にネットワーク構築が可能という利点があり、有線方式なので無線と比較して安定した伝送が可能とされている。
同軸ケーブルはシールドされているため高い漏話特性を持ち、10BASE2や10BASE5のような古い規格と違い、100BASE-TXという速度が得られ、かつPoE技術の利用も可能なため監視カメラの接続も可能である。
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