絶縁抵抗の基準と絶縁破壊・絶縁監視装置

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絶縁抵抗と絶縁の定義

電気設備における絶縁とは、電気が流れる部分とその他の部分に、電流が流れない状態である。絶縁電線の場合、内部心線に流れる電流は、絶縁物を介しているため抵抗があり、この絶縁体に触れても、人体に電流が漏えいすることはない。絶縁物が非常に高い絶縁抵抗を持っており、電流が流れないためである。

絶縁状態を維持できていない電気機器や電線類に接触した場合、人体等を通じて大地に電流が流れてしまう。いわゆる感電状態である。事故を防止するためには、電気機器や電線類の絶縁抵抗が一定の値を維持するように管理する。

電流を流さないために一定の距離を確保することも、絶縁の一種である。空気の絶縁抵抗に電線とその他の部分が絶縁されることになり、同じく電流が流れることはない。超高圧で送電されている、鉄塔から伸びる電線であるが、これは絶縁されていない。非常に大きな離隔を確保することにより、絶縁状態を維持し安全を確保している。

しかし一定の条件では、絶縁されていても電源電圧が高くなったり、絶縁物の状態が変化することによって絶縁が破壊され、絶縁状態を失うことがある。以下、絶縁抵抗の考え方について解説する。

電路の絶縁

電路は大地から絶縁しなければならないという原則がある。電路が大地と接続されている状態では、漏洩電流による発熱で火災が発生したり、人体や家畜などが電路に接触し、感電事故を起こす危険性がある。

しかし、例外的に絶縁をしなくても良い場所や、絶縁できない場所がある。B種設置工事の接続点、溶接機の被溶接材、電気防食用材料の陽極など、常に大地と接続していなければその機能が成り立たないものなどが、これに該当する。これらは例外的な措置であり、原則として電路は大地と絶縁しなければならない。

電線に留まった鳥が感電しない理由

電線に鳥がとまっても感電しないという話は、電気の流れを理解するのに有名である。電気は電位差がなければ流れることがないため、高圧電線1本に鳥がとまったとしても、鳥は感電しない。

鳥が感電するには、鳥の両足に電位差を発生させればよく、右足で6,600V電線に触れ、左足に0Vの電線・地面・鉄塔に触れた場合、右足から左足に向けて電流が流れる。

鳥が電線にとまっている状態では、右足も左足も同じ電圧であり、電位差がないため電流が流れない。鳥が感電する事例としては、鳥が大きく羽ばたいた際に、アースされている鉄塔に接触したり、近接する電線に翼が当たった場合には、電位差が発生して感電する。

数十万ボルト流れている電線では、空気が絶縁破壊することで閃絡状態(フラッシオーバ状態)である。空気は本来絶縁体なのであるが、電圧の高まりによっては絶縁状態を保つことができず、絶縁の破壊を起こす。鉄塔の碍子近くで電線と鳥が接触すると「電線-空気-鳥-空気-鉄塔-大地」という1線地絡同様の閉回路が構成される場合がある。こうなると、鳥も地絡電流で感電する。

鉄塔の超高圧電線は未絶縁

送電鉄塔に見られる超高圧送電用の電線は、被覆はされているが絶縁は確保されていない。いわゆる裸線状態と同様である。超高圧の電線の絶縁を確保するには、膨大な絶縁被覆を施す必要があり、絶縁被覆を施すると重量過多、コストの増大が発生し、絶縁するに見合うメリットがない。よってヒトなどが電線に触れないように、非常に高い場所に敷設することで安全性を確保している。

絶縁破壊について

絶縁破壊とは、想定外の高電圧に絶縁状態が破られる事を呼ぶ。絶縁電線の被覆や、一定の距離によって確保された絶縁は、電圧を高めることで絶縁状態を維持できなくなり、絶縁破壊に至る。絶縁状態を維持できなくなった場合、絶縁されていなければならない部分に電圧が印加されてしまい、機器類の故障を引き起こしたり、接触した人畜への感電事故のおそれがある。

導体同士に一定の離隔を確保することは、空気を絶縁体としていることと同義である。空気を絶縁体としている状態でも、高電圧を印加すると、アークの発生による空中放電が発生する。高電圧にすることで空気が絶縁破壊され、空気が絶縁体ではなく導体となり、電流が流れてしまう現象である。空気の絶縁破壊が発生した瞬間、アークを視認できる。

