電気設備の知識と技術 > 電気設備設計の基礎知識 > ワイヤリングダクト
ワイヤリングダクトは金属製の配線用ダクトの事である。ケーブルダクト・金属ダクトと呼ばれることもある。金属ダクトの内部には多数の電線を敷設できるため、主にキュービクルからの取出部に使用される。ステンレス製や溶融亜鉛メッキ製などを採用することで、屋外仕様としても高い耐候性を示す。
電気設備技術基準では「幅が5cmを超え、かつ厚さが1.2mm以上の鉄板又はこれと同等のもの」という定義がされており、このダクト内部に多数の幹線や配線を収容する。幅5cmというのは金属ダクト工事と金属線ぴ工事の境界となっており、幅5cmを超えるものを金属ダクト、5幅cm未満のものを金属線ぴとして区分している。金属線ぴには、メタルモールやレースウェイが該当する。
ワイヤリングダクトは原則として特注生産品となるため、設置コストが高くなる傾向にある。設計上でワイヤリングダクトを計画していても「ケーブルラック + 上下カバー付」など、同等の性能を満足できる安価な施工方法が考えられるため、コストダウンのためのVE項目となる可能性がある。
ワイヤリングダクトはケーブルラックや電線管と同様に、電気設備技術基準によって規制される。ダクト内に敷設する電線は絶縁電線であることや、金属ダクト内に収容した電線の断面積はダクトの内部断面積の20%以下にすること、金属ダクト内では電線に接続点を設けないことなどが規定されている。
収容する電線の本数は30本以下とすることで、電線の引替えや更新が容易になるため、金属ダクトを計画する場合、収容する電線の上限本数を定め、本数が多くなる場合は別系統のダクトに納めるといった工夫も必要となる。
他の電線管工事と同様、ケーブルを風雨や日光など外的要素から保護する目的で、金属ダクトを使用することもある。この場合は単なる保護材料としての利用となるため、電気設備技術基準では規制されず、ケーブル工事についての規定に満足すれば足る。キュービクルから取り出す幹線ケーブルを収容するために、ワイヤリングダクトを計画する場合なども同様で、ケーブルを整然とまとめ、保護する用途として利用されている。
ワイヤリングダクトの支持間隔は、水平支持で3m以下、垂直支持で6m以下毎に支持点を設ける。垂直方向に敷設する場合、階高に関係なく各階支持が必要である。幅600mm以下のダクトでは、呼び径9mm以上、幅600mmを超える場合は呼び径12mm以上の吊ボルトを使用して支持する。
金属ダクトのコーナー寸法は、ケーブル仕上がり外径の6倍以上を確保し、無理のない曲がり寸法とする。ダクト内部に単心の配線を収容する場合は、8倍以上の曲がり寸法を確保すべきである。
ワイヤリングダクトは、300Vを超える電圧で使用する電線を収容する場合にC種接地工事を施す。300V以下の電圧で使用する電線を収容する場合はD種接地工事を施す。低圧屋内配線と弱電配線を共通の金属ダクトに収める場合、屋内配線と弱電配線の間に位置する金属隔壁には、C種接地工事に施さなければならない。
沿岸部など、海岸に近い場所でワイヤリングダクトを施工する場合、塩害対策を施さなければ早期に腐食する原因となる。沿岸部建築物の軒下など、塩分の影響があり、かつ雨水で塩分が洗い流されない場所にワイヤリングダクトを敷設する場合、付着した塩分が長期間に渡って腐食を進行させてしまう。
ワイヤリングダクトは通常、鋼板を使用した仕様となる。国土交通省仕様ではリン酸塩処理鋼板やステンレスを使用するが、他にもガルバリウム鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、アルミ鋼板など、ベースとなる鋼板は多岐に渡っており、設置場所によって使い分けられる。
塩害地域内で金属ダクトを敷設する場合、亜鉛とアルミニウム・マグネシウムを組み合わせた高耐食性溶融亜鉛めっき鋼板を使用したり、ステンレス製のダクトを採用することが望まれる。一般鋼板にポリエステル系の表面塗装を行い、これを塩害対策とする場合もあるが、塗装は数年で劣化し塗りなおしが必要になるため、溶融亜鉛めっき鋼板を使用するなど、定期的な再塗装が必要ない計画が望まれる。
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