幹線の選定と許容電流・電圧降下

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幹線設備とは

幹線設備は、変電所や電気室に設置された配電盤から、EPSの分電盤や動力制御盤に至るまでの電路である。幹線は、大きな電力を供給することが多く、ケーブルサイズが大きくなり、場合によってはバスダクトの大容量幹線を使用することもある。

幹線は電気設備の中でもコストの影響が大きく、設計仕様によって大きなコスト変動をもたらす部分のため、どのような敷設方法にするかの検証は電気設計の重要な要素となる。

幹線選定は、供給する負荷に対して「電圧降下」と「許容電流」で選定する。配線用遮断器のサイズとケーブルサイズの整合だけでは、電源品質の低下を引き起こすことが有る。長距離を敷設する場合、電流値によって大きな電圧降下を引き起こすため、許容電流だけでケーブルサイズを決定できない。

幹線の定義

幹線とは「引込点から受変電設備」まで「受変電設備から分電盤まで」に敷設されるケーブルを示す。電力の基準になる重要な部分であり、コスト的にも電気設備工事の大部分を占める工事項目である。

小規模な分電盤が多数設置されるような計画の場合、変電所から分電盤までを個別の幹線で敷設するのは、経済的ではない場合がある。太い幹線を1本敷設し、太い幹線から細い幹線を分岐して取り出すことで、幹線の本数を削減し、経済性を向上できる。

しかし、太い幹線から細い幹線を取り出す場合、どんなサイズでも自由に分岐できるわけではない。分岐を確保する場合、分岐された細い幹線への保護を計画する。

太い幹線には太い幹線に対応した大容量遮断器が設置されているため、細い幹線が分岐された場合、細い幹線で事故が発生しても遮断器が大きすぎて保護ができない。細い幹線を分岐したところで、細い幹線に適合した遮断器を設置し、部分的に保護するのが計画上重要である。電気設備技術基準でも定められており、厳守しなければならない項目である。

幹線の敷設方式

幹線の敷設方式は「枝状方式」「ブロック枝状方式」「単独方式」「ループ方式」という、大きく分けて4種類がある。

枝状方式は、樹木の枝のように、幹線を分岐・送りとして盤を接続していく方式である。コストは非常に安価であるが、幹線の事故や盤の改修、キュービクルのメンテナンスなどで部分的な停電をしたい場合でも、幹線1本に多数の盤が接続されていることから、停電範囲が広くなる欠点がある。

ブロック枝状方式は、枝状方式をより細分化し、ブロック化した方式である。停電の発生する範囲を小さくできる。

単独方式は、各々の盤に単独幹線を供給する方式である。もっともコストが高い方式であるが、盤個別に停電させられるため、事故やメンテナンス時にも、停電範囲をきわめて小さくできる利点がある。

ループ方式は、幹線をループ状に構成して盤を接続する方式で、供給幹線が2本あるのと同様に、信頼性を高められる。ループ内に開閉器を設けることで、供給の方向を限定し、停電範囲を小さくできるの利点がある。幹線が2本供給されているのと同等なため、コストは枝状方式の倍以上となる。

幹線に使用されている材料

幹線では、ケーブルとバスダクトのどちらかが使用され、ほとんどの場合、ケーブルが使用されている。

ケーブル方式

ケーブルでは、1本の幹線で500A~600A程度までを供給でき、ダブルで配線すれば1,000A程度までを供給できる。ケーブルはCVケーブルや、CVD・CVTケーブルなどが多用されている。

ケーブルの場合、電圧降下が比較的大きいため、電圧降下計算をし幹線サイズを選定することが重要である。150m以上の幹線を敷設する場合を境界に、許容電流よりも電圧降下の方がサイズ選定に影響してくるため、長距離電源供給の場合は注意が必要である。

バスダクト方式

バスダクトは、ケーブルの数倍から十数倍程度の電流を流せる。大容量負荷への電源供給に対応し、電圧降下が極めて小さいため、長距離送電にも問題なく対応できる。分岐を簡単に確保できるため、負荷の変動にも容易に追従できる。

