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航空障害灯とは

航空障害灯は、超高層ビルやタワークレーンなどが航空機と接触しないよう、航空機の航行に対しての安全を確保するための灯火である。赤い光や白い閃光を放つことで、航空機に対して自身の存在を示して安全の確保を行う。

建物、クレーン、アンテナなど、全ての高高度の物体を「物件」と呼称し、鉄塔など架空線を伴う物件は「支持物件」と呼ばれる。航空法により、高さ60m以上の物件や、空港に近接している物件に対しては、航空法の基準に準拠した航空障害灯の設置が求められる。

航空障害灯は、新築する建物付近により高い建築部が建築されており、その建物に航空障害灯が既に設置されていれば、航空障害灯の設置が免除される。免除を受けるためには、管轄する航空局に対して免除申請をしなければならない。ここでは、航空障害灯の設置基準のほか、免除申請の手続きの解説を行う。

航空障害灯の写真

航空障害灯の設置基準

物件の高さが60m以上であれば、航空障害灯の設置義務が発生する。60mを超過するのが「ビル頂部のペントハウス」や「非常用エレベーター機械室」など部分的であっても、60m以上になる部分がビルに存在すれば、航空障害灯を計画しなければならない。

この「60mルール」だけであれば、日本国内には多数の超高層建築物やタワークレーンが存在するので、極めて多くの航空障害灯が設置されることになるが、実際の運用では「付近に高高度な物件があれば免除・省略・低光度化が可能」という、緩和規定の適用が可能である。

多くの建築物が、航空障害灯の緩和規定を活用しており、60mを若干超過する程度の建築物であれば、航空障害灯を設置しなくても良い可能性がある。

物件の高さと航空障害灯の種類

物件が高いほど、より光度が高い航空障害灯が求められる。鉄塔や煙突など、細長い形状で突出した物件では、赤色の灯火のほか、白色閃光を放つ航空障害灯の選定も可能である。

高層建築物(高さ60m以上150m未満)の航空障害灯設置基準

高層ビルの建築物では、赤色の航空障害灯を用いて計画する。60m以上150m未満の建築物であれば、建物の外形がわかる位置に「低光度航空障害灯(100cd)」を設ける。

物件の幅が45m未満であれば、必ずしも4隅に航空障害灯を設置する必要はない。面積が小さな建築物であれば「対角2箇所」か「ペントハウス頂部1箇所」に、低光度航空障害灯(100cd)を設けることで法的に足りるとされている。

物件の幅が45mを超える場合には、出隅となる部分全てに航空障害灯を設け、かつペントハウスなどが建物頂部で突出している場合、ペントハウス部分にも低光度航空障害灯を設ける。

ペントハウス部分が3m以下の小さな突出であれば設置不要であるが、エレベーター機械室では高さ3mを超える事が多く、ペントハウス部分への設置はほぼ必須と考えられる。屋上をメンテナンスするためのタラップが設けられた場合、これが3mを超えることもある。

頂部に設ける航空障害灯は、多くの場合、建物外形を示すような100cdの光度は不要で、光度の低い「10cd」の航空障害灯で良いとされている。

高層建築物(高さ150m以上)の航空障害灯設置基準

物件の高さが150m以上では、低光度航空障害灯だけでは不足で、中光度航空障害灯を使用する。

幅45m未満の物件であれば、対角2箇所に中光度航空障害灯を設ける。物件の幅が45mを超える場合には、出隅となる部分全てに航空障害灯を設けるが、低光度航空障害灯とともに、中光度航空障害灯を対角で2箇所併用する。

ペントハウス頂部の設置基準は、60m以上150m未満の場合と同様である。

150m以上の超高層建築物では、頂部だけでなく、地上150mまでの側壁に対しても航空障害灯の設置が求められる。中部に中光度航空障害灯を設け、以降52.5m以下の等間隔で、低光度(32cd)と低光度(100cd)を繰り返し設置する。

航空障害灯の免除と省略規定

航空障害灯を設置免除する場合「航空障害灯及び昼間障害標識の設置免除の事務処理基準」に基づいた判定を行い、基準内であれば設置が免除される。一般的なビル計画において、免除規定として使用するものに限り紹介する。

