電気設備の知識と技術 > 電気設備設計の基礎知識 > コンセントの種類と形状
コンセントは、プラグ等で差込み接続して電源を確保するための機器で、建築物の電気設備としては100Vから200V、業務用の動力200Vなどが広く使用されている。
住宅を例にして、コンセントの用途を解説する。天井にシーリングライトの照明器具を設ければ、部屋全体の照度を確保できるが、コンセントにスタンドライトなどを接続すれば、局所照明を点灯できる。リビングにはテレビやAV機器が設けられコンセントに接続されている。
部屋を掃除するには、コンセントに掃除機を接続して電源を送らなければならないし、キッチンには冷蔵庫や電子レンジなどが設置される。洗面所には洗濯機が置かれ、髪を乾かすためのドライヤーが使われるが、これらも全てコンセントから電源が送られる。
コンセントの用途は非常に多岐に渡り、家電製品への電源供給として、各所に多くのコンセントが配置される。
コンセントの数は多いほど便利であり、色々な用途に使用できる利点があるが、コンセントの数が多いほど、設備コストが増加するという問題があるため、無計画に多くのコンセントを設置するのは避けるべきである。
ここでは、コンセントの種類、形状による使い分けなど、コンセントに関わる設計手法や、技術的な内容を幅広く解説する。
コンセントという名称は和製英語であり、海外では「アウトレット」という名称で呼ばれている。電話のモジュラージャックの接続口はコンセントではなく、アウトレットという名称が既に使われているため、コンセントは「電源を取れる差込口」を呼ぶのが一般的である。
コンセントは、電圧、接地の有無に多くの種類がある。代表的なコンセントの形状と電圧は下記の通りである。
一般家庭で用いられる100Vコンセントのほか、エアコンやIHクッキングヒーター、業務用冷蔵庫のように、大きな電力を必要とする電気機器は100Vコンセントではなく200Vコンセントを使用する。
コンセントの誤接続は機器の焼損や火災の原因となる。100V仕様の電気機器に200Vを供給すると、想定以上の力や発熱が発生し機器を破損する。同じプラグ差込形状では危険なため、誤って接続されないよう差込形状が変えられている。
漏電発生時に漏電遮断器を確実に動作させ、人体が感電しないよう「接地極」が設けられている。冷蔵庫や電子レンジなどの調理器具、洗濯機などは、水濡れによる絶縁性能の劣化が懸念されるため、接地極付きコンセントの取付が義務付けられている。
コンセントを計画する場合、使い勝手の良い場所に設置するのはもちろん、コンセントの用途を把握し、ブレーカーや配線に適正な電流が流れるよう計画しなければならない。
分電盤に設置されているブレーカーは20アンペア以上の過負荷電流を遮断する性能を持っている。ドライヤーや電子レンジは10~12Aの電流が流れるので、2台同時に使うような計画をしてはならない。
ここでは、コンセントの配置計画、配線計画についての基本事項を解説する。
住宅のコンセント用途は非常に多岐にわたる特性があり、一部テレビやエアコン、冷蔵庫の専用コンセントを除き、部屋に設けたコンセントは照明、オーディオ、掃除機、暖房器具など、数多くの電化製品が接続される。廊下のコンセントは掃除機用に使うが、足元灯を取り付ける可能性もある。
居室では、入口扉の照明スイッチ付近にコンセントが設けられ、掃除機やデスク用として使われる。対面する壁面に、テレビなど生活家電用のコンセントを設置すると、どのような家具配置でもコンセントが利用できるので便利である。近年では、テレビ・LAN・電源がひとつで確保できる「マルチメディアコンセント」が一般的であり、これを配置することでも良い。
住宅のコンセント計画においては、ドライヤーや電子レンジ、電気暖房など大きな負荷を使う回路と、それ以外のコンセントを分離することが重要である。
浴室周りでは、洗濯機、ドライヤーなどが使用される。キッチンでは炊飯器、電子レンジ、電気ポット、食洗機など、負荷の大きな電気機器が設置される。これらが同一回路になっていたりすると、同時に運転した場合、過電流のためブレーカーが落ちてしまう。