工場などで、時期によって製造する品が変わるなどして、必要な電源容量が頻繁に変わる場合などが想定される場合、ケーブルでの電源供給では容量変更することは困難であるが、バスダクトの場合は容易に容量変更を行えるため、電源容量の汎用性を高めることが可能である。

幹線の選定方法

幹線を選定する場合「電源容量」「許容電流」「電圧降下」「幹線分岐の規制」の4つを理解し、計算する。

電源容量の算出

電源容量は、幹線の供給先で使用する負荷の合計容量である。容量算出には、単純な容量合算だけではなく、需要率という要素が関係している。

照明などへ電源供給する幹線の場合、全ての負荷が100%点灯されるなら需要率は100%である。しかし、事務所であれば「事務室」「廊下」「トイレ」「階段」「倉庫」「ゴミ置場」「機械室」「エントランス」の室が全点灯することはないと考えられる。

動力負荷の場合も同様で「エレベータ」「換気ファン」「空調機」「ポンプ」などが全て同時に全負荷になることはまず考えられない。

1つの幹線が供給している負荷が、どれだけ同時に使用されるかを想定し、需要率を決定する。適正な需要率の選定をしなければ、幹線サイズが大きくなりすぎたり、逆に小さくなりすぎたりし、コストに大きな影響を与える。

10kVAの負荷に電源供給している盤を3面接続する幹線の場合、10kVA × 3面 = 30kVA となるが、需要率を80%とすれば、30kVA × 0.8 = 24kVA を負荷容量とできる。

1φ3W 210V/105V であれば 24kVA / 0.21kV = 114A の電流が流れる。3φ3W 210V であれば、24kVA / (0.21kV × 1.73)= 66A の電流が流れる。この数値を元に、幹線種類やサイズを選定する。

許容電流の計算

許容電流は、ケーブルや電線に流せる電流の限界値であり、これを超えた場合、異常発熱を発生させ、被覆が焼けたり、発火する原因となる。

ケーブルの許容電流は、先に求めた「電源容量」から算出された許容電流以上の電流値とする。114Aの電流が流れるなら、それ以上の許容電流値をもつ幹線を選定する。単純に直近上位を選定できない。

許容電流によって幹線を選定する場合「低減率」という要素を考慮しなければならない。低減率とは、電線が密集して敷設される場合、放熱性能が悪くなるため、許容電流の上限が小さくなることを示した係数である。1本の電線を単独で敷設するのと、100本の電線を束ねて敷設するのとでは、放熱が悪くなるのは当然違うため、実況に合わせた低減率を使用する。

ケーブルラックに整然と幹線を並べた場合でも、幹線同士が接触していれば1段積でも70%まで許容電流を低減させる必要がある。2段積にした場合は、30%まで低減する。210Aを流せる CVT-100sq でも、ケーブルラック2段積で敷設してしまえば、たったの63Aしか流せない計算である。許容電流によるケーブル選定をする場合は、低減率を考慮することが重要である。

ここで、電動機負荷の場合は、負荷を運転させた際に発生する「始動電流」があるため、定格電流の5倍~7倍以上という大電流が、数秒流れる。定格電流50Aの負荷でも、始動時300A前後の電流が流れる。

これに対応するため、ブレーカーサイズを200Aに大きくし、始動電流でブレーカートリップしないように配慮するが、幹線サイズを200Aに対応させる必要はない。数秒の大電流なので、幹線に悪影響を及ぼさないと判断できるためである。(保護はサーマルリレーなどを使用することが原則である。)これらの条件を考慮し、許容電流を満足したケーブルの選定を行う。

電圧降下の計算

許容電流を満足したケーブルを選定しても、これで正しいとは限らない。次に、電圧降下を計算する。電線は非常に電気抵抗が小さいため、短い距離では影響はないが、100m・200mと長距離の敷設を行った場合、電線そのものの抵抗が負荷になり、熱を発生させるとともに、電圧が降下していく。電圧降下が大きくなりすぎると、電気機器への悪影響を及ぼす。許容される電圧の降下率が決められている。

