電気設備の知識と技術 > 新エネルギー発電の知識 > コージェネレーションシステムの仕組み
コージェネレーションシステムは、ガス等を駆動源とした発電機で電力を生み出しつつ、排熱を利用して給湯や冷暖房に利用する。電力会社などは軽油や重油を燃料とした化石燃料によるコージェネレーションが普及しているが、建築設備用としては、天然ガスを熱源として利用する「ガスコージェネレーション」が幅広く普及している。
コージェネレーションは「熱」と「電力」を同時生産する設備の総称であり「熱」を主体に生み出す燃焼機関は、電力を生み出せる可能性があり「電気」を生み出す燃焼機関は、同時に熱を放出している。これを互いに再利用することで、限られているエネルギー資源を最大限に活用する試みである。
一般的な発電システムや熱供給システムでは、利用されない熱は排熱として外気に放出するのみである。単体の設備であれば、電気エネルギーと熱エネルギーはそれぞれ40%程度のエネルギー効率に留まっている、発電とともに排熱を利用することで、総合エネルギー効率を70~85%まで向上できる。
清掃工場の付近に温水プールを設ければ、排熱をプールの昇温に用いられるため、従来ただ捨てるしかなかった「熱」を利用できるため、エネルギー効率が高まる。
発電機による発電とともに、排熱を給湯や冷暖房に利用することで、限られた資源エネルギーを有効利用し、エネルギー効率を改善させようというのが、コージェネレーションシステムの大きな目的である。
発電と排熱利用を同時に行うことにより、大きな省エネルギーを図られる。
発電設備を「最も大きな電力を必要とする時間帯」に利用すれば、電力ピークカットを図れ、電力の平準化を推進できるが、熱を同時利用できるか検討が必要である。
単純に放出するだけとなるはずの熱エネルギーは、暖房器具や浴槽に供給すれば、熱エネルギーとして再利用が可能である。エネルギー回収ができれば、本来放出されるはずだった「CO2」「NOx」「SOx」を低減することにも寄与し、環境性の向上を図ることができる。
電力ピーク時に発電設備を運転することにより、単純な契約電力の低減を図られると思われがちであるが、コージェネレーションシステムが故障した場合、削減していた契約電力分の電力供給が不可能である。
コージェネレーションや常用発電機など、自家発電設備を需要家内に設置して契約電力を低減する計画とした場合、もし発電設備が故障したり、定期・緊急メンテナンス時に発電ができないタイミングの電力供給をどう扱うか検討しなければならない。
コージェネレーションシステムや常用発電機が突発的な故障を起こした場合、電離浴の供給量を低減して契約電力を超過しないよう制御できれば、何ら支障はない。しかし、発電機の故障を理由に、建物が使用している電力を引き下げるのは困難であり、通常は普段どおりの電力供給を求められる。
発電機を運転せず、電力会社からの電力供給でコージェネレーションや自家用発電機分の供給を受けると、発電機容量分の契約電力が突如跳ね上がってしまう。
もし契約電力を小さく抑えていた場合、電力会社が供給する配電線への負担が大きくなり、自家用発電機が大型の場合、故障時の契約電力超過の度合いによっては、電力会社から供給ができないおそれも考えられる。状況を避けるため、電力会社は需要家に対して「自家発補給契約」という電力需給の契約を結ぶ。
自家発補給契約は「発電設備のメンテナンス・故障時に限り電力を供給する」という契約であり、発電機が故障したり、定期点検時に発電機が運用できない場合のみ、電力供給を受ける電力契約である。
「発電機停止時は電気機器を運転しないため、突発的な最大電力は発生しない」という制御が可能であれば、自家発補給契約を結ぶ必要はない。しかし、発電機が故障したら操業を停止するといったことができる需要家は一般的に稀であり、多くの需要家が、自家発補給契約を結んでの運用を行う。
コージェネレーションシステムは「発電機」と「熱源」を一体化した設備であり、停電時には非常用電源としての電源利用が可能である。
非常時に自立電源として利用する場合、電力会社への逆送電を避けるため、通常時はピークカット用として使用している発電機であっても、停電時には一旦発電機を停止し、電力会社との連系を解除した状態から、施設内に電力を供給する。
近年では、事業継続計画(BCP)のひとつとして、非常時に利用できる電源確保が求められている。日常的には、電力と熱を供給しつつ、非常時の備えとしてコージェネレーションシステムを導入するクライアントも増加している。
コージェネレーションシステムなど、定常的に天然ガスを使用できる設備を導入する場合、ガス会社から、安価な契約メニューの提供を受けられる可能性がある。ガスの消費の大口需要家となるため、コージェネレーションとともに、厨房機器や、ガスヒートポンプ空調機などを同時に導入すると、総合的にランニングコストを抑えられる。