ブレーカーの回路分けの不具合は、生活を始めてからしばらくして発生することが多いため、気付くのが遅くなりがちである。しかし電源の考え方は、住宅における生活の根底に関わるので、分電盤の回路分けとなっていた場合、回路増設や回路変更を検討すると良い。
住宅用のコンセント高さは、接続する電気機器に応じた高さに設定する。汎用のコンセントは高さ200mmとするのが原則である。下記は、住宅内に設けるコンセントの標準的な高さ設定である。
住宅など、生活するための部屋に設置するコンセントのプレートは、プラスチック製のカラープレートとすると意匠的に調和する。事務所や商業施設、工場などは使い方が住宅よりも荒く、金属製のプレートが使われるが、住宅用で金属製プレートはほとんど採用されない。
大量購入と取付を行っている分譲マンションでは、一般的なプラスチックプレートが使われるが、スイッチプレートには「木製」「陶器製」「真鍮製」など多くの種類があり、和風建築から洋風建築まで幅広く選べるようになる。
業務施設の金属プレートは無骨で住宅向けではないが、表面に鏡面磨きやマット加工を施したステンレスプレートもあり、モダンな雰囲気を演出できるため住宅にも適合する可能性があり、デザイナーに好まれる傾向にある。これら特殊使用のプレートは大変高価なため、利用場所を限定して用いるのが良い。
フルカラープレート、モダンプレート、新金属プレートのほか、パナソニックのアドバンスシリーズ、神保電器のNKシリーズなど、バリエーションは豊富である。
コンセントの形状は、接地極付きのダブルコンセントとすると、接地極付き月プラグが接続できるようになり、汎用性が高く使いやすくなる。パソコンなどを多数接続できるOAタップは、プラグが接地極付きになっていることが多く、壁コンセントが接地極なしタイプでは差し込みができない。
電気設備の安全基準を定めている「内線規程」によると、コンセントは原則として接地極の設置を求めているため、今後の設計では、接地極付きダブルコンセントが一般化していくと思われる。
漏電や感電の危険性が高いため、浴室にはコンセントを設置してはならないが、トイレや洗面台を併設したユニットバスでは、ドライヤーを使うためのコンセントが必要である。
ユニットバス内にコンセントを設けるためには、漏電遮断器の感度を高めて、万が一の漏電に対して人体への危険性を最小限に留めなければならない。
一般仕様の漏電遮断器は感度電流30[mA]での動作であるが、半分の漏電電流で動作する15[mA]仕様の高速形漏電遮断器で保護し、コンセントを設けるのが一般的な設計方法である。拘束な漏電遮断器で保護している場合でも、水が直接掛からなるのは危険であり、できる限り高い位置にコンセントを配置するのが望まれる。
OA化が著しい近年のオフィスビルでは、個人用パソコンとディスプレイのほか、スマートフォンの充電装置、タスク照明、無線端末などが接続され、さらに個人用の卓上ファンや加湿器などが使われる。4口程度のOAタップでは不足することが多く、机1箇所ごとに6口以上のOAタップが求められ、そのコンセント負荷容量は50~60[VA/㎡]程度である。
OA化された事務所は、床をフリーアクセスフロアで構築し、床下から電源や通信線を自由に取り出せる計画とするのが一般的である。フリーアクセスフロアは、床パネルに開口部を設けることで、通信線や電源線を自由に取り出せる。
OAタップはフリーアクセスフロアの下に収容することも可能であるが、タップのみをフロア上に転がし、配線をフロア下に収容して見栄えの良い配線工事が行われる。
フリーアクセスフロアに床用コンセントを取り付ける方法もあるが、電源の取り出し場所が固定され汎用性が低くなるため、フロア下にハーネス付きのタップを転がし、OAタップを必要場所に移動させるという使い方が主流である。
事務所や会議室では、フリーアクセスフロアを全面に配置し、OAタップを各所に配置する方式が主流である。しかし、床に転がしてあるコンセントを使って、日常清掃を行えないため、掃除機を差し込むための壁コンセントを配置しなければならない。
清掃用コンセントは、出入口の扉付近に設置するのが原則である。扉を開け、付近にあるコンセントに掃除機を接続して清掃を行う。コードが届かないことに考慮して、窓側にも壁コンセントを設置すると良い。
