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電気設備の知識と技術 > 電気設備設計の基礎知識 > 電力量計・電力メーターの原理と仕組み

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電力量計とは

電力量計は、その系統の電路で使用した電力量を測定するための機器で、積算電力量計と呼ばれるものである。電力量計は一般に、電気メーターや電力メーターといった呼び方もされている。電力量計を経由して流れた電力を数値として表現でき、この数値を元に、電気料金の支払いやエネルギー管理を行っている。一般家庭用の電力量計は、交流電力の有効電力を計測するだけの機能を持つ、誘導形電力量計が主流である。業務用施設では、デジタル化された静止形電力量計が多く採用されている。

誘導形電力量計は、アラゴの円盤の回転を利用しており、電気の流れによって回転する円盤の回転数に電力を積算し、数値化している。家庭用として非常に広く普及している電力量計であり、住宅の外壁に設置されている。

国内の計器メーカーでは大崎電気工業などが有名であり、非常に多くの電力量計を生産販売している。筆者が設計・監理する際にも、大崎電気工業製を使用することが多い。

弱電端子盤に収容されたスマートメーターの写真

電力量計の仕様

測定する電路系統の容量に電力量計の機種を選定する。配線方式の種類として「単相2線式、単相3線式、三相3線式、三相4線式」の電力量計が製造されており、電流値は5A用、30A用、120A用が普及している。この3種の電流値以下であれば、電線やケーブルをそのまま電力量計に接続して、電力を積算・計量できる。

120Aを超える系統を計量する場合、電力量計を直接接続せずにCTを用いて計測する。一部の電子式電力量計では200A程度まで直接接続できる機種もあるが、基本的には120Aを直接接続の上限とし、それ以上はCT付きとして計画すると良い。

中央監視設備などを使用して一括計量したい場合、パルス発信付き電力量計を選定する。課金取引で使用する電力量の場合、1パルス1kWhに設定することで、1kWhからの課金が可能である。エネルギー管理の場合の電力量計は、1パルス1kWhでは発信頻度が多くなり過ぎるため、1パルス10kWhや100kWhに設定する場合もある。管理する電気容量に応じて、1パルスあたりの発信数を調整する。

電力量計の検定有無

電力量計を選定する場合、検定の有無を決める必要がある。検定の必要性は計量法で定められており「取引・証明に使用する計器は基準適合検査・検定に合格し、有効期限内の物を使用すること」と決められている。違反すると懲役や罰金刑になるため、電気料金の支払根拠として使用する電力量計の場合は、検定付きを必ず選定するべきである。

各家庭に設置されている電力量計は検定付きとなっており、電力会社との取引に使用されている。電力会社と管理会社が一括で電気供給の契約をし、入居テナントと管理会社が電気料金の支払契約をする場合、賃料として電気料金を徴収するのであれば、電気料金の取引に該当するので、検定付き電力量計による計量としなければならない。自動販売機の上部に良く設置してある電力量計も、小規模ではあるが電気料金の取引となるため、検定付き電力量計を使用する。

取引上の計量に対し、使用した電力量を管理するために使用する電力量計の場合、検定無しとできる。検定無し電力量計は検定付き電力量計よりも安価であり、コストを安く抑えられる。

電力量計の検定は、封印線によって保障されているため、封印線が切れてしまった場合や、封印キャップが損傷した場合、封印が無効となるため、電気料金の取引用として使用できない。封印が切れてしまった場合は、エネルギー管理用等、電気料金の取引以外の用途として再利用するか、撤去し新品を設置しなおす必要があるので、取り扱いには注意が必要である。

電力量計の精度

電力量計の選定方法として、500kW未満を普通計器、500kW以上を精密計器、10,000kW以上を特別精密計器で選定する。大口需要家で、大電力を使用する系統ほど、精密な計量ができる電力量計を選定するのを原則とする。これは経済産業省推奨の選定基準であるが、より精密に計量したい場合は、この限りではない。

電力量計の容量選定

電力量計を選定する場合、定格の負荷電流の1.5倍程度の余裕を持たせて選定する。CT付き・直接接続どちらも同様で、定格いっぱいで使用すると計測誤差発生のおそれがあり、正確な計量に支障をきたす場合がある。負荷の変動などが考えられる場合も、追随できない。1.5倍程度の余裕をみた電力量計の選定が望まれる。

