インターホンの種類 | 親子式と相互式の違い

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インターホンとは

インターホンとは、公共の電話回線に接続せず、構内での連絡・通話用の有線設備である。法的には「有線電気通信法」「有線放送電話に関する法律」の二つに関係しない通話設備をインターホンと呼び、「構内配線のみで構成される構内通話設備」とされている。

電話回線などを使用せず、構内だけで通信が完結するのがインターホンである。

インターホンには多様な種類があるが、大きく住宅用と業務用に分類される。住宅用は、シンプルな機能を持つ戸建住宅用と、自動火災報知設備との連携機能をもつ集合住宅用インターホンに分類される。

壁面取付の保守用インターホンの写真

業務用とのインターホン

業務用インターホンは、保守用に使用する一般用のほか、病院で使用するナースコールなども業務用のインターホン設備として分類される。これらインターホンは、通話網の方式により、親子式インターホンや相互式インターホンに分類されている。

設備保守にのみ使用される保守用インターホンや、IPシステムにより超長距離を敷設できるシステムなど、幅広い製品が販売されている。

住宅用途のインターホン

インターホンの住宅用途は、玄関扉の近くに「玄関子機」を設置し、室内にインターホン親機を設置するのが基本構成であり、玄関子機からインターホン親機を呼び出して通話できる「ドアホン」を用いるのが一般的である。玄関子機にカメラを内蔵すれば、玄関扉を開けずに来訪者の顔を確認できるため、防犯性を高められる。カメラだけでなく、録画や録音装置を内蔵した高機能タイプも存在する。

インターホン親機には、二世帯住宅対応として玄関子機を多数設置できるものや、玄関だけでなく2~3階の居室内から呼出が可能な「多局通話」が可能な製品もある。自宅介護などを行っている家庭では、インターホンをナースコールのようにして使用できる。

従来の共同住宅では、室内にコールチャイムを設置し、室外に押しボタンが設置されているという簡素なもので、来訪者が誰なのかを確認するにはドアスコープを除くことで対応していた。

最近のマンションなどに採用されているインターホンシステムでは、オートロックで守られた建物外部に集合玄関機を設けて来訪者を確認し、さらに自宅の前で再度確認できるという二重化が図られている。

インターホンの通話方式による区分

インターホンの通話方式には親子式と相互式があり、これらを組み合わせて選定する。

親子式インターホン

インターホン親機1台に対し、インターホン子機を1台接続し、子機から親機を呼出して通話を行うインターホンシステムである。保守用インターホンや受付用インターホンなどは親子方式を採用し、子機から親機を呼び出すのが基本となる。

玄関への来訪者が室内を呼び出すといった限定的な用途となり、子機から親機を呼出すことが目的であれば、親子式インターホン方式が採用される。

親子式インターホンでは、子機から親機を呼び出すことが主目的である。子機から親機を呼び出す方式では、親機から子機への呼出は想定外であり、オフィスや店舗といった相互呼出が必要な用途では不適合となる。相互に呼出が必要な施設では、相互式インターホン方式を採用し、どちらのインターホンも親機とするのが一般的である。

相互式インターホン

接続するインターホンすべてを親機とし、お互いのインターホン親機に対して通話ができるシステムである。インターホンは全て親機となるため、どちらからの通話も可能となる。

オフィスビルや店舗で採用できるが、電話交換機を用いた電話設備の構築により、内線電話で宛先を指定して自由に相互通話可能なので、相互式インターホンを用いた設備構築はあまり行われない。

複合式インターホン

子機を数台接続した親機グループがある場合、親子間のインターホンは親子式で接続通話を行い、親機相互間は相互式で通話を行う複合式の通話方式である。親子式と相互式が組み合った方式といえる。

インターホンの用途

保守用インターホン

保守用インターホンでは親子式が一般的であり、機械室や電気室に設置した子機から、親機を呼び出す。電気用シャフトや配管シャフト、空調機械室など、あまり頻繁に入らない室や、非常に多くのインターホン子機を必要とする場合、子機本体を全ての室に設置せずに、接続ジャックだけを取り付け、子機本体を持ち運びできる携帯型として運用することもある。

夜間受付インターホン

夜間受付を行う際のインターホンは、親子式インターホンを採用する。玄関や夜間受付場所に玄関子機を設置し、警備室や管理室に親機を設置して通話する。これも、警備室や管理室側から玄関を呼び出すことがないため、親子式インターホンとするのが一般的である。夜間受付用として使用することが前提となっているインターホン設備であれば、インターホンの表示窓に照明が内蔵されている製品を採用するのが良い。

防災用インターホン

防災用インターホンには、非常電話や非常用相互連絡用があり、主に火災の伝達、消火活動の円滑化など、火災通報や災害時の支援装置としての役割を持ったインターホンである。消防法で規定された機能や性能を満足したものを使用し、設置方法や配線も関連法規に準拠しなければならない。

