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消防設備士は、屋内消火栓、スプリンクラー、自動火災報知設備など、消防法に規定されている消防用設備等の工事、整備、点検を行える資格である。点検だけでなく工事までが可能な「甲種」と、点検のみ可能な「乙種」に分類されている。
甲種消防設備士は、消防設備士の資格分類では上位に位置しており、消防用設備等の「工事」「整備」「点検」というすべての業務に従事できる。
対して乙種消防設備士は、消防用設備等の工事をできず、甲種消防設備士が工事した消防用設備等の「整備」「点検」のみを行え、新設工事や改修工事はできない。
消防設備士の受験資格は、所持している国家資格の種類や、学歴によって分類されている。消防試験研究センターでは、消防設備士試験の案内の他に、試験の例題(過去問)、筆記試験免除資格の種類などが公開されている。
消防設備士資格は、分類によって受験資格が必要となる。乙種消防設備士は誰でも受験できるが、甲種消防設備士は関連学科の大学卒業といった学歴によって受験資格を得られるが、乙種消防設備士取得後の実務経験2年以上といった実務経験によっても受験可能である。
一部の国家資格の所持によって、消防設備士試験の受験資格となる。技術士、電気工事士、電気主任技術者、建築士の国家資格を取得していれば、消防設備士試験の受験資格となる。
消防設備士には甲種特類と呼ばれる分野がある。1~7類まで分類されている消防用設備とは別に、特殊消防用設備等という消防設備があり、これらの工事・整備・点検を行う場合、甲種特類消防設備士資格の取得が必要である。
給気型加圧防煙設備など、消防排煙の中でも「建築物の形状によって大きく仕様が変化する設備」については、特殊消防用設備等として分類される。このような特殊な消防用設備の工事・整備・点検は、甲種特類の消防設備士が従事しなければならない。
甲種特類消防設備士の受験資格は「甲種第1~3類のいずれかのうち一つ(消火設備)」「甲種4類(警報設備)」「甲種5類(避難設備)」の3種類以上の免状交付を受けていることが条件となる。消火・警報・避難という全ての消防用設備の知識を持ち、初めて受験が可能という設定になっており、全ての消防設備について熟知していることが、受験資格となる。
甲種特類消防設備士は消防用設備全般について、広く深い知識を持っていることが必須とされているため、取得の難易度は高いとされているが、甲種特類の消防設備は計画数が少ないため、実務として携わる案件は必ずしも多くない。
消防設備士は、1~7類に分類される消防用設備の設置に伴う「着工届」や「設置届」を所轄消防に届出する際、その届出書に消防設備士の住所氏名、免状の種類と番号、講習を受けた経歴等を記載しなければならない。
また、消防中間検査や完了検査では、着工届や設置届を作成し提出した消防設備士が立会いを行のを基本とする。検査官は「立会をしている者が、申請した消防設備士本人であり、免状に虚偽がないこと」を確認するため、常に持参し、提示できる準備を行う。
消防設備士の合格率は、甲種では30%前後、乙種では40%前後となっており、難易度は比較的低めとされる。所持資格によって多くの学科免除が受けられるため、取得は比較的容易といえる。合格基準は、各科目40%以上かつ、全体の60%以上の成績を修め、かつ実技試験で60%以上の成績を修めれば合格となる。
筆記試験の一部免除を受けた場合は、免除を受けた以外の問題で、科目ごと40%以上かつ、全体の60%以上の成績を修める必要がある。科目免除を受ける場合、その受ける科目に対して合格基準を満足しなければいけないため、免除科目を多く設定すると、総出題数が少なくなり一問あたりの比重が大きくなるため、得意な科目はあえて免除しないという選択も考えられる。
科目免除を行うと、試験時間が著しく短くなるため、免除を本当に行うか判断し、得意科目を改めて受験して点数の底上げを図ることも視野に入れつつ、最適な試験の受け方を選択すべきである。
消防設備士資格は、受けようとする種類の他類の消防設備士免状、電気工事士、電気主任技術者、技術士の資格を取得している場合、それぞれ筆記試験の一部が免除になり、資格取得が容易となる。
電気工事士免状取得者は、消防関係法令を除き「基礎的知識」「構造・機能及び工事・整備」の「電気に関する部分」が科目免除である。さらに実技試験において、甲種4類・乙種4類の「鑑別試験の問1」が免除、乙種7類では全問が免除となる。電気工事士免状は、第1種・第2種のどちらを取得していても、免除範囲は同じである。
消防設備士の電気に関する設問は比較的難易度が低く、電気工事士免状取得者のレベルであれば、容易に回答できる問題がほとんどである。免除することにより、点数の底上げが難しくなり、純粋な消防設備に関する問題のみ回答するため、難易度が上がってしまう可能性があるので注意を要する。
電気主任技術者免状取得者は、消防関係法令を除き「基礎的知識」「構造・機能及び工事・整備」の「電気に関する部分」が免除である。電気主任技術者は工事を行う資格ではなく、維持管理・運用を行う資格であり、実技試験の免除を受けることはできない。
電気主任技術者資格には第一種~第三種までの区分があるが、どの免状を取得していても、免除される範囲は同じである。
技術士資格の取得者は「基礎的知識」「構造・機能及び工事・整備」が免除である。技術士機械部門では「第1、2、3、5、6類」、電気・電子部門では「第4、7類」、化学部門では「第2、3類」、衛生工学部門では「第1類」の筆記試験が一部免除される。
