ロードヒーティング設備の設計

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融雪・融雪設備の種類

融雪設備には、凍結路面をヒーターで融解する「ロードヒーティング」、庇からのつららや落雪を防止する「笠木ヒーター」、竪樋や排水管凍結防止の「ドレンヒーター」などがある。

寒冷地では、凍結により躯体や設備が破損しないよう融雪設備が設置される。落雪が下を歩く人に直撃すると命に関わる。凍結した路面は転倒事故を引き起こしたり、車両スリップ事故につながるため、融雪設備によって雪や氷を溶かし、乾いた路面を維持することが望まれる。

上記の融雪設備のうち「ロードヒーティング」は、アスファルト内部に電熱線や温水配管を通し、アスファルトを内部から加熱することによって表面の雪や氷を溶かす。豪雪地帯や寒冷地域では、駐車場や施設入口など事故の起こりやすい場所に限定したロードヒーティングを行うのが一般的である。

路面を加熱し着雪・着氷を防止するロードヒーティングのほか、パラペットと笠木の間に電熱線を敷設し、笠木を加熱することで積雪を防止する「笠木ヒーター」や、竪樋など排水管の内部に電熱線を投下、または外周を電熱線で巻いて管路を加熱し凍結を防止する「ドレンヒーター」など、各種融雪設備を設けることで建物の品質を保っている。

ロードヒーティングの目的

ロードヒーティングは前述した通り、積雪や凍結が予測される地域において、路面の凍結や融雪の防止を目的として設置される設備である。勾配5%以上の上り坂、勾配3%以下の下り坂、半径50m以下の急なカーブなど、車両スリップにより事故が発生する可能性の高い場所に計画される。

車路のうち停止を要する部分、トンネルやアンダーパス出入口なども事故が多発する場所であり、融雪設備を設ける場所として適している。ロードヒーティングを行うべき場所として、代表的な部位を下記に示す。

  • 上り坂(5%以上)、下り坂(3%以上)
  • 交差点
  • 料金ゲート付近
  • トンネル出入口
  • エントランス、風除室前
  • 主要な通勤、通学路

ロードヒーティングは車両に対してだけでなく、人が滑って転ばないように設けるのも重要である。玄関前やアプローチ道路、風除室前の要所に設置することも、転倒事故の防止に役立つ。

ロードヒーティングの発熱の仕組み

ロードヒーティングは、電気を熱源としたものと、ボイラーによる温水を熱源とした2種類が一般的である。北陸地方など比較的温暖な地域であれば散水による融雪という手法があり「消雪設備」として普及している。道路に埋設した地下水配管をポンプで圧送し、少量の水を出し続けて雪を溶かす設備で、積雪の多い地方でも比較的温暖な北陸地方などでの採用実績が多い設備である。

消雪設備は初期投資や維持費が安価で、特殊な設備機器の導入が不要なので広く普及しているが、北海道や東北の厳寒地では、散水による消雪の計画は不適である。水によって一時的に雪を溶かしたとしてもそのまま凍結し、より危険な状況となり、そもそも散水用の水が凍結し、配管が破損する。

厳寒な地域では、地中にボイラーで加熱した不凍液を循環させる方式か、電熱線を埋設する方式が採用される。これら設備は初期投資、維持費ともに高く、限られた部位にのみ採用される。

電気熱源によるロードヒーティング

抵抗に電圧を印加し電流が流れると P=I^2R という計算式に応じてジュール熱が発生する。このジュール熱を利用したものが、電気熱源によるロードヒーティングである。ヒーティングケーブルと呼ばれる、効率良く熱を発生させるケーブルをアスファルト面に埋設し、これに電圧を印加することで発熱させ路面を温める。

ヒーティングケーブルは大きな電流を流すほど大きなジュール熱を発生する。供給する電源は三相動力が一般的で、加熱したい面積に応じて電気容量が大きくなる。

発熱導体への電源供給は、対地電圧300V以下と規定されている。戸建住宅の範囲であれば単相電源も考えられるが、業務施設や大規模駐車場に計画する場合、設置面積が大きくなるため、配線の効率化から動力電源を選択される。