電力量計の逆転防止

系統連系をしている電路に設置する電力量計は、逆潮流があると逆回転する。電力量の計測が狂ってしまうため、逆回転防止装置を設置し、逆向き電力が流れた場合には計測しない。

電力量計の遠隔計測

電力量計には、パルス発信付きという機種がある。一定の電力量に達した瞬間に、パルス信号を発信する機能をもっており、遠隔地に設置された中央監視設備などで受信することで、遠隔計量が可能である。中央監視設備側では、受信したパルス信号を加工し、電気料金の請求書を作成したり、エネルギー管理のための集計・演算などを自動で行うことも可能である。中央監視設備側の集計値と、現地電力量計との数値のずれが発生するので、定期的に指針値を確認する。

パルス発信機能以外にも、中央監視装置に直接計量データを転送できるLONWORKS対応の電力量計も販売されている。監視用PCで自動検針・省エネ管理を行うことも容易である。

電力量計の設置場所と向き

電力量計は、設置場所によって寿命、計量誤差に影響及ぼす。電気機器は総じて、40℃を超える高温な場所に設置できないため、盤内温度が高くなり過ぎるような環境では、冷却措置が必要となる。振動や衝撃が誤計量の原因となったり、強い磁界や電界によって誤計量を引き起こす。ノイズ発生源がある場合は、注意を要する。

縦向取付による液晶画面のピボット機能

盤内の配線状況に電力量計を横向きに取り付ける場合が考えられる。従来の誘導型電力量計では、円盤の回転に悪影響を及ぼすため、横向きに設置できない。電子式電力量計を横向きに取付した場合も、指針が横向きになるためメーター読みに支障がある。しかし、液晶画面が90度回転するピボット機能を持つ電力量計が販売されているため、これを選定すると良い。

電力量計の読み方

電力量計に表示す数値は、乗率という考え方がある。何十万kWもの電力を使用した場合、数値の桁数が膨大になるため、×60や×100というように、表示されている数値に乗率を掛けて電力を積算する。

電力量計に瞬間の消費電力を知ることも可能である。計器に記載してある「計器定数( rev / kWh )」を確認し、ストップウォッチを用意する。

計器定数は、1kWを計測する際に回転する回数を表している。revは分母を3,600とした分子の値であり、 [rev/kWh] = 1,200 の場合、1kWを計測した時点で 1,200 / 3,600 = 1 / 3 回転している計器という。

この計器定数を把握し、回転速度を見ながらストップウォッチで回転数を計測すれば、その時点の消費電力を概算できる。

この計器の円盤が10秒に10回転している場合、10[回転] / 10[s] = 1[回転] / 1[s] になるため、3kWの負荷が流れていることが計測できる。

機械式電力量計と電子式電力量計

電力量計には、円盤の回転によって計測する「機械式(誘導型)電力量計」と、電子部品によって計測する「電子型(静止型)電力量計」がある。

機械式電力量計の特徴

アラゴの円盤の原理を利用した回転駆動型の電力量計を、機械式電力量計と呼ぶ。誘導型電力量計とも呼ばれる。住宅の外壁に取り付けられているのを良く見かけるが、昔から広く普及しているタイプの電力量計である。

機械式電力量計は駆動部分が大きいことから、極端な小型化をできず、電灯盤や動力盤の内部に収容する場合、盤の奥行きが大きく必要である。円盤が回転駆動するという機構上、振動や衝撃に弱く、誤検針の原因となるため注意が必要である。電力量計が若干でも傾斜すると、性格な計測が不可能である。

電子式電力量計の特徴

これに対して、電子式電力量計は、機械式電力量計と比べて小さく製作できるため、盤の小型化を図れ、盤内の省スペース化を図ることができる。誘導型電力量計と違い、回転駆動する部品がないため、計測精度が高く、寿命も長くなる。

電子式電力量計は電子部品が多く、製造コストが高くなる傾向にある。しかし、本体寸法が小さくなるため、盤内収容の場合は箱サイズを小さくでき、電力量計によるコストアップを吸収できる場合があるので。必ずしもコストアップになるとは限らない。