ブラインド操作パネルが窓際に設置されているのであれば、パネルの直下に設けると、まとまりのある配置計画となる。
オフィス空間は、事業内容の変更に伴い、間仕切りの変更が頻繁に発生する。間仕切りの構築は「柱」を基点にして行われることが多く、間仕切りと干渉しないよう、コンセントは柱の中心から少しずらして配置すると良い。
清掃用のコンセントは、事務室内部だけでなく、廊下やトイレにも必要である。エレベーターホールや廊下に、約15m~20m毎に1つ程度、壁コンセントを設置しておけば、業務用の掃除機が無理なく接続できる。
業務用の掃除機は充電式も多く、事務室内のコンセントを使わないことも多いが、設計セオリーとしては、出入口や窓下の目立たない位置に、清掃用の壁コンセントを用意するのが基本である。
オフィスビルなど、業務施設のコンセント高さは床面から300mmを基本として配置する。屋外や水周りの防水コンセントは、300mmに配置すると雨が跳ねてコンセント内部に浸水するので、500mm以上の高さに配置して漏電防止を図る。
社員食堂など、厨房がある建物では、厨房機器メーカーの要望にあわせた配置と種別が基本であるが、500mm以上の原則を守って設置すべきである。
車庫や駐車場など、直接雨が当たらない軒下やピロティであれば高さ300mmで問題ないが、雨が直接当たる平面駐車場などでは、基本ルール通り500mm以上の高さとする。電気自動車充電コンセントを設けるのであれば、1000~1300mmの高さとすべきである。
防災機器や、電気容量が大きいコンセントは、複数の電気機器が接続できないよう「単独回路」とすべきである。下記の負荷は、単独回路として設計し、必要に応じて漏電遮断器で保護すべきである。
上記の負荷に限らず、施主との打ち合わせにより、専用回路とすべき負荷を検討するのが良い。
100V、200Vの電源供給を行うコンセントのほか、特殊用途のコンセントについても紹介する。
高齢者向け製品として、張力を与えると外れるコンセントである。マグネットアダプターを介してコンセントに接続することで、足を引っ掛けたり、引っ張った場合にコンセント部分が本体ごと外れるので、万が一にも安全性が保たれる。
マグネットを利用した製品は、電気ポットや電気ケトル、加湿器にも採用されている。家電の本体側にマグネットタイプの電極が設けられており、壁側が一般コンセントであっても対応できる。
接続したコードに足を引っ掛けても、プラグごと簡単に外れるから、熱湯の入ったポットやケトル本体が倒れることがない。熱湯を扱う機器や、ホットプレートなど加熱する機器には、外れるプラグを用いて火傷防止を図るべきである。
未使用のコンセントに跳ね水やほこりが入り込まないよう、シャッターが設けられたコンセントである。「扉付コンセント」とも呼ばれている。
「片刃挿入防止機能」が備わっている製品であれば、片側のみの差し込みではシャッターが開かないため、跳ね水やほこりの侵入だけでなく、子供がコンセント差込口に異物を入れることによる感電事故の防止にもなる。
未使用コンセントへの異物侵入防止であり、トラッキング防止としての機能はない。トラッキングを防止するのが主目的であれば、刃の根元に絶縁キャップを設けた製品を採用すべきである。
シャッター付きコンセントを用いる場合、配線器具は可動部分から劣化していくので、長期使用によりシャッター部が故障しやすくなる。シャッター部分が動作しなくなった場合、器具交換が必要となる。テーブルタップの交換であれば電気工事士資格は不要であるが、壁付けコンセントがシャッター付きの場合で配線の再接続を伴う場合、電気工事士資格が必要である。
シャッター付きコンセントを使用するのであれば、開口部からほこりが侵入することはないので、コンセントカバーを差し込む必要はない。
USB機器の充電が可能なコンセントである。USBの接続端子が設けられており、100V電源を5Vに変換して、USBからスマートフォンや携帯電話、バッテリーの直接充電が可能である。
