電気設備の知識と技術 > 省エネルギーと脱炭素 > ZEBとは?日本の建築物エネルギー自立度評価の基準と進化
2024.1.20
ZEBとは、エネルギー自立度が極めて高く、年間の一次消費エネルギー消費量の収支がゼロとなった建物を示すものである。「Net Zero Energy Building」の略称であり、建物自体のエネルギーを削減する「省エネ」、その上で太陽光発電などによる「創エネ」を組み合わせて、賞味のエネルギーをゼロにした建物のことである。
ZEBは、建物由来のエネルギー空調や照明、給湯など「建物由来」のエネルギーを評価するものであり、建物利用者が用いる電算装置やOA機器、サーバーマシン、スマートフォンの充電などは建物由来ではないため、省エネルギー計算から除外される。
また、工場生産や研究開発を行うために用いる電力も、建物由来ではないため除外となる。このため、ZEBを達成した建築物であっても「電気代がゼロ」ということにはならないことに注意が必要である。ゼロエネルギーという単語から、まったくエネルギーが消費されない建物であるように誤認しないよう、十分な説明が必要である。
ZEBは一次消費エネルギーがゼロであることが求められるが、その達成状況によって4つのシリーズが定義されている。ZEBを達成するための基本的考え方に「創エネだけでZEBを達成することは評価対象にならない」というルールがあるため注意を要する。まずは建物性能を十分省エネにすることで、そもそも建物が消費するエネルギーを小さく抑える事が重要であり、エネルギーを浪費しつつも、太陽光発電などを大量に設置しているからゼロエネルギーである、ということは評価対象にならないという考え方である。
そのため、ZEBを達成する建築物を設計する場合、まずは建築物の一次消費エネルギーを、ベンチマークとなる基準建物の50%まで削減する必要がある。この時点で、ZEBを達成するための準備ができたということを示し「ZEB Ready」の評価が得られる。
建物のエネルギーのうち、基準建物が消費すると予測されるエネルギーと、設計した建物が消費すると予測されるエネルギーの比率は「BEI : Building Energy Index」として評価され、数値が小さいほど省エネルギーな建物であると判断できる。ZEBを達成するためには、建物性能のみでBEI=0.5以下とする必要があり、その上でBEI=0にすることが条件となっている。
ZEBはその名称の通り、一次消費エネルギーが賞味ゼロとなる最高水準の省エネルギー建築物である。一次消費エネルギーを基準建物の50%まで削減することで大幅な削減が図られていることを前提に、太陽光発電等の創エネによってエネルギーをゼロとするものである。省エネルギー計算で算出される「BEI」はゼロとなり、建物由来のエネルギーは完全に削減されているものと評価される。
注意として、ZEBを達成した建築物であっても、建物由来ではないエネルギーとしてサーバーやOA機器などが加算されるため、消費電力や電気代がゼロであることを示すものではない。
ZEBに近い状況まで、一次消費エネルギーが削減できているものとしてNearly ZEBという評価がある。建物性能を50%以上向上させBEI=0.5以下としていることを前提に、創エネによりBEI=0.25以下まで削減することで達成となる。
75%削減ということで、一次消費エネルギーを基準建物の25%以下まで低減したことで、ZEBに近い建物として一定の評価を受けるものとされている。
ZEBを検討するための基礎的な性能として、建物の断熱性能を高めることで、基準建物の一次消費エネルギーを半分にすることがスタートとなる。ZEBやNearly ZEBなどを評価するための最低限の基準であり、まずはこの性能を満足することが必要となる。この基準では「創エネ設備」の有無は関係ないものとされる。
前述のとおり、ZEB Readyを達成していない建物はZEB・Nearly ZEBのいずれも評価対象外となるため、設計するに際してはZEB Readyを取得するだけの断熱性能の向上、高効率空調の選定、照明制御の見直し、給湯システムの見直しなどを実施し、一次消費エネルギーを低減させてZEB Readyを目指さなければならない。
大規模建築物などにおいては、太陽光発電設備を設置できなかったり、その用途上どのような措置を講じてもZEB Readyを取得できないという事態になることもあり得る。事務所や学校、工場などは40%以上、ホテルや病院、百貨店、飲食店などは30%以上の一次消費エネルギー削減に留まったとしても、さらなる省エネルギーの未評価技術を導入することが確認できれば、ZEB Orientedという評価を得ることができる。
ただし、小規模建築物ではZEB Orientedの採用はできないよう定められている。建築物全体の延床面積が10,000㎡以上であることが求められるため、小規模な施設ではZEB Orientedの採用検討そのものが不可能である。
ZEB Orientedを採用する場合、面積だけでなく「15項目の未評価技術」のうち、、1つ以上を採用しなければならない。項目としては下記の通りである。なお、照明のゾーニング制御などは採用しやすい未評価技術のひとつであると考えられる。
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