住宅用インターホン

ドアホンという名称で呼ばれ、家庭への来訪者の応対用途として使用されている。住宅用途の場合も、室内から玄関子機を呼び出す必要がないため、親子式インターホン方式となる。

最近のマンションのインターホンでは、カメラ付きインターホンが標準化されつつある。応対以外にも火災報知機の発報表示、ガス漏れ感知器の動作表示、警備セット中の窓ガラス開放、管理人室との通話など、数多くのセキュリティ機能を持っているものが主流である。インターホンによるトイレ非常呼出や、マンションのオートロック開錠など、インターホンによる電気錠操作が可能な総合情報盤として運用されている。住宅情報盤という名称で呼ばれることもある。

室内に設置した火災報知機の信号を伝送し、廊下を歩いている人に室内火災を知らせる機能を持った製品が、よく使用されている。窓や扉の電気錠と連動し、扉開放や侵入が発生した際に大音響を発したり、管理室に信号を伝送するなど、セキュリティ機能が強化された製品もある。

カメラの付いていない音声のみのインターホン、白黒カメラやカラーカメラを内蔵したインターホン、受話器を使用しないハンズフリーインターホン、録画・伝言メモを内蔵したインターホンなど、住宅グレードやセキュリティ仕様に応じて機種を選定する。

壁面に取り付けられたカメラ付きドアホンの写真

ワイヤレス・無線インターホン

無線を利用したワイヤレスインターホンは、住宅用インターホンや、事務所用の受付インターホンとして普及している。有線による配線工事を省略し、無線によって信号を送信できる。配線工事を行わなくてもよいため、親機と子機の設置場所を決めれば、すぐに使用できる。

電波到達距離は機種によって差があるが、100m程度到達することが可能で、柱、玄関ドア、壁があっても通信できる。コンクリート躯体や、金属製の壁に全周囲われている建築物や部屋の場合、信号が反射してしまい電波が届かないことがあるので、設置場所の状況については専門メーカーへの問合せと確認を行うのが良い。

電源は、専用アダプターによるDC電源供給が一般的である。親機は専用固定電源を接続することになり、子機は設置場所に電池を使用する場面があるので、定期的な電池交換やメンテナンスが必要である。

病院用インターホン

病院用インターホンは、ナースコールとも呼ばれるインターホン装置である。病棟のナースステーションと、病室の入院患者間での通話を行うインターホンで、昼夜区別無く呼び出し通話を行う。患者からの呼び出しを、ナースコール親機だけでなく携帯電話への送信ができるシステムも普及している。

ナースコールインターホン

ナースコールインターホンは、病院内で使用されるインターホンで、複数の入院患者に対して、看護師が患者の状態を把握するためや、相互のコミュニケーションを図るための通話装置として使用されるものである。ナースコール親機をナースステーションに設置し、ベッドサイド子機、廊下灯、押しボタンなどで構成されている。

ナースコール親機には、患者の名前と病室番号やベッド番号が表示されており、ベッドサイド子機からの呼び出しに対して応答する。一斉放送やグループに分けた呼び出しも可能である。製品により、子機からの呼び出し音に変化を付け、呼び出し用途毎に割り当てられるものもある。

ナースコール子機は、一般的に各ベッドに設置された医療用コンソールに組み込まれており、看護師呼出用の押しボタン子機と接続される。廊下灯は病室の廊下側に設置し、ナースコール呼び出し時に点灯し、最寄の看護師に知らせるために設置する。

トイレや浴室内にも呼び出しボタンを設置し、気分が悪くなった患者が看護師呼び出しを行うために用いる。マイクとスピーカーが併設され、相互通話も可能である。病室と同じように、トイレや浴室の室外側に表示灯を設置し、最寄の看護師に知らせるよう計画する。最近では、看護師が携帯するPHS電話機と接続し、看護師にナースコールが転送される機種も販売されている。

防災用インターホン

送水口や防災センター、消防活動拠点には、消防隊活動用としてインターホンを設けるよう指導される。防災用インターホンは、スプリンクラーなど消火ポンプのブースターポンプ起動を確認したり、非常用エレベーターの昇降ロビー、特別避難階段の附室など、消防活動上重要な場所に設けられ、消火活動に利用される。

インターホン同士を繋ぐ配線も、火災で焼け落ちないよう耐熱性が求められる。

通話方式による区分

通話方式には、交互通話方式、同時通話方式の2種類がある。

交互通話方式インターホン

通話者間で、交互に通話を行うインターホンの方式で、電話機のように同時通話できない。プレストーク式通話方式とも呼ばれ、送話する際には送信スイッチを押すことで相手に音声信号を伝送し、相手からは送話スイッチを離すことで聴ける。トランシーバーと同様の使い方といえる。スイッチを持たず、声の音圧を検出して自動的に切り替えをするインターホンもある。

