電気設備の知識と技術 > 照明設計・電球の知識 > 防犯灯の設置基準
防犯灯は、街路・公園など、屋外において防犯を目的として設置されている照明器具の総称である。夜間における歩行者の安全確保や、犯罪発生の防止を図るため、一定以上の明るさを保つことが重要である。人が歩くための最低限の照度を確保するよう設置するのはもちろんのこと、深夜は犯罪発生率が高くなる時間帯であり、暗がりを発生させないピッチでの設置が望まれる。
防犯灯を設置することで歩行者に安心感を与えられるが、部分的に明るすぎる部分が生じると、その他の部分が暗く感じてしまい不安感を増長する。過剰な明るさを深夜に渡り継続するのは、光害による周辺地域への悪影響や、生態系への悪影響も懸念されるため、周辺環境にあわせ、バランスの良い配置計画が望まれる。
防犯灯は道路照明よりも照度が低く、主に街路や路地など狭い場所で多用される照明器具であり、蛍光灯や水銀灯が一般的に採用されている。近年はLED照明の普及が進んでおり、消費電力が低減されたLED防犯灯を設置する動きが加速しており、ランプ交換頻度を長く、かつ消費電力が少ないというLED照明の採用が活発化している。
防犯灯の推奨基準では「4m先の歩行者の見え方」という基準で照度が規定されている。生活道路としての重要性・歩行者の量などを勘案し、明るさの基準を「クラスA」「クラスB」に分類している。クラスAの方が高い照度基準となる。
「4m先の歩行者の顔がわかる」という判断基準であり、平均水平面照度は5lx以上の数値が求められる。中心線鉛直面照度は最小で1lx以上が必要である。
「4m先の歩行者の顔の向きや挙動がわかる」という判断基準であり、平均水平面照度は3lx以上の数値が求められる。中心線鉛直面照度は最小で0.5lx以上が必要である。
指向性の高いLED照明でクラスBを確保する場合、別に「クラスB+」という基準が設定されている。クラスB+の場合、平均水平面照度は3lxと違いがないが、中心線鉛直面照度のほか、道路両端鉛直面照度が定められる。照度の最小は同様に0.5lxである。
防犯灯は、蛍光灯・水銀灯・LEDが光源として採用される。深夜、長時間点灯するという目的から、長寿命な照明器具を使用するのが最低条件であり、白熱電球やハロゲン電球など、寿命が短い器具を防犯灯として使用することはない。
従来、約12,000時間の寿命を持つ蛍光灯や水銀灯がほぼ全数を占めており、街路を白い光で照らしていたが、最近では寿命40,000時間以上、かつ水銀灯よりも消費電力を抑えられるLED照明を採用する事例が増えている。
LED照明を採用することで、ランプ交換の頻度が著しく低減する。蛍光灯ではあまり問題にならないが、高所から照射する照明器具はHID光源が広く用いられており、水銀灯やメタルハライドランプで問題となる「始動・再始動の遅さ」「電圧変動による立ち消え」などを解決でき、照明の品質向上を図る事が可能である。
警察庁が提示している「安全・安心まちづくり推進要綱」において、公共的なエリアの照度基準を定めている。主に人が通る道路・公園・駐輪場では「3lx以上」、公衆トイレ付近は「50lx以上」、駐車場車路「10lx以上」、車室(駐車エリア)「2lx以上」の数値が規定されている。
犯罪抑制には「監視性の確保」が有効であり、照明によって地域を明るく照らし「犯罪行為を行えば第三者に目撃されるかも知れない」と感じさせることにより、犯罪抑止を促す。
公園内は犯罪発生の可能性が高く、植栽などで物陰や死角が多数存在する。これに対し、公園全体を見渡せるようなムラのない照明計画が望まれる。
防犯灯の設置は負担を伴うことから、自治体により補助金制度が制定されている。自治会町内会等の代表者が、その地域の防犯のために照明器具を設置する場合、所定の金額が補助される。
補助金を受けるための設置基準は自治体ごとに定められており、その地区ごとの特色に合わせて基準が大きく違っている。電力会社やNTTの通信事業者が設置している電柱に共架することを前提とし、電柱がない場合に限り、鋼管ポールなどを使用して照明器具を設置できるが、その本数や設置間隔に制約がある。