電子式電力量計の欠点として、機器本体にカウンターがないため、電力量計本体が故障した場合、数値の読み取りが不可能になることが挙げられる。

積算電力量計の精度と種類

積算電力量計は、測定範囲や測定精度、積算値の使用目的に普通級・精密級・特別精密級に分かれている。

普通電力量計

普通電力量計は、契約最大電力500kW未満の小規模設備において適用される。組み合わせ変成器の階級は1.0W級である。主として、低圧受電における大容量需要、高圧受電における小電流需要での電力量計測に使用されている。計器誤差は、定格電流の1/30~等倍において±2%である。

精密電力量計

精密電力量計は、契約最大電力500kW以上の中規模設備で適用される。組み合わせ変成器の階級は0.5W級である。高圧・特別高圧の大口需要家において、電力量計測に使用されている。計器誤差は、定格電流の1/5~等倍において±1.0%である。

特別精密電力量計

特別精密電力量計は、契約最大電力10,000kW以上の大規模設備で適用される。組み合わせ変成器の階級は0.3W級である。特別高圧の超大口の需要家において、電力量計測に使用される。計器誤差は、定格電流の1/5~等倍において±0.5%である。

無効電力量計

電力量計と併用し、需要家の平均力率を算出する目的で使用される、無効電力量測定できる電力量計である。計器誤差は±2.5%である。

スマートグリッドとは

スマートグリッド(smart grid)とは「賢い電力網」とも呼ばれる送電・配電網である。日本国内の電力事情は非常に優秀であり、年間の平均停電時間が極めて小さく、世界的にも最も安定している。日本国内の電力網は既にスマートグリッド化された電力網だという意見もあり、高い品質と信頼性を持って電力運用がなされている。

スマートグリッドの目的

従来から行われている「電力会社が電力を作り出し需要家に供給する」という一方通行的な構図であれば、スマートグリッド構想を考える必要はない。しかし、自然環境の保護やCO2の削減、または非常時の電源確保という観点から、太陽光発電設備や風力発電設備など、自然エネルギーを活用した発電設備の普及が進んでおり、この電力の安定化が課題となる。

爆発的な太陽光発電設備の普及により、小型発電設備が広範囲に点在する。安定した一方通行の電力網に対し、逆方向の電力が多数流れてくるようになるため、電力の不安定化が懸念される。

太陽光発電設備や風力発電設備は、家庭用では2~3kWと非常に小型で、年間発電量も2,000kWh程度の小さなものである。これら発電設備は、太陽光が得られる時間、風力が得られる時間にのみ発電するため、極めて不安定である。

不安定電力が混在する状況において、発達したIT技術を駆使して電力需要と供給状況を監視・制御し、不安定な発電状況でも安定した電力供給を行うのがスマートグリッドの目的である。日本国内では太陽光発電や風力発電など、自然エネルギーを活用した発電設備が今後も広く普及していくと考えられているため、国内の電力安定供給のために、スマートグリッドに強い期待が持たれている。

スマートグリッドを構成する要素

スマートグリッドの構築には「電力会社の送配電網」に接続される「発電設備」と、それを制御する「制御装置」が必要となる。

送配電網

日本国内の送配電網は既に整備が完了しており、高い品質と信頼性で運用されている。年間の平均停電時間は20分程度であり、世界的にもトップクラスの安定性を持っている。

発電設備

発電設備には多くの種類があり、太陽光発電や風力発電の他にもバイオマス発電、ガスヒートポンプ発電、エネファームの小型コージェネレーションシステム、NaS電池など多くの電力発生源が考えられ、これらは電力会社配電網に系統連系されている。発電設備は今も増え続けており、いつどこが発電所となるかわからない。

制御装置

現在、需要家側が持っている発電設備を電力会社側が制御できない。唯一「電力会社が電力を送っている際は、需要家から電力を戻して良い」という単純な運用方法によって利用されているため、電力会社が必要とする電力需要に追従できない。

10kW程度の小型発電設備であれば大きな問題は発生しないと考えられるが、メガワットソーラーなど不安定な大規模発電設備が構築されるようになった昨今では、配電網の電圧不安定化が問題となる。分散された発電設備の制御装置の制御装置として「スマートメーター」と呼ばれる電力量計がある。

