電気設備の知識と技術 > 弱電・放送・避雷設備 > ルータとスイッチングハブの違いと特徴
UTPケーブルを延長できる距離は100mまでである。100mを超えると、信号のレベルが低下してしまい通信不可能となる。UTPケーブルの敷設距離が100mを超過する計画の場合、中継装置を経由することで配線距離を延長できる。
UTPケーブルの中継装置には、ハブと呼ばれる機器を使用するが、搭載されている機能によっていくつかの種類がある。代表的なものに「リピータ」「ブリッジ」「ルータ」があり、それぞれ機能が違っている。
UTPケーブルを使用した構内LANは、ケーブル延長が短いほど安定するので、100mに限りなく近いような施工方法を行わないことも品質確保の施工方法として検討すべきである。
100mを大きく超える長距離を構内LANとして構築する場合、中継装置を使用せずに長距離伝送を行う方法として、光ケーブルを使用することも検討すると良い。
リピータはケーブルで伝送される電気信号を中継・再生するだけの機能を持ち、距離を延長するために使用される。UTPケーブルを長距離敷設すると、通信信号が大きく減衰する。100mを超える敷設は不可能であり、正常な通信が行えないため、リピータを経由し、信号を中継することでケーブル距離を延長できる。
従来からのLAN構成機器としてリピータが使われていたが、信号のひずみの発生や、伝送の遅延が発生することで伝送品質が低下するため、最近では使用する機会がほとんどない。リピータは10BASE-Tでは4段まで、100BASE-TXでは2段までしか接続できないという制約があり、これはカスケード接続の制限とされている。
リピータはレイヤ1(物理層)で動作する機器であり、MACアドレスの使用や、ルーチングといった機能は搭載していない。リピータはMACアドレスを参照する機能を持っていないため、伝送される情報はそのまま全ポートへ送信される。制御されていない情報の送信は、小規模ではあまり問題にならないが、多数の機器が接続されている大規模LANでは伝送速度の低下を引き起こすおそれがある。
リピータハブはすべてのデータをポートに送信する関係上、データの傍受が容易であり、パケットモニタリングによって簡単にデータを盗み見られてしまう。セキュリティの観点からは好ましくないため、リピータは採用せずスイッチ(スイッチングハブ)を使用することが望まれる。
ブリッジとは、LANネットワーク同士を接続するための中継装置である。複数のネットワークを接続することで、ひとつの大規模なネットワークとして認識・運用できる。これはスイッチングハブとも呼ばれる。
最近のLAN環境では、セキュリティの向上や信号の伝送効率の向上からスイッチングハブによる中継・分岐がほぼ全体を占めている。スイッチングハブを使用すれば、理論上は無制限にケーブルを中継・延長できる。
スイッチングハブは、レイヤ2(データリンク層)のMACアドレスに基づき、複数のLANにおいて信号を中継し転送できる。スイッチングハブは、個々のポートに接続されているノードのMACアドレスを参照する機能があり、MACアドレスで指定されたポートにのみ信号を伝送するため、効率が向上しネットワーク内の負荷を軽減できる。
多数のPCが接続されている環境であれば、効率の良い伝送ができる。大規模ネットワークでは中継点が著しく増え、ケーブル総延長が多くなり、結局はノイズを受ける部分が多くなるため伝送には不利である。
インテリジェント・スイッチと呼ばれるスイッチングハブでは、WEB画面によるLANの状態確認、トラブル発生時にe-mailで状況を送信するなど、単なるデータの受け渡しのみの機能ではなく、数多くの付加機能を搭載している製品がある。
ルータは、レイヤ3(ネットワーク層)でLANを接続する機器で、異なるネットワークを接続するために使用する機器である。IPのプロトコルによるルーチング機能を持っている。ルーチング機能により、伝送効率向上や遅延時間短縮を図り、アドレス体系が違うLANを接続できる。
ルータは、不要なパケットを遮断してセキュリティを向上させるパケットフィルタリング機能、アドレス変換機能などが装備されており、不正なパケットの送受信が行われないように設定できるのが特徴である。
複数台のPCとLAN機器を接続するためのハブ機能、DHCP(Dynamic Host Control Protocol)と呼ばれるIPアドレス自動割当機能、グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスを変換するNAT機能、PPPoEなどを用いた認証機能などを持つ。
ルータと同様の機能を持つネットワーク機器として、L3スイッチがある。ルータはソフトウェアによってトラフィックの処理を行なっているが、L3スイッチはTCP/IPのみを取り扱うよう簡素化されており、かつハードウェア処理によって処理するため高速である。企業内LANなど閉鎖されたネットワーク環境における高速・安定したネットワーク構築が可能である。