電気を熱源としたロードヒーティングの利点として「小面積、複雑な形状に対応可能」「ボイラーが不要なため環境にやさしい」「制御応答が良い」といった利点がある。しかし、電気熱源のロードヒーティングは大面積の敷設に向いておらず、イニシャルコスト・ランニングコストともに不利となる。

温水によるロードヒーティング

ロードヒーティング用にボイラーを設置し、ヒーティングパイプをアスファルト面に埋設することで加熱する。熱源機・ポンプ・制御装置が一体となったユニットが一般的で、100㎡を超える大面積では電気式ロードヒーティングよりもメリットがあるとされている。

温水式の利点、欠点は概ね電気式の逆となる。大面積に適しておりイニシャルコスト・ランニングコストともに利点があるが「小面積、入り組んだ形状に向かない」「排ガスにより環境負荷が大きい」「電気式よりも制御応答性が悪い」という特徴があるので、計画する場所や用途によって適切な製品を選定するのが重要である。

地域別の単位面積当たりの必要発熱量

北海道や東北地域は、積雪量が多く凍結のおそれが高いため、より高い発熱量が必要となる。対して関東以南は、積雪量も凍結のおそれも小さいため、発熱量も小さく抑えられる。下記は、地域別の目安となる発熱量である。

  • 北海道(道東・道北):300W/m2
  • 北海道(道央):250W/m2
  • 東北(山間部):250W/m2
  • 北海道(道南):200W/m2
  • 東北:200W/m2
  • 北陸:200W/m2
  • 関東以南:170W/m2

上記発熱量は目安である。道央(250W/m2)に位置する場所であっても、冬季の冷え込みが厳しい地域では、道東・道北(300W/m2)に準じた発熱量を必要とする場合もあるので注意が必要である。

道東や道北は凍結のおそれが極めて高く、さらに積雪量も多いため、融雪には大きな熱量を必要とする。南下するほどに必要発熱量が小さくなり、関東を境に170W/m2程度が下限となる。

関東や北陸地方でも、降雪量が多くなる地域では、降雪量の実態に合わせて補正が必要である。降雪量1cm/h毎に100Wの熱量が必要とされており、降雪量が2.5cm/hの地域では、250W/m2の発熱量が必要である。

電気式ロードヒーティングの制御方式

電気式のロードヒーティングを計画する場合、発熱量の設定だけでなく、ヒーターの制御方式、電熱線の仕様、故障時の警報の取り方を検討する。ヒーターの制御方法は電力量に大きく影響し、ランニングコストに跳ね返るため注意が必要である。

ロードヒーティングをする場合、制御要素を複数計画することで省エネルギー性能を高められる。ヒーターのオンオフを行う要素を数多く計画すれば、それだけきめ細かな動作が可能となり、消費電力を抑えられるが、制御要素を増やすのはイニシャルコストの増加につながる。

ヒーターの制御方法には、設備グレードによって下記の5要素が考えられる。

  • ヒーター温度または路面温度を検出するもの(1要素)
  • 路面温度と路面水分(雪の存在)を検出するもの(2要素)
  • 路面温度と路面水分、外気温を検出するもの(3要素)
  • 路面温度と路面水分、外気温、降雪情報を検出するもの(4要素)
  • 路面温度と路面水分、外気温、降雪情報、降雪確率情報を検出するもの(5要素)

ヒーター温度または路面温度を検出するもの

ヒーター温度や路面温度だけを制御のトリガーとする方式である。最も安価な制御方式であり、温度が低ければ発熱するという単純な仕組みである。

この方式では、予熱運転と融雪運転の切り替えができないため、常に融雪発熱状態となってしまいランニングコスト面では不経済となる。

路面温度と路面水分(雪の存在)を検出するもの

ヒーター温度や路面温度に合わせて、路面水分の有無を要素の一つとする方式である。路面水分がない場合は、路面温度が低くても凍結のおそれが少ないとして、予熱運転に切り替えられる。路面の水分は雪の存在でもあるので「雪や水分がないのに路面を温めている」というエネルギーの無駄を防止できる。

