電気設備の知識と技術 > 電気の資格 > 第二種電気工事士
電気工事士は、電気工事士法によって「電気工事の作業に従事する者の資格及び義務を定め、もつて電気工事の欠陥による災害の発生の防止に寄与することを目的とする」と定められている。
電気工事による事故の発生を防止するために定められた資格であり、素人工事による感電事故や火災の発生を防止するため、一定の知識と技術を持っている技術者でなければ、電気工事を行えないよう法的に規制している。
第二種電気工事士の場合、住宅や小規模店舗の照明取付や、屋内外の配線工事など小規模な電気工事ができる。第二種電気工事士は、電気工事を行える範囲として「一般用電気工作物」までに限られており、自家用電気工作物の施工は禁じられている。
自家用電気工作物のように、高圧の電気設備や、大規模で複雑な電気設備の工事を行う場合、第一種電気工事士の資格を必要とする。電気工事士試験は、第一種・第二種ともに電気技術者試験センターが実施している。第一種電気工事士は実務経験が必要であるが、第二種電気工事士は実務経験なく、だれでも受験できる。
電気機器のコンセントプラグをコンセントに差込むことは誰でもできるが、コンセント本体を壁や天井に取り付けたり、電線を天井裏に敷設し、壁に分電盤を取り付けるといった専門的な工事は、電気設備に関する知識や技術がない者が施工すると、一時的に動作したとしても、長期的な視線では電気事故の原因となる。これらの工事は、電気工事士資格を持った専門技術者が施工を行う必要がある。
電気工事士でなければできない工事として、下記が挙げられる。
これらの工事は、誤った施工を行うことで、火災や漏電といった重篤な被害を及ぼす工事は、専門資格の所持者でなけれぱ施工できないよう規制されている。
電気工事士資格を持たない者が電気工事をするのは非常に危険な行為である。個人が行うDIYやエアコン設置工事であっても、電気工事士法で規制された工事が含まれることがあり、無資格による電気工事を行ってはならない。
電気事故が起きた際には工事を行った者が責任を負う必要があり、罰金や訴訟問題などに発展するおそれがある。無資格工事は絶対に行わず、電気工事は専門技術者に依頼するべきである。
なお、電気設備設計の業務は「工事」に該当しないため、電気設備設計を行うことに対しては、第二種電気工事士の資格は不要である。しかしながら、第二種電気工事士や第一種電気工事士の試験によって得られる電気の知識は、電気設備に関する基礎的な部分を広く網羅しているため、電気工事の知識を得られるため有用である。
電線を固定するための支持間隔や固定方法を間違えると、電線に過度な負担が掛かり、絶縁不良や発熱が発生する。電線管に電線を収容する工事は、電線管の占積率の関係や許容電流の低下についての知識がなければ、事故につながるため危険である。
電線管にケーブルや絶縁電線を詰め込み、占積率が高過ぎる状態になると、電流が流れている電線からの放熱が阻害されてしまい、異常発熱による火災発生につながる。
このように、電線を電線管に入れて敷設するという作業ひとつに対して、数多くの数値規定や施工技術を必要とする。
接地極の接続や埋設工事は、接地極の埋設深さや埋設方法、接地極に接続する電線の仕様や接続方法が適正でなければ安全性が著しく低下する。
接地極が適切に施工されていない状態では、漏電時に火災や人体を保護するための漏電遮断器の不動作や、感電事故につながるおそれがあり大変危険である。電気事故を防止するため、電気工事士の資格を持つ技術者でなければ、接地極に関する工事ができないよう規制されている。
第二種電気工事士の試験難易度は、電気関連資格の中でも比較的簡単とされている。基礎的な電気計算や電気材料の用途選別など、幾つかの参考書を解くだけでも高配点が狙える。
電気工事士試験は、電線や電気材料を加工し、配線工事を行う実地試験が二次試験として用意されている。練習のための材料手配、工具の購入を行い、繰り返し配線工事の練習を行わなければ合格は困難である。
一次試験は、基本的な電気概論(オームの法則、キルヒホッフの法則など)や、合成抵抗の求め方、交流回路・直流回路の基礎、電気材料の用途選別が出題範囲であり、使用する公式や数学の範囲は基礎的・限定的となっている。三角関数の基礎程度を覚えていれば問題ない範囲である。