設置間隔25m~50m、設置高さ4.5m~5m程度の設置基準が自治体ごとに定められている。明るすぎるようでは近隣への光害が問題となり、暗すぎては安全な道路を維持できないため、計画には注意が必要である。
駐車場照明、住宅軒先や門灯など個人用の照明、人感センサー等を用いた照明等は自治体が認める防犯灯に該当しないことがある。
近年では、水銀灯や蛍光灯の防犯灯をLEDに交換するという内容で補助金制度が制定されており、省エネルギーの推進、ランプ交換に伴う負担軽減を図る仕組みが進められている。電力会社もLED防犯灯が普及したことに伴い、その契約に対してきめ細かな料金設定を行い、防犯灯維持に伴う負担軽減への協力が行われている。
公共の場所に防犯灯を設置する場合、電力会社と「街路灯」に特化した契約を結べる。主に「定額電灯」契約または「公衆街路灯A」契約を結ぶ。この契約では、防犯灯1灯ごとに単価が定められており、その台数と容量で金額が変動する。
定額電灯や公衆街路灯は、従量電灯など別の電気受給契約を結んでいる場合、新たに締結できない。各々同一敷地に二以上の電気受給契約を行わないという原則があるので、私有地内に街路があったり、個人の駐車場に適用することは不可能である。公衆街路灯契約は、自治体など道路・街路の所有者が行うのが基本であり、個人が契約することはほぼない。
なお従来、定額電灯・公衆街路灯A共に20Wまでが最低容量とされていたが、2011年9月、LED照明の普及を目的に10Wまでという小容量契約が策定され、より省エネかつ電気料金を抑えた契約が可能になった。
照明ポールは、屋外照明として広く使用されている鉄製の柱で、駐車場や公園、道路に設置され、照明器具を高所から広く照射するために使用したり、壁面のライトアップ器具を設置するために使用される。壁面が存在しない場所では、防犯灯は照明ポールと灯具で組み合わせて利用する。
照明ポールは、高さ、径など多種多様に作られており、意匠性を高めるためにデザイン性の高い製品もある。設置する場所の特性に応じて、形状、色、高さ、塗装仕様を決定し、周辺環境に適合した計画をすることが望まれる。照明ポールは外気にさらされる過酷な環境に設置されることが多く、沿岸地域や高速道路脇では、より過酷な周辺環境と扱われる。
選定を間違えると、異常な腐食を引き起こすなど、期待される寿命を維持できない。腐食が進むことで倒壊のおそれが高くなり、台風など強風時に倒れ、事故につながるおそれも考えられる。
照明ポールの地上高さは、4.5m以上とすることで照明の均斉度が高まり、照度のムラを低減できる。照明ポールを高くするほどムラが小さくなるが、距離が遠くなるほど最大照度が小さくなるため、平均照度が小さくなり、全体的に暗くなる。
照明ポールが高すぎると、内蔵ランプが寿命によって切れた際の交換が困難になるため、ポールの地上高は4.5mを基準として計画すると良い。ハイウェイポールなど、高い照明ポールは8~10mという高さになるため、ランプ交換の手間が大きくなる。高圧ナトリウムランプなど、寿命が長いランプを優先的に採用するという方法も検討する。
外灯照明は器具本体が高価で、電源供給のためには埋設配管工事などを併せて行う必要があるので、設置コストが高くなる傾向にある。駐車場照明などを計画する場合は、通行上必要な部分や、防犯上で照度を確保しなければならない部分など、光を照射する場所と、必要照度を十分検討し、過剰照明にならないよう配慮が必要である。
駐車場照明では、車路や車室に一定の照度がなければ、停車場所がわからなかったり、歩行者を見落とす可能性があり危険である。公園の屋外照明では、最低でも平均照度3Lx以上の明るさを確保しなければ、防犯上の危険性がある。必要照度を確保し、安全な照明計画となるよう検討する。
外灯は、明るい時間には点灯させる必要がないため、昼間は消灯できるような計画を行う。外灯を点滅させる方法として、1年の日の出、日の入り時刻が記録されているソーラータイマーを利用する方法や、明るさを検知する自動点滅器を使用する方法がある。
ソーラータイマーは、日の出の時間と日の入りの時間がタイマー本体に記録されているため、精度の高い照明の点滅を期待できる。日の出日の入りの時間のみの制御であり、雲が厚いなど昼間の時間であっても暗い日には、自動点灯させられない。場合は、手動で点灯させることも考慮する。