消防設備士は、工事整備対象設備等として、第1類~第7類まで分類されている。消防用設備は消火設備、警報設備、避難設備に分類されるが、それぞれに関連する消防設備士が工事・整備・点検しなければならず、適合した分類と違う消防用設備に関する業務には携われない。
特殊消防用設備等と呼ばれる消防用設備に対応した資格である。新規に開発された消防用設備など、総務大臣が新たに大臣認定を行った消防用設備を工事、整備するための資格として分類されている。
特殊消防用設備等には「加圧排煙設備」「複数の総合操作盤」「新ガス消火剤」「インバーター制御スプリンクラーポンプ」があり、一般的な1~7類の消防設備分類では対応できない、新技術を用いた消防用設備に対して、その工事や維持管理を行える資格として制定された。
特殊消防設備は、平成26年時点で認定件数50件と少なく、かつ認定された設備の半分が「加圧防煙システム」となる。加圧防煙システムは、特別避難階段の附室や非常用エレベーターの昇降ロビーを排煙機のような大風量ファンによって加圧し、火災の炎や煙が侵入させないという安全技術であり、比較的事例が多いため平成21年時点で告示が制定されるに至った。
屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、屋外消火栓設備は、第1類の消防用設備として分類される。水を消火剤として用い、ポンプで圧送して消火する消防用設備については、第1類の消防設備士が受け持つ。
泡消火設備は、第2類の消防用設備として分類される。一定規模の地下駐車場などは泡消火設備の設置が義務付けられるので、これら消火設備の設置が必要な場合は、第2類消防設備士が受け持つ。
不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備は、第3類の消防用設備として分類される。水や泡を使用しても火を消し止められない火災や、漏電などが発生するため水系の消火剤が使用できない場合に、不活性ガス消火設備が用いられる。
水を掛けることで感電など二次災害につながったり、致命的な損傷を引き起こすような「通信機器」や「精密電気機器」の消火には、不活性ガス消火設備が用いられ、これらを受け持つのが第3類消防設備士である。
自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、消防機関に通報する火災報知設備は、第4類の消防用設備として分類される。自動火災報知設備は火災の発生を初期に検知し、早期に避難を促す事ができる重要機器である。これらは消火設備ではなく警報設備として分類されており、第4類消防設備士が受け持つ。
電気設備分野と関係が深く、自動火災報知設備や防排煙設備の設計を行う技術者は、高い技術力の維持に努めるため、第4類消防設備士資格を取得するのが望まれる。
かつ、電気工事士や電気主任技術者といった電気に関する他資格を取得していれば、数多くの学科免除が認められているため、資格取得が容易になっているのも特徴である。
金属製避難はしご、救助袋、緩降機は、第5類の消防用設備として分類される。消火設備や警報設備と違い、第5類は避難設備を規定している。
電源供給や配管敷設などをしなくても使用可能であり、避難機能を満足するため、設備分野というよりも建築分野に関連が深いのが特徴である。第5類消防設備士はこれら避難設備を受け持つ。
消火器は、第6類の消防用設備として分類される。消火器は最も基本的な消火設備であり、ほぼどのような建築物を設計する場合に際しても、消火器の設置は義務付けられる。変電設備や発電機設備なども、条例に定められた設備を設ける場合には、建物に課せられる規制とは別に、個別の消火器設置が求められる。
消火器の整備・点検は第6類の消防設備士が受け持つが、消火器には「甲種」分類は存在しない。これは、消火器の工事といっても、スタンドや消火器ボックスに消火器を収容するのが工事であり、専門的な技術を必要しないためである。
しかし、工事は容易であっても、十分な整備が行われない消火器は非常に危険である。劣化した消火器は、底部が破損して吹き飛ぶといった事故が多発しているため、整備・点検については消防法で厳しく規定されている。
漏電火災警報器は、第7類の消防用設備として分類される。建築物に敷設されている電線が損傷して漏電が発生した場合、音響装置で防火対象物の関係者に報知する消防用設備である。ラスモルタル構造の建築物に設置義務がある。
漏電火災警報器の整備・点検は第7類消防設備士が受け持つ。漏電火災警報器の工事は、電気工事士でなければ行なってはならないため、これも甲種の分類は存在しない。
消防設備士試験の参考書や模擬試験テキストは、数多くの出版社から販売されており、入手するのは容易である。しかし、本試験では試験問題の持ち帰りが制限されており、過去の出題からの傾向で試験対策するのは困難である。
試験の実施をしている消防試験研究センターでは、過去に出題された問題を一部公開しており、甲種試験及び乙種試験の試験問題の一部が確認できる。
実気試験の問題と回答まで公開されているので、模擬試験のひとつとして活用できるよう配慮されている。消防試験研究センター - 過去に出題された問題を参照。
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