身近な自然現象として発生する絶縁破壊に落雷がある。空気という絶縁体に数十万ボルトの高電圧が発生することで絶縁破壊となり、大きな放電が発生する。絶縁破壊の瞬間、大きな熱と光と音を発生させる。

超高圧の電圧で送電している送電線では、裸電線が敷設されているため、電線相互が接近すると空気の絶縁破壊を引き起こす。これを防止するため、送電線では一定の距離を保つようにして、電線が敷設されている。

「送電線を登るな」という表示は、落下の危険性だけではなく、送電線に接触しなくても、空気の絶縁が人体を介して絶縁破壊され、感電事故が発生するおそれがあるため、これを予防するという意味もある。

身近な例では、静電気によってドアノブに放電する現象がある。数万ボルトで帯電している静電気は、大地や鉄部におよそ1cmから2cmまで接近すると、絶縁破壊し放電を発生させる。

絶縁破壊が発生する電圧の高さは、電路がある部分に含まれる気体の状態や種類、導体が含む水分によって違う。受変電設備の遮断器として普及している真空遮断器(VCB)では、アークが発生する部分を真空にすることで、一般的な空気よりも絶縁耐力を高め、アーク放電の規模を低減させて、遮断能力を高めている。

ガス遮断器に使用されているSF6ガスも、空気より高い絶縁能力があるガスを充填し、その中で発生するアークの規模を抑制している。どちらの遮断器も、空気より絶縁耐力が大きいことを利用した製品として、実用化・販売されている。

空気の絶縁抵抗と絶縁破壊

空気は絶縁体であり、電気を流すには極めて高い電圧が必要である。空気の絶縁性能は、1mmの離隔で3,000Vといわれるので、100Vや200V程度の電圧では、空気が絶縁破壊することは考えられない。

落雷などで数万ボルトに至る電圧が印加されれば、空気は簡単に絶縁破壊を起こす。気中の湿度の影響を考慮しない単純計算であるが、3,000Vで1mmという絶縁破壊の関係から換算した場合、60,000Vの電圧が印加されると、避雷物から20mm以上離れていなければ空中放電による被害を受ける。

落雷はその時々で電圧が変化し、数十万ボルトの電圧が発生することもある。雷が発生している場合、樹木等から4m以上離れることで側雷を防止できる。これは空気の絶縁抵抗を十分な距離を確保することによって高く維持し、雷撃を人体に通さないように絶縁している状態である。

絶縁抵抗の考え方

絶縁抵抗とは、電路と大地、電路同士の絶縁性能を、数値で表している。高い絶縁抵抗を保つことで、漏電電流値が小さくなり、人体などへの感電の危険性や、建物の漏電火災の危険性を低減できる。

絶縁抵抗の値は電気設備技術基準により、印加する電圧毎に値が規定されており、規定された数値以下まで絶縁抵抗が低下した場合、その電線や電気機器を使用してはならない。

絶縁抵抗の数値の規定としては、低圧の電路の場合、対地電圧150V以下で0.1MΩ以上、対地電圧300V以下で0.2MΩ以上、対地電圧300Vを超える場合で0.4MΩ以上と定められている。この数値は、相当の性能低下を起こした電線やケーブルなどで測定される数値であり、新規に設置した電線や電気機器で、この数値に近い値が測定された場合、何らかの異常が発生したと考えるべきである。

新規に設置した電灯分電盤においてケーブルの絶縁抵抗を測定する場合、法的な合格基準は0.1MΩであるが、この数値に近い測定結果が出た場合、それは異常といえる。新設した電路の絶縁抵抗値は100MΩ以上が正常値である。これ以下、20MΩや10MΩの絶縁抵抗値が計測された場合、ケーブルの性能低下や、接続機器の絶縁劣化などが疑われる。

古い建物など使用されているケーブルや電線は、絶縁抵抗が悪化している。ケーブルが経年劣化することで絶縁能力が低下し、漏電する電流が大きくなっていることである。絶縁抵抗値が小さくなったケーブルは、寿命に近いと判断し、ケーブルを使用禁止として交換する。

絶縁抵抗測定と絶縁抵抗計

絶縁抵抗測定は、当該電気回路の絶縁抵抗値が、所定の数値以上を維持しているかを確認するための測定である。絶縁抵抗計の片側端子を接地極に接続し、電気機器や電路に一定の電圧を印加して、大地に対して電流が流れないかを確認する試験である。絶縁抵抗値が低い場合、電線の劣化や損傷等により、漏電の危険性が高いことが分かる。

