電気設備の知識と技術 > 省エネルギーと脱炭素 > 先進国から途上国へ。E-waste問題の根源と持続可能なリサイクルの必要性
2024.1.20
テレビ、パソコン、エアコン、冷蔵庫など各種の家電製品、電気・電子部品が先進国から発展途上国に輸出されたのち、不適切な廃棄処理によって環境に悪影響を及ぼす問題のことである。経済発展が遅れている国では、先進国が電化製品を輸入し利用することは通常行われているが、故障や機器寿命によって廃棄する段階において、リサイクルや有害物質の抽出といった技術が整備出来ていないことが多く、有害物質の流出が懸念されている。
廃棄物には鉛やカドミウムなど、人の健康に影響を与え、環境汚染を引き起こす物質が含まれているため、適切に処理しなければ大地に流出し、田畑を汚染して人の体内に取り込まれるおそれがある。日本国内では、有害物質は家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)によって規制されており、家庭で不要となったテレビ、エアコン、洗濯機、冷蔵庫の4品目は、家電メーカーで回収・リサイクルを行うよう定めている。
廃棄家電は小売業者に引き渡し、小売業者は製造業者に引き渡しを行う。このようなリサイクルの流れを構築して、有害物質の環境への流出を抑制しているが、国外ではこういった仕組みが整備されていないことが多く、地中に埋め立てることで処理をし、時間とともに内部に含まれる汚染物質が大地に流出することになる。
日本国内では、家電リサイクルは利用者が小売業者に、収集運搬費用とリサイクル費用を支払う必要があるので、このコストを抑えることを目的として、不法投棄の誘発や、中古品として海外などに売り払うことによるE-waste問題の誘発が懸念されている。
有害な廃棄物の国外への移動は、「バーゼル条約」と呼ばれる、廃棄物の移動に関する国際的な枠組み・手続きを規定した条約によって規制されているため、各々の国がこれを元にした規制や法律を作って規制している。
中古品として国外に輸出し、リユース品として再利用するという流通に、バーゼル条約は適用されないということもあり、リユースに適していない電気機器が輸出され、国外で廃棄されることがあれば環境汚染につながる。このため、国外に中古品を輸出する場合、バーゼル条約に基づいた法規に適合しているかどうかを確認し、税関申告時に証明することが求められている。
大幅に修理することを前提としているような製品は廃棄物として扱われる可能性が高い。打痕や汚れ・キズの有無、通電したら使える、破損しないように保護されている、中古品の売買契約書が整備されているといった、不法投棄や廃棄物の国外移動を目的としていないかを確認できるものがなければ、廃棄物を移動していると見なされるおそれがあるとされている。
廃棄家電には環境負荷の高い成分だけでなく、レアメタルが含まれている製品も多い。レアメタルの国外流出を避けるため、国内でリサイクルしレアメタルを抽出する必要があるとも言われている。下記のように、家電製品に含まれる部材にはレアメタルを多く用いているため、これをリサイクルすることが重要視されている。
携帯電話ひとつにも数多くのレアメタルが用いられており、ニッケルや銅のほか、銀や金といった希少金属も含まれているため、国内に留めてリサイクルし、自動車やIT機器類の製造に用いるべきという考え方が一般的である。
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