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間接照明の基礎知識

間接照明は店舗やレストラン、事務所のエントランスなどで、隠れた場所から壁面や天井面を明るく照らすことに明るさ感や開放感を高める照明手法である。光源が直接見えないため、不快なまぶしさが無く、空間全体を均一に明るくできる。

光の色温度に空間の雰囲気がまったく違ったものになり、電球色ランプを使用すれば空間全体が暖かい雰囲気になり、昼白色のランプでは、全体がさわやかな雰囲気である。

電球色はホテルやレストランなど、くつろぐ空間に多用され、白昼色は事務所エントランスなど、さわやかさ、緊張感が必要な場所で多用されている。主用途は演出用となるため、間接照明だけで照度を確保するのは難しく、ベース照度を確保する照明が必要となることが多く、照度計算を行い、必要な明るさを確保することが望まれる。

間接照明の欠点

間接照明の欠点は、光を壁面や天井面に反射させる手法であるため、効率が悪いことが挙げられる。床面照度を確保するために間接照明を使用する場合、直接照明と比較しても4倍近い器具台数が必要である。他にもランプ交換が難しいこと、ランプ台数が増えることによる消費電力の増加なども挙げられる。

天井間接照明の写真

間接照明のランプ種別

間接照明は、天井や壁の近くに配置されるため、発熱が小さい照明器具を選定するのが基本である。ランプ交換が困難な場所に配置されるのが常であり、寿命ができるだけ長いランプを採用する。間接照明用の器具には蛍光灯が良く選ばれている。

LEDによる間接照明を行う方法もある。フルカラー演出ができるため、時間によって色を変えるなど、演出方法に幅を持たせられる。さらに、長寿命なためランプ交換の手間がない。LEDも利点ともいえる「輝度の高さ」を活かせず、大きな照度を確保するのが難しいため台数が多くなり、大幅なコストアップのおそれがある。

熱を発する照明器具での間接照明は厳禁である。白熱電球による間接照明は、仕上げ材の変色や焦げを発生させ、放熱が阻害されるためランプの異常発熱や発火の原因となる。間接照明用として製作されている器具や、熱を発生しないLED照明を使用すべきである。

間接照明のメンテナンスとランプ交換

間接照明を計画する場合、ランプ交換について配慮して計画する。間接照明用の照明器具は、壁や天井の隙間に設置されることがほとんどであり、ランプを交換する場合、間接照明のある隙間に手を入れ、器具を出してランプ交換する。

最低でも100mm以上の空きがなければ、手が入らないためランプを交換できない。100mmというのは間接照明でもかなり小さな寸法であり、光の演出とメンテナンスの兼ね合いを考慮し、見映え良く、かつメンテナンスしやすい計画を考えなければならない。

間接照明のテクニック

間接照明は、ただ隠して照明を設置すれば良いのではなく、効果的に天井や壁を照射して非日常空間の演出をしたり、空間全体の目線レベルの明るさ感を高めるといった、高い照明技術を必要とする。

間接照明が天井や壁に映り込まない配慮や、建築形状に適した間接照明の選択が求められる。

ランプを見せない工夫

間接照明は天井や壁を照らすため、天井付近に隠して配置するのが基本である。この際、天井や壁の仕上げ材には、鏡面仕上げの材料を採用せず、マット仕上げなど、器具の映り込みがない材料を選定することが重要である。

天井仕上げが鏡面仕上げの場合、天井面に照明器具が反射し映り込んでしまい、下から見上げた時に、天井に器具が映って見えるため、極めて不格好である。

間接照明を行う場合に最も注意しなければならない項目は、ランプや灯具が見えてはいけない。もちろん、壁や天井に反射したランプが見えてはならない。照射対象の壁や天井は、つや消し仕上げにより、器具が映り込まないような材料を選ぶ必要がある。

さらに、下からの見上げ視線だけでなく、階段を上り下りしている人の目線に入らないように配置を考慮しなければならない。エスカレーターに乗っている人の目線、シースルーエレベータに乗っている人の目線など、色々なパターンをイメージし、どこからも見えないことを確認することが重要である。