個人住宅やマンションなど家庭で使うことはほとんどなく、ホテルの宿泊施設、カフェ、空港のラウンジなどで多用されるコンセントである。日本国内とは電圧の違う海外諸国の充電器を持ち込まなくても、持参したスマートフォンが直接充電できるため、大変便利である。
一般用の埋め込みコンセントと同じ、連用枠を用いた取付が可能なので、すっきりと仕上げられる。ホテルでは、テレビ台に内蔵させる事例も多くなり、海外からの観光客への配慮が進んでいる。
病院は一般の場所と違い、極めて高い品質が確保されたコンセントを要求される。「接地性能」「衝撃性能」「耐薬品性能」の3つを強化しており、過酷な使用環境に耐える高い品質を確保している。
病院の電気機器は、マクロショックとミクロショックを防止するため、全ての電気機器の電位を同じとする「等電位接地」が施されている。ミクロショックを防止するためには、コンセントから供給される電源の漏れ電流を数十μA以下まで低減させなければならず、高い接地性能が求められる。
病院内ではストレッチャーや医療機器など、大重量の機器や装置が移動するため、コンセントやプラグに接触しても容易に破壊されないよう、高い衝撃性能が確保されている。
コンセント本体の物理的強度のほか、プラグで接続されている電気機器が容易に抜けないように配慮されている。
医療用コンセントは、病室や手術室にも必要となり、笑気(亜酸化窒素)ガスや酸素、二酸化炭素、窒素など多くのガスに曝されるおそれがある。金属部品や端子が腐食しないよう、耐薬品性が強化されている。
100V用のコンセントは、2つの孔があいている差込口にプラグを差し込んで給電する配線器具である。コンセントに対面して左側の孔が大きく、右側の孔が小さく作られており、国内のコンセントはこの形状が基本である。
100Vコンセントには「極性」と呼ばれる性質があり、片方は「電気が送られてくる側」、もう片方は「負荷で使われた電気が戻っていく側」としている。直流ではプラスとマイナスを間違えると給電できないが、交流ではどちら方向であっても問題なく使用できてしまうので、あまり意識されることはない。
しかし、電気設備分野では、コンセントの極性を基準どおりに計画し施工しなければならない。実情の使い勝手に何ら問題ないとしても、通信機器や音響機器では極性が逆になっていると不具合を起こす可能性がある。
機器の不具合だけでなく、コンセントの交換や点検において、極性違い感電事故の原因ともなる。
基本的な考え方として、孔が大きい側は「負荷から電源に戻る(白線)」とし、孔が小さい側は「充電されている(黒線)」としなければならない。つなぎ込む電線の識別色も、この原則に基づいたカラーとすべきである。
通信機器や音響機器では、コンセントの極性違いによって通信品質が変化したり、音質が変化するといわれる。極性を重視する機器は、プラグ側にも「白線側に接続すること」を示す表示がされており、記載通りの接続をしているのに極性が逆になっているとあれば、大きな問題である。
単相2線式(白線と黒線で100V供給)と呼ばれる回路では、白線側と接地線が接続されて大地とつながっている。大地はノイズの放流先であり、電源回路や通信機器、音響機器に含まれるノイズを効果的に外部へ逃がすには、白線側に正しく接続するのが効果的である。
コンセントプラグの差込方向を変えることで、安定動作、品質向上、音質向上といった効果が表れるので、適切な接続になっていることを確認すると良い。
白線に接続されている接地線を活用する方法ではなく、専用の接地線を接続できる製品であれば、白線の極性合わせによる効果を求めるよりも、ノイズに汚染されていないアース(接地線)につなぎ込むのが良い。
白線は「中性線」であり、接地線とつながっていても帯電している可能性があり、ノイズ放流先としては不十分である。完全に独立して大地に接続されている「接地線」とは違うため、混同しないよう注意を要する。
電気工事士は、コンセントの取付工事が完了したのち、極性が適正となっているかを確認する極性試験を行う。モーターの電動機で極性を間違えると、逆回転を始めるため極性の間違いがあっても即座に発見できる。