自動点滅器は、明るさを検出して照明を自動でオンオフできるが、自動点滅器本体の汚れや、車のライトが自動点滅器に照射されるなど、外的要因によって誤動作が発生することも考えられ、年間タイマーよりも照明点滅の精度が悪くなる。
外灯は屋外照明になるため、漏電の可能性が通常の屋内電気機器よりも高く、漏電遮断器で保護しなければならない。
大出力なHID照明を使用することが多いため、始動電流を考慮すると、100Vの場合は定格電力600~700W程度を1回路、200Vであれば電流が半分になるため、1,200~1.400W程度を1回路として計画する。
水銀灯は外灯照明として非常に一般的であるが、光束に対する消費電力の割合が大きく、多くの台数を接続できない。セラメタやCDMランプなど効率の良いランプであれば、始動電流が小さくなるため、多数の照明器具を接続できる。
200W程度のランプであれば、5灯程度を1回路として計画する。大きな出力のあるHID照明を使用する場合は、始動時の電圧降下が大きくなることも考えられるので、低始動電流形の安定器を使用したり、系統に接続する台数を減らすの検討も重要である。
ポール内部には安定器を設置するためのフックが設けられており、水銀灯に代表されるHID灯の安定器を収容できる。ポール下部から電線管を差し込み、上部の照明器具まで配線する。メンテナンス時には、ポール前面の点検フタを取り外し、内部の機器を点検できるようになる。
鋼製の照明ポールは、設置環境によって腐食の危険にさらされる。海岸からの距離によって塩害が発生し、交通量の多い道路では排気ガスなどでの腐食のおそれがある。火山、温泉に近ければ、腐食性ガスによる影響も考えられる。
照明ポールの腐食を防止するためには、ステンレスなど強度が高く、性質的に安定している材料を用いるか、耐久性・耐候性のある塗装を施す方法が採用される。
照明ポールの腐食原因として、犬のマーキングもある。ポールの根元には、犬が尿をかける事が考えられ、根元の腐食が著しく促進されていく。腐食が進行すると、所定の耐風速を得られなくなり、強風時に倒壊する可能性があるので、鉄素地が腐食する前に、定期的な塗装の補修が重要である。
排気ガスが滞留するような交通量の多い幹線道路、地下駐車場、砂の打ち付ける沿岸地域では、照明ポールの腐食が著しく早くなる。高い塗膜強度が必要な場合は、表面をセラミックコーティングする特別仕様を選定すると良い。
照明ポールは、鉄素地のメッキ処理と表面塗装の二要素によって性能が変化する。設置場所によって塗装種別を選定し、コストと性能のバランス良く計画することが重要である。
鋼板は溶融亜鉛めっきするのが通常であるが、溶融亜鉛めっきは装飾目的のものではないため、美観目的の場所に設置する場合は注意を要する。素材表面は亜鉛メッキの液だれ模様が発生しており、美観性を向上させる目的で、溶融亜鉛メッキの上に塗装を施しても、メッキの上には塗装が乗りづらく、剥がれる。
さび止め塗装仕様では、照明ポール本体にさび止め塗装を施した状態で現地納入される。現場塗装の品質に美観や品質が大きく左右されるため、あまり推奨できる方法ではない。工場で一定品質を確保した塗装ポールを納入するのが良い。もっとも安価な方法なので、コスト優先の場合に採用されることがあるが、現地塗装の労務が追加されるため、大きなメリットが出ないことも考慮する。
鉄素地に溶融亜鉛めっきを施し、表面にポリエステル系樹脂の粉体塗装を施した照明ポールである。溶融亜鉛めっき層によって高い耐食性があり、長期間の使用にも十分耐える。
樹脂粉体塗装よりも、紫外線に対してより強い性能を持っており、光沢の保持性能が非常に良好である。フッ素樹脂は塗膜強度が弱いため、キズによって剥がれることがあるため注意が必要である。フッ素樹脂は塗装コストが高くなる傾向にある。
ステンレスの光沢を生かした、美観の高さが特徴である。ステンレスの持つ高い耐久性により、海岸地帯にも適用できる。ステンレスは錆びない材質と思われているところがあるが、ステンレスも強い塩分や腐食性ガスには弱く、サビが発生するので注意が必要である。
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