電路には、低圧・高圧・特別高圧があり、使用電圧に合わせて印加する電圧を変えて絶縁性能を測定する。電話回線や防爆機器は25~50V、制御機器は100~125V、既存の低圧配電線路は250V、新設の低圧配電線路や一般電気機器は500V、600Vを超える電路は1,000Vの測定電圧を印加して絶縁を測定するのが基本である。

絶縁抵抗測定時には、電池チェック、ゼロチェック、開放チェックを実施し、絶縁抵抗計に異常がない事を確認してから測定を行う。測定は、アース側のリード端子を、測定対象の接地端子に接続し、ライン側端子を測定対象に接触させて数値を読む。

絶縁測定を行う場合、絶縁抵抗計が内蔵している電池から発生させる電圧といえ、人体に接触すると感電事故となる。測定中は電路に近寄らないようにすべきである。

絶縁抵抗測定の注意点

対地静電容量が大きな機器やケーブルを測定する場合、指針の安定に時間を要するので、指針の変動が落ち着くまで待ち、指示値を読む。電子機器が電路にある場合、絶縁抵抗測定をしてはならない。電子機器は異常電圧に弱く、高電圧を印加すると半導体素子等が破壊されてしまうおそれがある。

新設の電気機器や電線では、低圧500V印加で100メグオーム以上がほとんどである。内線規程では1メグオーム以上が望ましいとされているが、1メグオーム付近では絶縁状態が良好とはいえない。

電気設備技術基準では、対地電圧150V以下で0.1メグオーム以上、300V以下で0.2メグオーム以上、低圧で300Vを超えるものは0.4メグオーム以上の絶縁抵抗値が必要とされている。

絶縁耐力試験と絶縁の検査方法

絶縁耐力試験は、電気回路が絶縁階級に相当する試験電圧に耐えるものかを確認する試験である。耐電圧試験機を測定対象に結線し、試験電圧を供給し、10分間電圧を印加してデータ測定を行う。試験電圧は最大使用電圧の1.5倍とし、最低500Vを印加する。最大使用電圧は下記のように、試験を行う電圧によって区分されている。

使用電圧の区分 係数
1,000V以下 1.15
1,000Vを超え500,000V未満 1.15/1.1
500,000V 1.05、1.1又は1.2
1,000,000V 1.1

絶縁抵抗低下原因の一例

電線や電気機器の絶縁抵抗値の低下の原因として、下記に一例を記載する。

  • 電線に規定以上の過電圧や、許容電流以上の大電流を流した場合
  • 電線への衝撃や振動、引張によるキズの発生
  • 周囲温度上昇や、長期間電流を流すことによる電線の過熱
  • 直射日光や蛍光灯・HID灯による紫外線の影響
  • 薬品や油、ガス、カビによる化学的影響
  • ネズミ・アリによる物理的被害

その他、電線やケーブルの接続ミスによる接触不良や、施工中に電線にキズを付けるの人為的ミスにより、絶縁抵抗が悪くなることも十分考えられる。絶縁抵抗が悪くなった電線・ケーブルは、所定の寿命を維持できない。漏電事故の原因となるため、電線の交換を行う措置が必要となる。

電線や電気機器の劣化は、目視では解らないことが多く、各種の試験を行わなければ判定できない。低圧電路であれば絶縁抵抗測定試験を一般的に実施しているが、高圧電路の重要電路では、部分的採取による破壊試験や、絶縁抵抗測定以外の非破壊試験の実施も行われている。所定の絶縁抵抗を維持することは、電気設備の維持保安の基本原則となる。

絶縁監視装置

絶縁監視装置とは、電路を地絡から保護するための装置の一種で、電路が正常な絶縁状態を維持しているかを常時監視することを目的とした保護装置である。停電を伴う絶縁測定(メガーチェック)を省略できるので、サーバーや情報通信機器類など、24時間稼働させなければならず、定期的な絶縁測定が困難な場合などで効果を発揮する。

絶縁監視装置は高圧用と低圧用があり、電源供給を停止できない重要な電線路において、絶縁監視装置を設けることで無停電による絶縁劣化の測定が可能となり、保守管理の効率を高められる。