コンセント本体の背面には「W」という「ここに白線をつなぐ」という意味の記号が記載されているため、通常電気工事士であれば間違えることはないが、100Vコンセントは極性が反対であっても接続された機器は問題なく使えてしまうため、100V回路の極性間違いが発生しやすい。
コンセントに端子タイプのテスターを差し込んで極性を確認する方法もあるが、電気の専門教育を受けていない者がコンセントにテスターを接続するのは危険を伴うため「コンテスター」と呼ばれる機器を使用すると安全である。
極性を簡易に確認するには「コンテスター」と呼ばれる極性確認用の差し込み器具を使用する。コンテスターをコンセントに差し込み、極性に間違いがなければ正常ランプが点灯する。
コンテスターは神保電器や共立電子産業といった複数のメーカーが販売しており、電気工事士の多くが携帯している。神保電器コンテスター活用ガイド(PDF)を参照。
コンテスターはコンセントに接続するだけで「検電」「極性」「接地」がひと目で確認できるため安全かつ素早い検査が可能である。高性能な機種であれば、接地回路に15[mA]または30[mA]の地絡電流を流し、漏電遮断器が適正に動作するかを確認できるため便利である。
極性が逆方向で施工されている場合、施工ミスであり、施工した電気工事士に対して是正工事を求めるべきである。
コンセントは、電気回路に並列に接続すれば、いくつでも連結数を増やせるので、増設を行うことも容易である。しかし、コンセントはどのような負荷を接続するかわからないため、接続数が多すぎると、ケーブルの発熱や、ブレーカートリップを引き起こす原因となる。
住宅でのコンセント増設の場合、洗面所やキッチンのコンセントを分岐して増設することは望ましくない。洗面所ではドライヤーや洗濯機が接続されるため、大きな電流が流れることが前提の電気系統である。
追加の負荷を接続すると、系統に流れる電流が大きくなり過ぎるだけでなく、大電流が流れた瞬間の電圧変動により、接続された電気機器に悪影響を及ぼす可能性がある。
キッチンのコンセントも同様、炊飯器や電子レンジなど、大電流が流れる電気系統を、増設する系統として選定するのは避けなければならない。原則として、電気の供給源である分電盤にブレーカーを増設するよう計画するが、予備回路がない場合、大きな電流を使用しているコンセント回路を避け、負荷の小さな汎用コンセントの系統から分岐すると良い。
コンセント回路を分岐して増設する場合、分岐するコンセントの系統を停電させた上で、天井裏などを通っているVVFケーブルを切断し、白線・黒線に対して並列になるよう、新規の配線を接続する。
既存回路からのコンセント増設は比較的簡単な作業であるが。ブレーカーを落とさずに作業をすると、短絡による爆発、工具が熱で溶けといった事故につながるので、活線での作業は絶対に行ってはならない。
作業者が感電するおそれがあるので、必ずブレーカーを落として作業を行うべきである。簡単な作業とは言っても、電線を接続する作業は電気工事士であり、無理な工事を行うことはないであろう。DIYで増設するような場合、電気工事士資格が必須であり、必ず取得し、電気理論を理解した上での作業を行うべきである。
コンセントに接続する負荷は、そのコンセントを保護するブレーカーサイズの70%程度で抑えて計画する。負荷容量ぎりぎりまで使い切る計画とすると、機器の変更に追従できず危険である。
タコ足配線をされてしまうと、発熱や発火のおそれがあるため、計画段階から電気容量には余裕を持たせることが大切である。
空調やファンなど、モーターを接続する系統では、スイッチを音にした瞬間に流れる大きな電流(始動電流)により、遮断器が動作してしまう可能性があるため、最大に流れる電流の50%程度を上限として、負荷を積算していく。
電源系統の計画として、コンセント回路は照明回路と同一にしないことが原則である。コンセントは電圧変動する事が多く、照明がちらついたり、蛍光灯では消灯してしまうことも考えられる。倉庫や電気シャフトなど、照明器具とコンセントの台数が非常に少なく、大きな電流が流れる想定がない場合は、同一回路にしても支障がないこともある。
