電気設備の知識と技術 > 照明設計・電球の知識 > PWM調光と位相制御調光の違い
電気設備分野における調光は、照明器具の明るさを変化させる。省エネルギーを図るため、明るさを抑えることでムード感を高めるためなど、節電とデザインの両方面から、調光を活用することが求められる。
調光は非常に歴史が古く、白熱電球、蛍光灯、HID照明、近年ではLED照明が普及しているが、全ての種類で調光機能が対応されており、調光対応の照明器具を選定することで、照明器具の明るさを変化させられる。
照明器具を調光するには、調光対応の器具を使用しなければならない。調光に対応していない照明器具を調光すると、ランプが焼損するおそれがあり非常に危険である。調光対応の照明器具は、コストが高くなるため、必要場所のみ調光対応の器具とし、一般器具と使い分けると良い。
照明器具の調光には、PWM調光と位相制御調光があり、それぞれに特徴があるため解説する。
PWM調光は、パルス変調を利用した調光制御を行うシステムである。PWMとは Pulse Width Modulation の略語を示す。LED照明の調光に適した方式で、LED照明の点灯と消灯の時間を調整することで明るさを制御する方式である。
点灯と消灯を繰り返すことが、人の目にはちらつきとして認識されてしまっては、照明品質の著しい低下を引き起こす。これを防止するため、点滅周波数を高くし点滅が人の目に認識できないことで解決している。
調光範囲は、1~100%という高い反応性を持たせ、電圧変動など電源品質の影響を受けにくいという利点がある。動画撮影などレコーダーによる映像の保存に対しても、ちらつきが視認されにくいというのも利点のひとつである。
PWM調光を行うためには専用の調光装置としてコントローラなど各種機器が必要となるため、機材が高価となりがちという欠点がある。システムのシンプルさを求める場合は、白熱電球などで採用されている位相制御方式を採用するのが良い。
位相制御調光は、白熱電球などフィラメントに電圧を印加し、発熱を光に変換するような一般電球に採用されている調光方式である。トライアックを使用し、交流電源の波長のうち一部分を切断することで明るさを調整する。波長を切断するタイミングを制御し、流れる電流値を調整することから、位相制御方式といわれる。
位相制御調光は調光を行うために必要な機器類が少なく、安価にシステム構築が可能なため、従来の白熱電球ではこの方式が主流である。ランプ電流を多く流すほど、波長を切断する時間が長いほど光は強くなり、切断時間が長いほど明るさは小さくなる。調光範囲を大きく設定すると、ちらつきを視認してしまうことや、電源電圧が変動すると明るさに影響してしまうことが欠点である。
現在ではLED照明が普及しているが、LED照明は白熱電球と照明の点灯方式が違い、位相制御方式を単純に採用できない。LED照明は、内蔵するドライバで交流を直流に変換しているため、交流電源の位相が反映されない。LEDで位相制御を行うため、位相情報をPWM信号に変換するといった措置が必要である。
白熱電球は、フィラメントを加熱しその熱によって発光している。フィラメントが一定時間以上発熱すると、フィラメントのタングステンが蒸発してしまい、最終的には細くなって切れてしまう。フィラメントが切れた瞬間を白熱電球の寿命と呼ぶ。
調光を行い、フィラメントに電流が流れる時間を短くすれば、タングステンの蒸発が抑制され、フィラメントが切れるまでの時間を長くできる。これが、調光による寿命延長の原理である。
通常、スイッチのオンオフは突入電流の影響によりフィラメントに負担を与えるため、寿命の変動を引き起こす。調光は、フィラメントに衝撃や突入電流を与えないため、フィラメントに対してやさしい電流の流れとなり、寿命を延長するために適した方式といえる。
位相制御方式による調光は、電源の波形を崩すものであり、白熱電球には対応できるが、蛍光灯など位相制御を原理としていない照明器具に接続すると、蛍光灯の安定器に異常な負担を与え、寿命の低下や発熱を引き起こす。
調光設定を100%とした状態であっても、位相は崩れており安定器への負担は同様である。適合しない調光システムを利用すると、発熱、焼損、寿命低下など多くの問題が発生するため注意を要する。
蛍光灯は、インバータに対して調光信号を伝送し、器具側で照明を高速点滅させることで明るさを調整する方式や、余熱回路を持つ調光専用安定器から調光する方式がある。
蛍光灯の連続調光は、白熱電球と違って蛍光管の寿命を短くする原因となり、20%を下回るような低光束への設定を続けると、著しい寿命低下につながる。蛍光灯は定格で運用するのが最も長寿命となる設計がなされており、調光制御は蛍光管への負担が大きくなる。
インバータ駆動による調光であれば、蛍光管への負担が少なく、定格使用と同等の寿命が確保できるとされる。
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