前述した114Aの負荷に対して、CVT-38sqの幹線を30m敷設する場合、1φ3Wであれば電圧降下は 35.6 × 30 × 114 / (1000 × 38) = 3.2V である。しかし、同じ幹線を300m敷設することになれば、35.6 × 300 × 114 / (1000 × 38) = 32V の電圧降下が発生する。これでは電気機器の電圧降下が大きすぎ、まったく使用できない。

幹線サイズをアップし、CVT-250sqで敷設すれば、35.6 × 300 × 114 / (1000 × 250) = 4.8V の電圧降下とできる。

電圧降下を考える場合、幹線の敷設長さによって緩和措置がある。変電設備がある60m以下の幹線であれば、電圧降下は3%以下とする。しかし、電線長さが長くなった場合、3%を厳守することは経済性に難があるため、60mを超え120m以下の場合は5%以下、120mを超え200m以下の場合は6%以下というように、距離に応じて電圧降下の許容率が緩和されている。

負荷に対しては、許容電流と電圧降下の両面から計算し、幹線の仕様を決めていく必要がある。電圧降下は定常時の負荷状況を基本に考えるため、電動機などが動作する際に発生する電圧変動やフリッカとは、別に考える。

幹線分岐の規制

幹線は、所定のルールに基いて分岐できる。幹線分岐の規制は、幹線を分岐して盤類に供給する際、細すぎる分岐をさせないために決められている。

配電盤のブレーカーが400ATであり、幹線でCVT-250sqが使用されていた場合を考える。CVT-250sqからCVT-14sqを分岐するなど、細すぎる幹線を分岐させてしまうと、CVT-14sq側の幹線で200Aなどが流れても、保護遮断器が400ATのため、200AがCVT-14sqに流れ続け、遮断器がトリップせずに焼けてしまう。

太い幹線から細い幹線を分岐する場合、所定の数値以上の許容電流を持った電線でなければ、分岐できないと定めている。幹線を分岐する場合、ケーブルを切断してボルコン等で直接接続する方式や、分岐点にブレーカーを設ける方式などがある。

分岐した細いケーブルが短絡事故を起こした場合、細い幹線を保護する遮断器は、分岐元の大きな容量の遮断器である。分岐元の遮断器容量が大き過ぎると、細い幹線に長時間大電流が流れても引外しができず、細い幹線に長時間大電流が流れて発火する。

事故を防止するため、分岐元の遮断器の定格電流と許容電流の限界値を定めて、細い幹線を大きな遮断器でも保護できるように調整している。

3mや8mという数値は、短絡による過熱実験を行って実証した数値を使用しているため、この数値を守らなければケーブルが発火する可能性がある。法令違反の施工にならないよう、計画から管理までを十分に行う。下記に、幹線分岐する場合の許容電流と長さの基準を記載する。

  • 分岐側許容電流が送出遮断器の55%以上なら、距離に制限なく分岐可能
  • 分岐側許容電流が送出遮断器の35%以上なら、分岐点8m以内に遮断器設置
  • 分岐側許容電流が送出遮断器の35%未満なら、分岐点3m以内に遮断器設置

幹線分岐の計算例

キュービクルに設ける送出遮断器が400AT、ケーブルサイズが250sqの場合を考えてみる。

送出遮断器が400ATなので、35%は140A、55%は220Aである。よって220A以上を確保できるCVT100sqなどであれば遮断器を設けずに幹線分岐できる。60sqで分岐する場合、許容電流210Aなので分岐点から8m以内に遮断器を設置する。22sq以下の細いケーブルで分岐したい場合は、3m以内に遮断器が必要である。

