検索キーワードを入力
🏠 電気設備の知識と技術 > 電気設備設計の基礎知識 > 電力量計・電力メーターの原理と仕組み
キュービクル・盤類における雪害対策の必要性
寒冷地において、キュービクル式の高圧受電設備や分電盤を屋外に設置する計画は多く、降雪や低温による冠雪や着氷が発生した場合、機器本体か機器動作機構部が機械的に損傷したり、損傷に伴う絶縁耐力や絶縁抵抗の低下、さらに進行すると地絡や短絡事故への進行など、大きな事故につながるおそれがある。
よって、設計段階から雪害を想定した対策を講じることが、電気の安定供給に対して重要となる。積雪地域では、落雪の被害を受けない配置計画、冠雪に耐えられるキュービクルの強度検証、結露対策、積雪によるアクセス不良を回避するメンテナンス計画など、多くの配慮事項が存在する。
積雪地域における配置上の留意点
積雪によって発生する問題は、着氷等による損傷だけでなく、大量の雪が障害となって点検が困難になるという点が挙げられる。点検も支障なく行うためには、容易に雪に埋まってしまうような配置をさけ、かつ除雪がしやすい配置計画を行うことが望ましい。
また、周辺建物からの落雪や、つららの落下等により屋根が損傷することも考えられる。落雪は非常に重い雪の塊であり、高所から落下することによる衝撃で、屋根面がへこんでしまったり、盤面のガラスが割れるといった事故につながるおそれも考えられる。
下記に、積雪がある地域によける配置計画の注意点をいくつか紹介する。

機器を高い位置に配置する
積雪地域においては、地表からの積雪量が装置の給気口や排気口に達してしまうと、換気不良による熱異常を引き起こすことになる。また点検扉の軌跡に積雪が達すれば、扉を開けることができなくなる。このような機能障害や点検困難を防ぐため、設置地域の最大積雪量や平均積雪量等を参考にし、基礎を一定の高さ以上とすることが望ましい。
除雪を行う時間を確保し、ある程度の雪が降ったとしても雪かきをすることで点検スペースを確保することが可能となる。電気ヒーターマット等を敷き詰めて積雪を電気的に溶かしてしまう「融雪設備」の採用も一案であるが、イニシャルコストとランニングコストに影響することから、人力によるメンテナンスとのバランスが重要である。
一般的に、キュービクル周囲に高さを確保した点検通路を設け、点検通路から雪を落とし、除雪がしやすい形状とすることが望ましい。階段部分は人が雪を踏みつけることから、踏み固められた雪が氷のようになり非常に滑りやすく危険のため、部分的にヒーターマットを敷くことで融雪することが望ましい。
落雪による衝撃を回避する
建物屋根からの落雪を回避するための最も簡易に方法は、建物の近くに配置しないことである。風下方向には屋根からの雪が張り出す「雪庇」が発生しやすいため、屋根下や軒先に電気機器を配置すると、落雪によって損傷する危険性が高まる。これはキュービクルや盤類に留まらず、照明器具や植栽帯なども同様と考えて良い。
吹き溜まりに機器を配置しない
風下は、地吹雪の影響により吹き溜まりへの積雪が発生し、点検扉の前などに不定形な積雪を発生させるおそれがある。地形や建物の影響を考慮し、吹き溜まりが発生しやすい位置を避けるよう努める。
防雪柵や防風ネットなど、網形状の遮蔽物があれば雪の侵入を避けられるため、風の通り道を変え、吹き込み雪や飛雪の進入を制御することも一案である。特にキュービクルや屋外の分電盤は換気口が存在するため、雪が容易に侵入しないようフィルターを取り付ける、ガラリを迷路形状にする、底板を隙間なく塞いで舞い上がりによる雪の侵入を防ぐといった措置を講じる。
キュービクル屋根の強度を確認する
キュービクルの屋根勾配を大きくすることは、板金の標準設計が出来上がっているキュービクルに対してはコストアップにつながるおそれがあるため、困難である。雪が長期に渡って乗っていることを想定し、長期積雪荷重に耐えられる十分な屋根強度を保っていることを確認することが重要である。
結露防止のため盤内を保温する
変圧器を搭載している屋外型キュービクルの場合、24時間通電状態であれば、変圧器の損失によって発生する熱量により保温されるため、内部結露に至るおそれは比較的低い。しかし年次点検や操業休止期間が取られる場合、筐体内の温度が著しく低下することがあると、その期間に結露につながる危険性があることに留意しなければならない。
また分電盤や動力盤など、発熱体を持たない盤類では、朝夕の温度変化や積雪の影響により内部結露につながるおそれがあるため、スペースヒーターを搭載することで内部保温をすることが望ましい。スペースヒーターはサーモスタットによる自動オンオフ制御を搭載し、かつ温度設定可能なものとし、盤内温度を+5℃以上を維持するよう計画すると良い。
塩害地域では塗装膜圧や素材を変更する
塩害地域では、積雪に塩分が含まれていることも想定され、長期に渡る海水塩を含む積雪の接触は、特に電線のブッシング部分やがいし等に悪影響を及ぼす。キュービクルや分電盤は、塗装面の損傷により腐食が進行することから、屋根面や外装の塗装膜圧を80μm以上と厚くしたり、亜鉛溶射鋼板を用いるといったことも配慮すると良い。
特にキュービクルや分電盤の屋根面に発錆しやすいことから、雪解け後にキュービクルの洗浄や再塗装を計画し、腐食の傾向があれば早期の塗り直しをするべきである。腐食を放置すると、盤内部への浸水につながり大変危険である。