路面温度と路面水分、外気温を検出するもの

温度、路面水分に加えて、外気温を検出して要素としたシステムである。外気温情報によって制御を補正すれば、予熱運転への切替がより高精度となる。

路面温度と路面水分、外気温、降雪情報を検出するもの

温度、路面水分、外気温に、降雪の有無を要素として追加したシステムである。寒冷であっても雪の少ない地域では、降雪の有無を要素として追加すると、より省エネルギーな運転が可能である。雪が降らなければ凍結のおそれが少ないため、これも予熱運転に切り替える判断基準として重要である。

路面温度と路面水分、外気温、降雪情報、降雪確率情報を検出するもの

温度、路面水分、外気温、降雪有無に、降雪気象情報を取得したシステムである。大規模施設での採用に限られた高級なシステムである。降雪確率20%未満であれば最も省電力となる予熱運転をし、降雪確率60%を超えるようであれば比較的高い温度の予熱運転にするなど、降雪確率によって熱量を自動制御する。

きめ細かい制御を行うことでより省エネルギーな融雪設備を実現できるが、制御装置が複雑になり、保守管理が煩雑である。設備コストが増大するため、設備グレードの十分な検討が必要である。

制御・配線計画の注意点

防水エリアでの水分検出機能

屋上駐車場など、防水を施した場所にロードヒーティングを行う場合、防水によって水分検知が遮蔽されるため注意が必要である。

故障警報の取得

ロードヒーティングは熱を扱う設備のため、過熱による故障の可能性がある。温度調節装置には過熱防止のサーモを組込み、異常発熱による焼損を防止する。発熱体への電源供給を行う配線は、耐熱性のある電線を選定すべきである。

電熱線は外部からの掘削や衝撃等により、断線してしまうことがある。ロードヒーティングの電熱線は一定のエリアごとに分けられているため、一部が断線しても全体が使用不能にはならないが、故障部分は融雪を行えない。

電熱線が断線してしまった場合、断線部分を調査する専用調査器具を用い、故障箇所の路面を剥がして復旧を行う。故障が早期に判明できるよう、電熱線の分岐遮断器トリップを故障警報として移報するなど、管理がしやすい設計とするのが良い。

融雪電力の供給と融雪契約

融雪設備に電源供給をする場合、電力会社の特別な契約を受けられる。全ての電力会社において融雪メニュープランが幅広く用意されている訳ではないが、北海道電力の管区では、高圧受電による融雪契約で非常に有利な設定がなされている。融雪だけでなく、暖房器具への電源供給にも使用できるので、電気料金をより低く抑えられる。

融雪電力需給に置ける電気系統

融雪電力は、融雪のために行う電力が割引きされる契約である。電力会社が規定している融雪機器や暖房機器以外の電気設備を接続してはならない。一般用とは違う専用の系統設備を用意し、負荷に直接接続する。

融雪電力は24時間通電し続けられない。1日のうちに数時間は電力を遮断することを求められる。融雪電力の契約は、凍結のおそれがある所定の時間帯のみ通電させる契約なので、通電用タイムスイッチを需要家側が組み込んで対応する。通電条件を電力会社と確認し、融雪を確実に実施でき、かつ電気料金を小さく抑えられる契約とする。

北海道地区など凍結が著しい寒冷地は、ロードヒーティングや融雪が必須ともいえる環境である。電力会社の契約メニューには非常に安価な設定があるので、運用状況に応じて最も合理的な契約メニューを選択すると良い。なお北海道を除く地域では、融雪電力の契約メニューは料金は比較的高く設定されている。

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