絶縁監視装置のない系統では、絶縁の悪化を測定するための停電はもちろんのこと、測定する回路が多い場合、測定に必要な時間や費用が大きくなる。年次点検時の調査しかできないため、漏電の兆候を検出する機会が年1回の点検日のみとなり、事故の予防が困難である。大きな漏電が発生すると、漏電遮断器の動作につながるので、広範囲停電を伴うなど施設の運用に支障をきたす。

点検できないためと電路の漏電を放置すれば、感電事故や漏電火災事故につながり大変危険である。悪影響を未然に予防するため、24時間常時絶縁状態を監視することで、漏電による被害を最小限に食い止める。

絶縁劣化の検出方法

絶縁の劣化を検出するためには、I0(Io)方式、Igr方式といった種類がある。I0方式はIo方式と記載することもあるが、呼び方は「ゼロ」である。以降はIo方式で同一する。Io方式は、従来から絶縁監視装置で採用されている技術であるが、漏洩電流の誤検知、漏電箇所の特定が困難、漏電確定までの速度が遅いといった不具合があった。

現在ではIor方式やIgr方式と呼ばれる漏電監視方式が主流で、火災の発生原因とならない「コンデンサ成分」を除外し、抵抗成分のみを監視できる高性能な絶縁監視装置が採用される。

注意点として、統合接地方式を採用した場合、B種接地工事の接地抵抗が著しく小さくなるため、地絡電流が短絡電流と同様まで大きくなり、地絡電流によって絶縁監視装置を破損するので注意が必要である。B種接地の抵抗値が低い場合は、ホーロー抵抗などを介し、接地抵抗値を高く維持することを検討する。

Io方式

漏電遮断器と同様、ZCT(零相変流器)を用いて漏洩電流を測定し、一定値以上の漏洩があった場合に動作する仕組みを利用する方式である。監視回路の商用周波数における漏洩電流を測定する。

漏れ電流の大きさをそのまま測定しており、電路こう長が長かったり、インバーター機器の増加によって電路の静電容量が大きくなると、充電電流であっても「漏洩」と判断して、動作するおそれがある。

ノイズなどコンデンサ成分を含む電流を全て測定してしまうため、インバーター機器を増設したり、変更することであっても値が変化する。小規模施設で設備増設が電気管理者によって規制されているような環境であれば、常時発生しているコンデンサ成分の把握ができるため、Io方式であっても絶縁監視が可能である。

貸テナントなど「把握できない設備増設や変更」がある建物用途の場合、接続される電気機器の管理が困難なため、Io方式では十分な管理ができない。

同様に、変圧器バンクが多数あるような大規模施設や、接続される電気機器の数が多く、発生ノイズが大きな建物用途もIo方式では監視が困難である。常時発生するコンデンサ成分の把握が困難なほどの大規模施設であれば、精度の高い絶縁監視が行える「Ior方式」や「Igr方式」による絶縁監視が望まれる。

Ior方式

ZCTで電流値を測定して、流れる電流値を絶縁監視装置に送信するのは同様であるが、漏洩時発生するIocを除外し、火災や漏電につながる抵抗成分のみを検出できる測定方式である。

電路にノイズが多い場合でも、絶縁抵抗によって流れる電流の計測が可能である。Igr方式よりも絶縁監視が安価に構築できる。

Igr方式では、電路に重畳電圧を印加するための電圧注入装置が必要となるが、Ior方式は電流値と対象電圧の演算で漏洩電流を算出するので、電圧注入装置は不要である。

Igr方式

電路に対し数ボルトの微弱な低周波監視電圧を注入し、静電容量による電流を取り除いた監視を行うことで、精度の高い絶縁抵抗電流の測定が可能である。Igr方式では中性線を含めた全電路の監視ができるため、より安全性が高い監視方式といえる。

絶縁管使用の信号電圧を印加し、この信号電圧による漏れ電流を測定するので、不要動作の可能性が低くなるという利点がある。接地相の絶縁劣化が測定できるのも利点のひとつである。

監視する電路に対して、絶縁状態を検出するための低周波電圧を重畳するので、常時漏れ電流によってB種接地線に対地電圧が誘起されていたり、対地静電容量が大きい場合、重畳信号が乱されてしまい絶縁監視ができないことがある。ノイズに弱い絶縁監視装置といえる。

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