分電盤から張り巡らされているコンセントのケーブルに通信情報を乗せて、構内LANを構築する技術を「PLC(Power Line Ccommunication)」または「電力線通信」と呼ぶ。外部と接続されているルーターに対してPLC親機を接続してコンセントに差し込めば、子機を他の部屋にあるコンセントに差し込むだけで、インターネットに接続が可能である。
商用の電源周波数は50Hzまたは60Hzであるが、この電源に2~28MHzの高周波を重畳させて通信を行う。電源を得るためのコンセントでデータ通信ができるため、通信用のLANケーブルを別に使用することなく、配線の省力化を図ることができる。
PLCによる通信では、理論上210Mbpsの高速伝送が可能とされており、実用ベースでも30Mbps程度の通信速度を得られるので、動画の大容量データ転送も可能である。
LANケーブルを用いたイーサネット環境では、ギガビットイーサネットが普及しているため、PLCの導入によってさらなる高速化を望むものではないが、室内や廊下にLANケーブルを敷設するより、配線まわりをすっきりさせられる利点がある。
現在では、無線LANの安定化と高速化が進んでおり、無線LANであってもギガビット以上の通信環境を構築できる。数本のアンテナを組み合わせて、安定性と通信速度を高める技術も開発されており「無線LANは接続が切れやすい」というイメージは過去のものとなる。
PLC構築によるメリットが、あまり感じられない時代ともいえるが、階をまたぐ長距離伝送であれば、無線LANよりもPLCの方が高い安定性を見込めることもある。パナソニックが販売しているPLC機器では、配線長200m程度までを実用範囲としており、一般家庭用であれば、ケーブル長がネックになることはありえない。
調光機能付き照明器具や洗濯機のほか、携帯電話の充電器や、ゲーム機に付属しているACアダプターが同一コンセント経路に存在すると、通信が不安定である。
インバーターが内蔵された家電製品は、通信経路に高調波を発生させるため、通信の安定性を阻害する。ヘアードライヤーなど大きな電圧変動を起こす電気機器も、通信の安定性が悪くなる。
PLC親機や子機を接続するコンセントにも注意が必要である。サージアレスターなどが内蔵されているコンセントは、信号を減衰させる可能性があり、安定性が阻害される。やむを得ずノイズを発生させる電気機器が接続される環境であれば、PLC用のノイズフィルターを設けることも検討する。
住宅内の受電方法が単相3線式の場合、分電盤には「赤」「白」「黒」の3本の電線が導入されている。PLCは親機が接続されている電線を通信経路とするので「赤-白」または「黒-白」のどちらかに接続されたPLC親機がある側であれば、高い安定性が見込める。
相を確認するには、個別の分岐ブレーカーを落としてみて、同時に停電する部屋同士であれば確実である。分電盤内部にある「赤」と「黒」のバーに対して、どちらの電線に接続されているか調査し、より通信速度が高い側にPLC親機を設けると良いが、分電盤の外蓋を空ける場合、感電のおそれがあるので十分な注意が必要である。電気工事専門店に依頼するのも良い。
コンセントから発生する代表的な火災事故として、トラッキング現象による事故が挙げられる。トラッキング現象とは、清掃や抜き差しの頻度が少ない、冷蔵庫背面など汚れが蓄積する場所で頻発している火災原因のひとつである。
コンセントにプラグを差し込んだ状態において、プラグ間や隙間にほこりが溜まり、長時間汚れた状態が継続することで発生する。ほこりに湿気を含まれて固化し、プラグの電極間が短絡状態となり電流が流れて発火する現象である。接続されている機器の電源オンオフの状態に関係なく、プラグが差し込まれていた状態であれば発生のおそれがある。
住宅で事故例が多く、冷蔵庫用コンセントや、電子レンジ用コンセントなどでの事故例が多い。キッチンは特に湿気が多いため、コンセントに溜まったほこりが湿気で固化し、さらに料理などで発生した油脂分がほこりに付着することで汚染が広がり、炭化した導電路が構成されやすくなる。また、油脂やほこりは可燃性も高い。
トラッキング現象による通電を検知して、自動でブレーカーをオフにする配線器具も販売されているが、安価な製品ではないためコストアップにつながる。年に一度の大掃除でコンセントを清掃するだけでも、火災の発生率を大幅に低減できる。定期的な清掃を行うのを心がけると良い。