幹線分岐の遮断器省略について

幹線分岐の保護遮断器と、分岐回路の遮断器は用途が別である。太い幹線から細い幹線を分岐して遮断器を省略した場合でも、そのまま細い幹線を負荷に接続できない。負荷に電線を接続する場合、分電盤や手元開閉器の保護遮断器を設ける。幹線は、個別の負荷に接続する部分ではない。

送出主幹75ATに22sqのCVTケーブルを幹線として敷設する場合で、22sqの幹線から3.5sqのCVケーブルで幹線分岐しても、そのまま3.5sqの幹線をコンセントへ接続する計画は不可である。幹線の扱いである3.5sqのCVケーブルは、コンセントの直前で保護用の遮断器を経由し、接続しなければならない。この保護用の遮断器の一時側までが「幹線」になり、保護用遮断器二次側は幹線ではない。

分岐した幹線を直接負荷に接続すると、負荷で異常運転などが発生して事故電流が流れた場合、それを遮断するための遮断器がないため、3.5sqの電線に事故電流が長時間流れてしまうためである。40A~50Aの事故電流が流れても、太い幹線では問題なく電流が流れてしまい、保護遮断器も75ATで設定されているため動作しない。よって3.5sqの幹線で発熱や発火する。

電線の接続

電線を延長する部分、電線のサイズを小さくする部分など、電線は各所で接続する。電線の接続に関しては、下記の原則がある。

電気抵抗を増加させない

電線の接続部で電気抵抗が発生すると、電流が流れた際に発熱体となるため、被覆の溶融や発煙、発火につながる。電流による熱量は、P = I^2×R で算出されるため、抵抗値は発熱に比例する。

絶縁を低下させない

電線接続部の絶縁が低下することで、漏電による感電や発火のおそれがある。絶縁された接続管や接続器を使用し、接続部分と電線の絶縁性能は、同等以上に維持する。

機械的強度を低下させない

接続部が張力で引き抜けてしまっては、停電や火災事故につながる。リングスリーブや接続コネクタで強固に接続し、引張強度を20%以上減少させないように接続する。ジャンパ線など、電線に張力が発生しない部分については、引張強度の減少について規定はない。

接続時の注意事項

銅導体とアルミ導体を接続する場合など、異種金属を接続しなければならない部分では、接続部の電気的な腐食が生じないように考慮する費用がある。

コード相互やキャブタイヤケーブル相互の接続は、コードコネクタや接続箱などを使用して接続する。ローゼットやコンセント器具を介して接続することも認められている。

並列接続における注意点

大きな許容電流を確保するため、電線を並列接続することが認められている。単相3線式の電路ではCVTケーブルなどを1本使用して配線を行うが、ここにCVTケーブルを2本敷設し、二重接続することで倍の許容電流を確保するという方法である。

電線を二重接続する場合、銅導体の場合断面積50mm2以上、アルミ導体の場合断面積80mm2以上の電線を使用する。並列に使用する電線については、電線種別・導体種別・電線太さ・電線長さを全て同一にすべきである。

電線長さが違うと、インピーダンスの差が発生し、不平衡が発生する。許容電流も不平衡によって使いきれなくなるため、若干の余裕をみた配線設計が望まれる。

電線の各々にヒューズを単独挿入することは避ける。1本のヒューズが溶断すると、並列接続で許容電流を確保していた電路が、半分の許容電流しか維持できなくなり、大電流を流した際に電線の発熱・焼損事故が発生する。ヒューズを入れる場合は、共通ヒューズとし、電路が一括で遮断されるような構成とする。

幹線設備の耐震補強

幹線設備は、建築物の電力供給の根幹となるため、地震に耐え、安全に電力供給を計測する性能が求められる。地震に対して耐えるため、下記のような地震対策を考慮する。

  • ケーブルラック・配管吊ボルトは振れ止めを設置する
  • 躯体や建材と接触のおそれがある場合は緩衝剤を設ける
  • 電線管の屈曲部分に支持点を設ける
  • 盤類を壁掛けにせず、床置きとする
  • 端子接続・立上立下・変圧器接続部はフレキを使用する

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