スマートメーターとは

スマートメーターとは、電力会社が設置する電力量計に、通信機能や開閉機能を付与した双方通信ができるものである。エネルギーの消費量やマネジメント機能を持たせたものがスマートメーターだという意見もあるが、スマートグリッドを構築するために必要な制御装置のひとつである、という点では一致している。

スマートメーターにより電力使用量、逆潮流電力量、時刻情報、停電情報を記録しデータとして情報収集できれば、電力情報の見える化に利用できるほか、第三者の省エネルギーコンサルを行う事業者によるアドバイス利用なども考えられ、雇用の創出という点から見てもメリットがある。

スマートメーターが収集した電力情報を収集し、電力会社側の送電に必要な設備、需要家側の小規模発電設備の双方を制御し、効率良く安定した電力運用を目指すことで、スマートグリッドを構築する。

スマートメーターの活用方法

スマートメーターの情報を活用し、電力消費が激しい時間帯において需要家のエアコン温度設定を電力会社側が調整し、デマンド制御を行うといった高効率な電力運用も可能である。デマンド制御は、需要家側が省エネルギーを行うため自主的に行うのが主流である。

需要家の持つ電気機器を電力会社が制御することにより、電力供給が逼迫した際に強制的に電気設備を停止するなど、大規模停電を防止するための予防策を講じることが可能である。

しかし、需要家側の資産である電気機器を無秩序・一方的に調整する訳にはいかないため、停止してよい電気機器を制御提供する代わりに、電気料金を安価にするといった契約メニューの創出が重要になると考えられる。

収集データは多岐に渡って利用でき、電力会社の課金システムにメリットを発揮できる。電力料金の支払上限額を設定し、上限に応じた空調機や照明を制御するといった、想定電力量分析による運用も考えられる。スマートグリッドとは違った使用方法であるが、WEBを用いた電力使用状況の確認、電力契約の申込み対応、メーター開閉機能による電力供給制限なども容易である。

スマートグリッド導入によるメリット

スマートグリッドの導入により、省エネルギー、省CO2社会を実現するという目的がある。スマートグリッドの導入により、電気を使用する需要家がエネルギーの利用状況を把握できること、スマートグリッド構築に必要な機器やサービスの拡充により新たな雇用を創出し経済の活性化を図ることができることなど、多くのメリットが考えられる。

需要家側から見たスマートグリッドのメリット

スマートグリッドを構築する場合、スマートメーターの設置が必要である。スマートメーターでは、消費電力や発電量などが提供され、これら情報を活用することにより省エネルギーを図ることができる。

家庭用のスマートメーターにエネルギーマネジメントシステムを併用すれば、どの家電が大きく電力を使用しているか明確になり、節電意識の向上、節電対象の絞り込みが容易になり、省エネルギー意識の向上にもつながる。

電力会社から見たスマートグリッドのメリット

電力会社は、需要家がスマートメーターを導入することにより遠隔検針による労務の効率化が期待される。建物の隙間や、植栽帯に隠れた場所に設置されている電力量計の検針には危険を伴うが、遠隔検針機能により安全性の向上を図ることができる。

電力の使用状況をより詳細に把握できるため、電気料金の見直しなどを精度良く実施できる可能性もあり、電力の使用状況に応じた細かな料金メニューを構築することもできると考えられる。

電力の使用状況の把握は個人の生活スタイルの把握と同義であり、秘匿性が非常に重要である。電力の使用状況によって在宅・在室状況が解るので、プライバシーの保護の観点から、電力の使用状況についての管理・使用は特段の注意を払う必要がある。

スマートグリッド構想の今後

スマートグリッドは現時点ではまだ構築がなされておらず、今後の課題としていくつかの問題点を残している。スマートメーターの導入には電力量計の交換が必要であるが、日本全国の世帯に普及するまでに多大な時間を要する。

個人情報のやり取りを行うためセキュリティの確立、スマートメーターの通信プロトコル標準化、スマートメーターから制御する電気機器の通信システム確立など、多くの課題を残している。

日本国内の電力会社では、試験的にスマートメーターの導入による実証実験を進めており、今後数年~数十年を経て、スマートメーターの普及が進んでいくものと考えられる。

 
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