同時通話式インターホン

通話者間で、電話機のように通話ができるインターホンである。「話す」と「聴く」を同時に行え、通話中に送話スイッチなどを操作する必要がない。住宅用のドアホンは、同時通話インターホンとして代表的である。

インターホン設備の設計方法

インターホンの機器仕様は、設置する対象の用途に応じて、親子式インターホンとするか、相互式インターホンとするかを判断し、必要な機能をまとめていく。

インターホン設置場所の検討

インターホン設備が必要な場所を設定する。住宅であれば玄関にインターホン子機(ドアホン)を設置し、リビングに親機を設置するのが基本構成である。事務所や店舗などでインターホンを計画する場合は、玄関部に子機を設置し、各事務室に親機を設置したり、必要場所毎に計画する。

機械室内には保守用インターホンを設置し、防災センターや管理室に親機を設置する。夜間受付口には、カメラ付き防水インターホンを設置し、警備室に親機を設置する。用途に応じたインターホンの種類を考えて配置を行う。

通話方式の設定

設置場所を決めたら、通話方式・機種を決める。親子式インターホンとした場合、親機と子機の1対1通話となるため、子機同士の通話はできないシステムとなる。機械室の保守用インターホンや、夜間受付用インターホンであれば、子機同士の通話を考える必要はない。しかし、事務所間通話のインターホンなどであれば、お互いに通話のため発信する可能性があるため、相互のインターホンを親機とすべきである。

インターホン親機の窓数を決める場合は、設計している子機の台数と、将来増設用の台数を考慮して設定する。親機に増設ユニットが装着できるものであれば、将来的な増設に対応できるため、柔軟性が高くなる。

インターホン間の配線は、CPEVケーブルのメタルケーブルが使用される。配線太さが太いほど、遠方に通話の信号を伝送できるが、メーカーが品質を保証できる通話距離を設定しており、仕様書等に準拠した配線距離で計画する。

インターホン配線で伝送される信号は、配線の抵抗によって減衰していく。長距離伝送を行う場合は、ケーブルサイズを太くする。配線距離とケーブルサイズの関係は、メーカーに問い合わせを行うか、仕様書を確認すれば良い。

専用線インターホンシステム

インターホンの信号はアナログであり、長距離の伝送を行うことで電圧降下を引き起こし、信号を適正に伝達することが不可能である。音の信号のみであれば長距離敷設をできるが、カメラ映像など画像の信号を伴う場合、100m程度の伝送が限界となる。

100mを超える超長距離のインターホン設備を構築する場合、LANケーブルを使用した専用インターホン網を構築し、最長1,000mという超長距離に対応した専用線方式のインターホンシステムが開発されている。インターホンメーカーのアイホンでは、IPネットワーク対応インターホンと称して、新しいインターホンシステムを開発、販売している。

カメラ付きインターホンの設置高さと逆光対策

カメラが内蔵されているインターホンを門柱や扉前に設置する場合、取付高さを間違えると、来客者の顔が見えなかったり、会話をするのが難しくなるため、適正な高さに取り付けなければならない。

カメラ角度が0度(垂直)の場合の玄関子機高さ

インターホンを壁面に垂直に取付ける場合、床面から1.45mの高さに本体中心が位置するよう設置するのが基本である。それより高かったり低かったりすると、訪問者の顔がカメラに映らず、防犯性が損なわれる。設置するインターホンの仕様書にも記載されているため、施工要領書をよく確認すべきである。

カメラ角度が15度の場合の玄関子機高さ

カメラを若干上向きに傾けて取付ける場合、来訪者を見上げ視線で撮影するため、インターホン位置は床面から1.1m程度の高さに本体中心が位置するよう設置する。

身障者が利用する場合の玄関子機高さ

身障者が使用することが決定している場合、インターホン子機は垂直に取り付けることとし、床面から1.1m程度の高さに本体中心が位置するよう設置すると、車椅子に座ったままの来客者の顔がはっきりと写る。

インターホン親機の取付高さ

室内に設けるインターホン親機の取付高さは、利用される方の目の高さが親機モニターの位置に合うように配置するのが基本である。一般的には、床面から1.5mの高さに操作画面や受話器が来るように設置すると、使いやすい高さとなる。

壁面に取り付けられたモニター付きインターホン親機の写真

設置方向による逆光対策

カメラが設置させる方向にも注意が必要である。西側に入口がある建物の場合、カメラに西日があたってしまうと、逆光で訪問者の顔が暗くなってしまい、訪問者の顔を確認できない。

背面が白い壁面だったり、背景が空となる環境も、訪問者の顔が暗く写る。夜間の来訪など、ドアホンの周囲が暗い場合は、LEDライトの付いたインターホンを用いて、照明で訪問者を照らすことも考慮する。

高機能なインターホンでは、逆光補正機能を持つ製品もあるが、従来のインターホンでは逆光補正機能がないものも多いため、設置位置や方向については、考慮が必要である。

 
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