ルータはIPX/SPX、AppleTalk、NetBEIU、トークンリングなど多くのプロトコルを豊富に処理できること、トラフィックの優先処理を行うQoS機能、IP通話を行うためのVoIPゲートウェイ、セキュリティの向上に必要なファイアーウォール、DMZ機能などを豊富に備えている。しかし、L3スイッチはTCP/IPの処理に特化し、かつ付加機能が少ないというルータとの大きな違いがある。
ルータをL3スイッチに置き換えれば、高速な運用ができると考えがちであるが、L3スイッチはルータが備えるような、豊富な機能の全てを搭載していない。ルータをL3スイッチに単純に置き換えることはできない。
イーサネットLANでは、10BASE-Tや100BASE-TXなど、多様な規格で運用されており、全二重や半二重など通信のモードもいくつかの規格が存在している。これらの規格にあわせ、ハブやスイッチ、NICの設定を通信相手の設定に合わせて自動的に切り替える機能を、オートネゴシエーション機能と呼ぶ。
オートネゴシエーション機能を有効にすることで、多数の機器が設置されている環境でも、個別に設定をすることなく、最適化されたLAN環境に自動統一できる。
PoEは、UTPケーブルを利用し、ネットワーク機器に電源を供給できる機能である。PoE機能を活用すれば、近くにコンセントなど電源がない場所でも、電源工事などを新たに行わずに、IP電話機、ネットワークカメラ、無線アクセスポイントに電源供給できる。新規に電源配線工事を行うこと無く、ネットワークを構成できる。
供給可能電圧は48V、電力は15.4Wまでを最大として供給が可能である。使用するUTPケーブルは、Cat3以上のカテゴリに準拠した製品を使用すると良い。
UTPケーブルに構成されている8芯の内、4芯を使用して電源を供給できる。給電方法は、データの送受信に使用している1・2・3・6ピンを使用する「オルタナティブA」と、使用していない4・5・7・8ピンを使用する「オルタナティブB」に分けられる。
1ポートあたり15.4Wまでの電力を供給できるPoE機能の拡張版で、給電能力を30Wまで増加させた規格である。消費電力の大きな、高性能な通信機器やネットワークカメラに電源供給できる。
Cat5e以上のカテゴリに準拠したUTPケーブルを使用する。従来のPoEに準拠しているため、15.4Wの電源供給も可能である。
L2スイッチの接続する端末は、基本的に end to end であり、ループ状態となることはない。これに対し、配線の誤接続によってループが構成されてしまうと、データが循環しフレームが大きくなっていく「ブロードキャストストーム」と呼ばれる通信障害が発生する。
ブロードキャストストームは、通常転送可能な転送領域で膨れ上がり、他の正常な通信を阻害しネットワークを停止させてしまう。ループが発生した場合、そのループの原因となるポートを閉塞・遮断し、ネットワーク障害の発生を防止するのがループ検知遮断器能である。
代表的なループの発生として、複数ポートが存在するハブにおいて、同一ハブにLANケーブルを戻すとループによる障害が発生する。複数のスイッチングハブを運用している場合、末端同士のハブをLANケーブルで接続するとループが構築されるため、これも同様にネットワーク障害の原因となる。
ループの発生による障害を防止するための機構として「スパニングツリー」という技術がある。スパニングツリーを設定すると、ループが誤って構築された場合に通信ポートを遮断し、ブロードキャストストームを防止できる。
Quality of Service の略で、特定のトラフィックに対して安定した通信を確保するための機能である。主に、途切れの発生が著しい品質低下となる「音声通信」に対して使用される機能である。
ネットワーク内には数多くのトラフィックが混在しているのが通常であるが、この中から「音声通信」を優先的に扱う制御となる。その他のトラフィックの帯域を制限し、常に一定以上の伝送能力を確保できるよう制御される。
マルチキャストにおいて、受信したフレームを受信ポート以外のすべてのポートに転送することを、フラッディングと呼ぶ。フレームはVLAN番号と宛先のMACアドレスによって特定のポートにデータを転送するが、特定のアドレスが存在しない場合、全ての転送ポートにデータを伝送しようとする。
IGMPスヌーピングはフレームを監視し、データの配信が不要なポートへのフラッディングを抑制する機能である。フラッディングによって発生する不要な負荷の軽減を図ることができる。
LANケーブルを使用した物理配線において、複数の配線をひとつの伝送経路とみなし、並列でデータ伝送することで通信速度を向上させる機能である。複数の配線のうち、何本かが断線などでデータ伝送できなくなった場合でも、残った配線経路で通信を継続できるため、安全性の向上も同時に図れる。
100Mbpsの物理リンクに対し、2本の回線をリンクアグリゲーションによって接続すると、200Mbpsの通信速度を得られる。ここで1本の経路が断線しても、残り1本の経路で100Mbpsの伝送が継続される。
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