地上高60m以上100m未満の場合、下記の基準内であれば設置免除が可能である。

地上高100m以上150m以下の場合、下記の基準内であれば設置免除が可能である。

航空障害灯は免除規定のほか、周辺に群立する物件に航空障害灯が設けられていれば、設置を省略したり、低光度化できるという緩和規定がある。

高さ150m以上のビルが付近に設置されている場合、当該ビルから測定し、半径450m・高さ150mの円の範囲内に含まれる他のビルは、中光度航空障害灯ではなく、低光度航空障害灯に減光しても良いとされている。側壁に設ける航空障害灯も、低光度100cdから32cdへの低光度化が可能となり、コストダウンが図ることができる。

これら免除規定を適用する場合、免除に使用する対象ビルを、慎重に選定しなければならない。もし対象となるビルが解体・撤去されることになり、自身の計画ビルが周辺でもっとも高いビルになってしまえば、航空障害灯を設置しなければ違法建築物になる。

航空障害灯が設置できないような状況では、建物を使用できなくなり、構造的な補強や、電源供給などを伴う工事が発生し、思わぬコストとなることも考えられる。免除に使用するビルを選定する場合、できる限り高く、かつ建築年数の浅い「新しいビル」を選定するのが良い。

国土交通局との協議に際しては、航空障害灯/昼間障害標識の設置等に関する解説・実施要領を基準としての協議である。グラフィックでわかりやすく表現された、航空障害灯の設置基準が記載されている。

航空障害灯の運用と管理

航空障害灯を設置した場合、運用・管理に対しても規制がある。故障や停電などで、航空障害灯としての機能を損なった状態では、航空機に対して危険を及ぼすため、早急に機能を復旧させなければならない。

航空障害灯の管理方法として、重要事項を列記する。

航空障害灯が必要な建築物は、ほぼ間違いなく高圧受電の需要家である。電気主任技術者を選任し、自家用電気工作物は年次点検が必要である。停電する期間が必ず発生するので、国土交通省(航空局)に対して、停電することを伝えてから点検業務を行う。

航空障害灯の点灯・消灯に関する運用は、下記の通りである。低光度航空障害灯は夜間消灯可能であるが、高光度航空障害灯や、閃光を放つ中光度白色航空障害灯は、国土交通大臣が認めたものを除き、常時点灯の義務がある。高さの高い建築物に対して、厳しい規制となるよう定められている。

航空障害灯管制器(制御盤)の仕様

夜間のみ航空障害灯を点灯するシステムの場合、航空障害灯の周辺照度を検出して、開閉器を動作させる計画となる。周辺照度が300lxを下回ると開閉器が閉となって点灯し、600lxを上回れば開閉器が開放されるようシステムを組み、航空障害灯の点滅を行う。

点灯と消灯を同じ照度にしてはならない。照度を同じ、または最大最小の差を狭く設定すると、雲の影で照度が変動した際に、開閉器が頻繁にオンオフする「チャタリング」が発生する。高頻度の開閉は、故障の原因となるため、点灯と消灯の照度に差を与えて、チャタリングの発生を抑制する。

航空障害灯は、周辺照度によるオンオフのほか、航空障害灯への配線の断線を検出したり、運転継続時間をカウントして一定時間超過後に警報を発信する「タイマー」を設けることが可能である。

航空障害灯への非常電源供給

60mを超える高層ビルに設置しなければならない航空障害灯は、非常電源による電源供給は規定されておらず、地方自治体の条例で規制されている場合を除いて、一般電源による電源供給が可能である。

非常用発電機などから4時間以上の非常電源供給が必要なのは、緊急離着陸場や緊急救助用スペースを使用する場合の航空障害灯である。

緊急離着陸場や緊急救助用スペースを設ける場合は、着陸区域照明灯、境界灯、航空障害灯、風向灯を全て含む「夜間照明設備等」を、非常電源で点灯させなければならない。防災センターからの点灯を遠隔操作したり、専用インターホンを設けるといった規制が含まれるので、電気設計時には注意が必要である。

地方自治体が定めている条例によっては、緊急救助用スペースへの電源供給についても、緊急離着陸場と同様に、非常電源として規定している場合があるので、発電機から電源供給しておけば安心である。60mを超過するほどの高層建築物であれば、消火ポンプや排煙機などが設けられるため、非常用発電機が設置されていることが多くコスト面の負担は少ないものと思われる。

 
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