電化によるランニングコストの低減も、比較検討する必要があるが、熱源の選択の幅が広がれば、計画に幅を持たせられる。
多くのメリットがあるコージェネレーション設備であるが、建築設備用途として採用する場合、発電機のイニシャルコスト、各種法規を満足するための調整、排気を熱交換するための熱交換設備の導入の課題をクリアしなければならない。
コージェネレーション設備は発電機の一種であり、設置工事において大きな予算確保をしなければならない。ガス料金の低減のみを目的として、小型の発電設備を設けて、ガス会社と有利な契約を結ぶのみという計画も考えられる。
ガス会社は、ジェネライトと呼ばれる小型のコージェネレーションシステムを開発し、販売を行う。5~35kW程度の小型発電機を設置し、排熱を貯湯タンクに供給し、給湯器からの給湯に利用できるシステムとなる。
製品によっては、ガス空調設備に連携し、熱を暖房として有効利用するシステムもあり、導入によりガス料金の優遇を得られるため、ガスを多く消費する事業者の採用実績が多くなる。
発電設備は10kWを超える場合、電気主任技術者の専任や、自家発補給契約を結ぶことが不可欠であるが、10kWを超えない機種選定が可能なようラインナップされているため、小型機種の選定も一考である。
発電機を設置する場合、消防法など関連法規に定められた基準を満足しなければならない。回転部分に容易に触れられないような安全対策が講じられていることや、設置したことを所轄消防に届出し、定期点検を行う義務が発生する。
所轄消防では、一般的に火災予防条例において「固定されている内燃機関による発電機」を設置する場合には「電気設備設置届」と呼ばれる届出を行うよう設置者に求める。可搬用の小型発電機を除き、固定して使用する発電機設備は、電気設備として消防への届出が義務付けられる。
高温になる排熱は、そのまま利用できないため、利用する対象に合わせた熱交換設備が必要である。一般的な熱交換の方法として、排熱で水を湯に昇温して利用する方法が用いられる。
発電機から排出される排ガスは、数百度もの高温である。給水管を接触させて温水を作る。発電機から発生する数百度の排熱をそのまま利用するのは難しいので、適した温度に変換するための「伝熱プレート」を内蔵した熱交換器を併用する。この温水は極めて高い温度になるが、給湯や空調で必要な温度に調整し、80~90℃程度で供給する。
熱交換器が存在しなければ、排熱利用はできない。段階的に熱を利用したい場合、多数の熱交換器が設置されることになり、イニシャルコストの増大につながる。
コージェネレーションを設計する場合、熱主電従と電主熱従という概念がある。熱と電気のどちらを主たるエネルギーとして考えるかに設計の手法が変化する。熱を主に考えるか、電気を主に考えるかに発電機の運転方式が変わり、コージェネレーションシステムの制御機器も変わるので、早期に運用方針をまとめて計画を進めることが重要である。
熱主電従の運用方法は、熱の利用を主に考え、発電については制御を行わない方式である。温水プールを持っているフィットネスクラブの場合、熱と電気を比較して、必要なエネルギーは熱である。
プールの温度を一定に保つため、熱源機としてコージェネレーションシステムを稼働させることになり「必要な時間に必要な熱を得る」ことが主目的となるため、その稼働タイミングに電気が必要でなくても、システム稼働により発電された電力が供給される。発電量は制御されていない。これを「熱主電従の運用」と呼ぶ。
電主熱従の運用方法は、電気の利用を主に考え、熱の制御を行わない方式である。商業施設では、昼間に空調負荷・厨房負荷などが集中し電力ピークが発生する。
ピークカットするためのコージェネレーションシステムの稼働は「必要な時間に電力を得る」ことが主目的となる。発電したタイミングで熱が不要であっても、排熱が放出され続ける。これを「電主熱従の運用」と呼ぶ。
常に排熱を受け入れられるような、大規模な温浴施設があれば良いが、熱量に対する制御を行ったシステムではない。
家庭規模でコージェネレーションシステムを考えた場合「固体高分子形燃料電池」を使用することがほとんどである。発電機だけでなく、燃料電池を用いたシステムであっても、コージェネレーションシステムとして成立する。
燃料電池は、運転温度が80℃前後のため給湯に都合がよく、排熱を回収することで給湯負荷を大きく低減できる。運転温度が比較的低温なため、機器のオンオフを繰り返す間欠運転にも良く追従できるから、家庭用燃料電池としては非常に良い特性を持っているといえる。
業務用の場合は、間欠運転を行うと温度が低下してしまい、作動温度まで温度上昇する間、発電できない。業務用セントラル給湯設備などが設置されており、常時排熱が利用できる環境となっていなければ、効率を高められない。
高い排熱を確保できるが、高温排熱を利用できる設備が無ければ、結局は排熱を無駄にしてしまうので、コージェネレーションとしては扱いづらいものである。