電気設備の知識と技術 > 照明設計・電球の知識 > 照度計算の方法と計算式
光束法は、部屋の全般照明による照度計算に使用される手法の一つで、照明器具が持つ固有の光束値を利用し、部屋の大きさ・天井高さ・壁面の反射率から「平均照度」を求める計算方法である。室の平均照度が簡易に求められるので、照明設計の基本とされる。
室全体の平均的な照度を求める方法なので、スポットライトなどを用いた「局所的な照度」を算出できない。
平均照度を求める基準の計算式として、下記の計算式がある。
ランプ光束はメーカーカタログの数値を参照する。ルーバーやシェード、パネルなどが設けられている照明器具では、光源が持つ光束が阻害されるため少ない。
照明率は、照明を設置する「幅と奥行きの比率」「天井高さ」によって数値が変動する。幅と奥行きが均一ではない細長い部屋では、照射効率が悪化する。天井が高すぎる場合も同様で、距離によって光が届かない。
保守率は、ランプへの汚れ具合を数値化している。設置環境が駐車場など汚れやすい環境であれば、計算結果が不利になるよう設定する。
照明率を計算するためには、室指数の概念を理解しなければならない。室指数は下記の計算式で算出することが可能で、部屋の幅と奥行の比率によって、照明器具の光束をどれだけ効率的に利用できるかを算出する。
「間口6m、奥行き10m、天井高さ2.4m」の空間について、室指数を算出する。
室指数は K = 6m × 10m / ( 6m + 10m ) × 2.4m = 1.56 となり、これで照明率を決定できるようになる。
室指数を算出後、照明器具を設置する対象室の反射率を把握する。反射率はその部屋の天井・壁・床がどれだけ光を反射するかを示すもので、白色は反射率が高く、黒色に近づくと低下する傾向にある。
白い部屋であれば照明の効率を高く設定し、黒い部屋では効率を低く設定することで計算式を補正する。
仕上げ材を指定しない場合の事務室では「天井70%・壁50%・床10%」で計算するのが原則とされている。仕上げ材や色彩が明確な場合は、反射率の数値を補正する。代表的な仕上げ材における壁・床の反射率は下記の通りである。
反射率を設定後、採用する照明器具毎に定められている照明率を決める。照明率はメーカーによりすべての照明器具において固有値が決められているため、室指数と反射率を元に、照明器具の仕様書に記載されている数値を採用する。
保守率とは、ランプの光束維持比やランプ本体の汚れに時間とともに光束が減少していくことを数値で示している。新品のランプを設置した際は、保守率1.0になり、この際に現れる照度を初期照度と呼ぶ。
保守率は、照明器具の設置環境に応じた照明の効率である。国交省の基準では、周辺環境が良いとされているのは「設計室」「分煙された事務室」など、照明器具が汚れる可能性が低い場所を定義している。対して周辺環境が悪いとされているのは「厨房」「屋内駐車場」など、照明器具が汚れやすい場所を定義している。
照明器具の保守率も、照明器具によって固有の数値が決められているが、概ね5~10%の照度を補正する。なおこの数値は器具清掃を1回/年で実施した数値を基準としているため、清掃がなされない環境であれば、照度がさらに低下する可能性がある。
水銀灯であれば保守率0.7程度を示し、初期照度と寿命付近の光束差が比較的狭くなっているが、マルチハロゲンランプでは保守率0.5程度であるため、初期照度は高いものの、寿命近辺では光束が半分近くまで減少する。初期照度と設計照度の差が大きすぎると、初期照度では明るすぎ、末期では暗すぎるとなるため、ランプ選定は慎重に行うのが望まれる。
近年はLED光源による照明器具が広く普及している。LED光源は照明率・保守率共に高く設定されており、初期と末期の光束差は20%程度で、10年ほどを掛けてゆっくりと光束が少なくなるという特性がある。
設計照度が決まっており、ランプ本数を知りたい場合は、E = F × N × U × M / A の式を変形し、
として本数を算出する。設計照度 E = 500lx、ランプ光束 F = 3,500lm、面積 A = 30㎡、照明率 U = 0.4、保守率 M = 0.7 として算出すると、
N = 500 × 30 / 3,500 × 0.4 × 0.7 = 15.3 [本] となる。30㎡の室で1灯用器具を16本設置するのは、台数が多すぎてコストが高くなり、デザイン的にも良くないため、2灯用器具や3灯用器具を使用して、15.3本以上の本数を確保することを考える。
1灯用器具を多く配置したほうが均斉度を高められる。均斉度とは、照明対象場所における「明るい部分と暗い部分の差」であり、数値が大きいほど照度にムラが少なく、数値が小さいほど照度にムラが生じていることを示す。
演出を考慮して明るい部分と暗い部分を意図的に創り出すこともあるが、事務所や住宅などは平均的な照明環境が求められるので、均斉度は0.3以上確保しなければ、室内に明るい部分と暗い部分が目立つため照明品質が低下する。
面積 A = 30㎡の矩形の部屋があり、ランプ本数 N = 10本、ランプ1本の光束が F = 3,500lm、照明率 U = 0.4、保守率 M = 0.7として計算する。すると、
E = 3,500 × 10 × 0.4 × 0.7 / 30 = 327[lx]
という数値が求められ、これは平均照度となる。この照度は保守率を0.7として算出されているため、点灯初期は照度がさらに高くなることが予想される。照明器具を初めて点灯した際の照度は初期照度といい、保守率1.0として算出する。
E = 3,500 × 10 × 0.4 × 1.0 / 30 = 467[lx]
初期照度は467lxとなり、設計照度の1.3倍程度となるのが一般的である。初期の照度は必要とする照度を大きく上回るため、電力の無駄ともいえる。この無駄を省くため「初期照度補正」と呼ばれる機能を用いて省エネルギーに配慮する。
初期照度補正機能は、照明器具の初期照度による電力エネルギーの無駄を低減させるため、一定期間の照明出力を20%程度抑える機能である。初期点灯時は光束の70%程度で点灯させ、ランプ寿命までの間に少しずつ出力を上げていき、一定の光束を維持し続けられる。無駄な明るさを省きつつ、初期から終末までの光束を大きく変化させることなく、全体として約15%の省エネルギーを図ることができる。
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