間接照明にはコーブ照明、コーニス照明、バランス照明、ルーバー照明などがある。

コーブ照明

コーブ照明とは、天井に光を反射させる間接照明の手法で、天井面を明るくすることで、天井方向の広がり感を与え、閉塞感を緩和できる。ダウンライトと比べ、陰影が発生せず室内全体が柔らかい雰囲気である。「長押」の上部に器具を配置し、天井を照らせばコーブ照明である。

ロビーやホール、廊下では、高級感や非日常感を演出するため、折り上げ天井にコーブ照明を設け、シャンデリアやペンダント照明を中央に吊り込む手法が一般的に用いられている。シャンデリアやペンダントのきらめき感が緩和され、高級感が演出される。

コーブ照明を計画する場合、照明器具はできるだけ同一の器具を選定し、ランプ種別を変えないことが望まれる。照明器具の明るさや、光の放出方向が違う器具を使用すると、均一で綺麗な光を演出することが困難である。

かつ、間接照明は反射させる天井の仕上げに配慮が必要である。反射率の高い天井材を貼ってある場合、ランプが天井に反射して、器具が見えてしまうことになるため、反射しにくい仕上材を選定すべきである。

コーブから天井まで距離が極端に狭い場合、天井に強い光の線が出る。廊下であれば、廊下の直線と一体化するため違和感が少ないが、ロビーやホールでは違和感を覚えることがあり、天井までの距離を大きく確保するのが良い結果となる。器具を交換するためには最低でも70mm程度の寸法が必要で、演出を主にするならば200mm程度は確保できるよう調整すると良い。

廊下にコーブ照明を採用する場合、ダウンライトの天井照明を一切設けないという手法が用いられる。コーブ照明だけで照度を確保した場合、空間全体がめりはりのない、ぼんやりとした雰囲気になるので、注意が必要である。

コーブ照明は間接照明のひとつの手法であり、執務を行うための照度を確保できない。一定以上の照度が必要であれば、適度にダウンライトのベース照明を追加する。

コーニス照明

コーニス照明とは、壁に光を反射させる間接照明の手法で、壁を明るくすることで、空間の広がり感を演出する。ホテルなど高級感を演出したい場合、カーテンレールやブラインドに平行に照明器具を取り付けることで、カーテン表面が明るくなり、空間の広がり感や、カーテンそのものを美しく見せることが可能である。

コーニス照明はコーブ照明と同様に、意図的に見上げないかぎり、日常的な視線では照明器具が見えないように配慮し、光だけが壁面やカーテン、窓面を照らすように照明の射光角を設定する。

壁面を水平方向から照射すると、壁面の平滑化が十分でない壁の場合、その凹凸を目立たせてしまうことがある。プラスターボードに塗装仕上げをする壁面では、塗装前の下地処理が十分でないと、塗装面に段差が発生し、間接照明で壁が波打って見えることがである。

コーニス照明を行う壁面に、ブラケット照明やコンセントを設けないよう注意する。これら照明器具や配線器具をコーニス照明で照らすと、その下部に影が発生したり、コンセントが光によって目立ってしまう。壁面やカーテンなど、照射対象が美しく見えるように、他設備との取り合い調整を十分行うべきである。

バランス照明

直付の蛍光灯やLED照明器具を設置し、器具の下部または前面を幕板などで覆うことで、光を上下に照射させる間接照明方式である。

天井面を明るく照らせ、かつ下部壁面を明るく照らせ、コーブ照明とコーニス照明の中間のような位置づけとなる照明手法である。器具上部の壁面が熱によって汚れやすくなるため、壁面の清掃など十分な管理を行う。

ルーバー照明

ルーバーを天井に配置し、ルーバーの上部に蛍光灯やLED照明器具を配置する方式である。ルーバー直下から見上げれば照明器具が見えるが、斜め方向からの視線をカットしており、グレアを制限できる。

庁舎のロビーなどでよく用いられ、大きなメッシュ形状のルーバー上部に多数の蛍光灯を仕込み、光天井のように柔らかな光を照射する。大規模な建築物では、スプリンクラーによる警戒が必須となり、ルーバーを散水障害とみなされることがあるため、所轄行政との協議が必要である。ルーバー下部までスプリンクラーを立ち下げるよう要求されることもあり、意匠性の低下につながるため注意が必要である。