トラッキング現象を防止するには、定期的にコンセントの接続部分を点検し、プラグに積もったほこりやゴミを清掃することが推奨されるが、プラグ側でトラッキング現象が発生しにくいように対応する方法もある。
プラグ根本に樹脂製カバー(タイトラキャップ)を取り付け、ほこりや汚れが導電しにくくなるようにするのが、非常に安価かつ簡易な方法として推奨されている。
トラッキング火災を防止するため、通常のコンセントプラグに樹脂カバーを設けて、トラッキング火災防止仕様とすることが可能である。
プラグとコンセント本体にカバーを押し付けることで、ほこりや汚れが侵入しないように閉塞し、トラッキングの発生を防止するという方法である。汚れの侵入を防ぐために、抜け止めコンセントを用いるという方法も考えられる。
トラッキング現象が発生する以前に、堆積したほこりや水分と、微弱電流の組み合わせによって発生する特殊なガスを検出し、電路を自動的に遮断するコンセントが開発されている。河村電器産業ではプレトラックコンセントとして製品化しており、トラッキング火災を効果的に防止する、保護用コンセントとして展開している。
テーブルタップは、コンセントの個数を手軽に増やせる配線器具のひとつで、電源タップやOAタップと呼ばれることもある。パソコンへの電源供給では、パソコン、モニター、スピーカー、プリンターなど、電気容量が小さくても、数多くのコンセント接続口を必要とする。テーブルタップや、パソコンへの電源供給に特化したOAタップが使われる。
テーブルタップは手軽にコンセントを増やせるが、供給できる電気容量が増えるわけではない。過剰に電気機器を接続すれば、本来供給できる電気容量を超過してしまい、異常発熱により火災につながる。
テーブルタップに対してさらに増設のタップを追加し、沢山の電気機器を接続する行為が、火災の大きな原因として指摘されている。テーブルタップからたこの足のようにコードが出ている様をたこ足配線と呼ぶが、コンセントの危険な使用方法のひとつである。
壁面のコンセントまたはテーブルタップからは、最大15Aまでの電流が使用できる。たこ足配線の危険性は、15Aという上限があるコンセントに対し、小さな電気機器を多数接続することで、ブレーカーが落ちない程度の電流となる16~20Aが流れてしまい、異常加熱して発煙・発火してしまうことにある。
大電流が流れる電気ヒーターやドライヤーの電気機器は、多数接続されていれば20Aを大きく超過するため、ブレーカーが働いて電路を保護する。1~2Aの小さな電流の電気機器では、多数接続してもブレーカーが動作する電流に至らず、定格電流以上の電流がコンセントに流れる危険性がある。
単純にコンセントに接続する電気機器の数を問題にするのではなく、個々の電気機がどれだけ電流を必要とするか計算し、定格電流を超過しない使い方をしなければならない。
パソコンなど、多数のプラグが必要になる電気機器では、たこ足配線のような状況になりがちであるが、各々の機器は電流値が小さいため、渦電流による異常発熱が発生するおそれは比較的小さいともいえる。
危険な使い方として、足元ヒーターなど500~600Wという大きな電力を使用する電気機器を、テーブルタップに接続するという事例がある。どライアーオイルヒーターをタップから使うのは、さらに危険である。
たこ足配線は、過負荷による発熱以外にも、多くのリスクがあることに注意が必要である。コードの延長距離が長くなるため、机や家具の足でコードが圧迫されて断線する可能性が高くなったり、歩行中に足を掛けて引っ張ってしまう、中途半端な差し込みになるといった要因となり、電気抵抗の増加、接触不良、電圧降下など、多くのリスクにつながる。
テーブルタップを使用して多数の電気機器を接続する場合、抜け止めタイプ、未使用タップのホコリガード付きといった特殊な製品を選定したり、定期的に差込口付近を清掃し、異常発熱が発生しないよう注意が必要である。
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