執務空間では、照明器具そのものにルーバーが内蔵した器具を採用する。建築化照明の「ルーバー照明」とは意味合いが違うが、ルーバー付きの照明器具は、ディスプレイ画面などへの照明器具写り込み防止として採用されることが多い照明方式である。

ルーバーにはほこり付着が懸念されるため、定期的に清掃しなければ意匠性の低下のほか、反射率が低下するので照度が低くなる。汚れの蓄積によって照明効率が低下し、エネルギーの無駄につながるので、ルーバー清掃の維持管理が重要である。

光天井照明

光天井照明は、照明器具本体が見えないように、天井面にアクリルやポリカーボネートの樹脂製乳白パネル等を張り、輝度を緩和し照明の均斉度を高める方式である。下から見上げても、照明器具が視えることはないが、パネルに照明器具が近い場合、ライン状に照明器具が見えてしまうことがある。

光天井内部の放熱を十分に検討しなければ、パネル面の焼け付きや、天井内の汚れを誘発するので、有効な熱抜きを考慮するのが良い。

照射対象の距離と配置

間接照明をどのように使い、どのような意匠的演出をするかを決めて、配置を考える。照明器具を天井や壁に接触するくらいに近づけると、光が広がらず線が入ったような強い光になる。壁や天井から光源を離せば、柔らかい光で照らせる。どちらも光の演出として使えるため、どちらが良いか悪いかという判断は付かないが、光の特性を理解し、最適な提案をする。

天井面にまんべんなく明るさを出したい場合、200mm程度の空きを確保できれば、光のラインはかなり薄くなる。これ以上近づけた場合、強い光のラインが入ったような演出となる。

照明器具には、メーカーが品質を保証できる設置方法があるので、ランプが仕上げ材に近すぎることによる熱の影響や、ランプ交換が容易にできるかなどを確認する。あまりに狭い場所、壁に近い場所に照明器具を設置すると、放熱がうまくいかず、ランプがすぐに切れてしまったり、安定器や電球から発火したり、不具合が発生する原因となる。

蛍光灯やLEDによる間接照明と目隠し対応

間接照明を安価に行いたい場合、笠なしのトラフ形蛍光灯を並べるだけでも実現できる。笠なし蛍光灯は、安定器とランプが重なる位置にあり、高さが80mm程度になっているため、完全に隠すためには、立ち上がりの見附寸法を150mm程度確保する。

間接照明専用の蛍光灯器具を使用した場合、安定器とランプがずれた位置に配置されているため、高さを40mmから50mm程度に抑えられる。間接照明を隠すための立ち上がりは、120mm程度で済む。ランプ本体の価格は割高である。

近年は蛍光灯需要が減少しており、LEDライトバーを用いるのが一般的である。器具を設置するスペースが狭い場合は、テープライトなどを用いることを検討すると良い。

テープライトの写真

間接照明によって綺麗な光を出す方法

直管蛍光灯を間接照明として使用する場合、器具を突き付けて配置すると、ランプとランプの隙間によって影が現れる。この影を出さないためには、ランプを斜めに置き、直管蛍光灯のランプ同士が重なり合うように配置する。

重ねる長さは100mm程度確保できれば問題ない。間接照明の必要な長さは、蛍光灯の長さから200mm程度マイナスした長さが必要になるため、設置する照明器具台数は、間接照明設置場所の長さよりも、若干伸びる。

直線状の間接照明を50mに渡って敷設する場合を考えてみる。直管蛍光灯の長さは約1,250mmであるが、50mから1,250mmを割って台数を出すと、40台と算出される。しかし器具を突き合わせた長さでしかないため、ランプ接続部に影ができてしまう。重ね合わせて影を消すと、台数が不足する。ことがないように、間接照明を敷設する長さに対し、1,000mmで割って台数を求めれば、台数は50台になるため不足することは無くなる。

シームレスラインによる照明計画

ランプを突き合わせて間接照明用としたい場合、シームレスラインという蛍光灯器具を使う方法もある。シームレスランプは、灯具本体とランプ長さが同じなので、器具を突き付けても影が出ないようになる。シームレスラインは本体価格もランプ価格も高価で、ランプは4,000円前後の高価なランプであり、あまり多用すると、イニシャルコストだけでなく、ランニングコストにも大きく跳ね返る。採用時には十分なコスト検証をすべきである。

 
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