市販されている試験対策の教材を購入し、2~3周繰り返し問題を解けば試験の傾向が判断できる。多くが過去問題の数字を改変した出題であり、基本公式や出題傾向を把握すれば、それほど困難な試験ではない。
第二種電気工事士の受験者数は年々増加しており、平成21年度には筆記受験者100,000人を超え、筆記免除者を加えると120,000人以上が第二種電気工事士資格に挑戦している。受験申し込みをしても受験しない、または受験できない場合があるため実数は10%ほど減少する。
一次試験は約100,000人の受験者がおり、合格率50~60%程度で推移しているため、毎年50,000~60,000人が筆記試験に合格していることとなる。筆記試験合格者は、二次試験となる技能試験を経て電気工事士免状を取得できるが、二次試験は70,000~80,000人が受験し、合格率は60~70%であり、毎年50,000人ほどの第二種電気工事士が誕生している。
上位資格である第一種電気工事士は、筆記試験受験者数が約40,000人、合格者15,000人程度となり、技能試験は受験者15,000~20,000人、合格者7,000~10,000人と、第二種電気工事士と比較して難関となっている。
第二種電気工事士の合格率は、筆記試験が50%~60%、実技試験は60%~80%と比較的高い水準にある。電気主任技術者のように合格困難な資格といえるレベルではなく、参考書やテキストを十分に学習すれば合格することはそれほど難しくない。
二次試験は実際にケーブルの切断・接続、ボックスの組立といった実地試験である。比較的簡易な試験とはいえ、実施試験は配線を精度良く、素早く作成するための練習を繰り返さなければ合格は難しい。十分に時間を使い、手馴れさせるのが合格の早道である。
電気工事士の二次試験は、小規模な電気回路を実際に組む試験である。アウトレットボックス、電線管、リングスリーブや差込コネクタ、VVFケーブルなどが支給され、決められた回路を時間内に作り上げる。
電工ナイフや圧着ペンチ、プライヤー、ドライバーを持参し、配布された単線結線図を元に、25分程度で回路を組まなければならない。試験時間が非常に短いため、作業時間の短縮に色々な小技が活用される。
複線図は電気工事士試験で最も基本となる部分で、しっかりと作成することで間違いの防止につながる。配布された単線結線図から直接配線加工に入ってしまう受験者が多いが、実務で慣れていたとしても、事前に複線図をしっかり作成するべきである。
周辺の受験者が配線加工に入っている姿を見ると焦ってしまうものであるが、試験においては、綺麗で正確な回路を組むことが重要視されるため、複線図を十分な精度で描き、マイペースに徹して、綺麗に仕上げることを考えるのが良い。
筆者が初めて試験用の電気回路を組んだ際は、完成まで1時間近く費やしていたが、試験直前には15分程度で回路を仕上げられるようになっていた。練習回数をこなし、手馴れさせることで確実に作業速度が向上する。
単線図を複線図に書き換える作業を2分~3分で終わらせ、電線加工の作業に入ることができれば製作速度は申し分ない。複線図にはVVFケーブルの被覆部分とシース部分の長さを記入し、過不足のないケーブル切断を心がけると間違いが減る。
複線図が完成したら電線加工に入る。電線長さを計測する場合、メジャーや物差しを使用して正確な長さを図るのも良いが、工具の持ち替えが発生しタイムロスにつながる。手の平や指先の幅を測定器代わりとし、長さを判断することで時間短縮を図るのを推奨する。
個人差があるが、手の平の幅は10cm程度であるから計測器の代わりとして利用できる。小指の第一関節までの長さは、スイッチやコンセントの被覆剥き長さに近似しているため、関節の長さに合わせて被覆剥きを行なうと時間が短縮できる。
計測器に持ち替えることなく電線を加工できれば、作業時間は大きく短縮する。電気工事士の二次試験では、電線のシース切断長さを「±50%」まで許容されるため、多少の長さの違いは問題にならない。ケーブル長10cmが指定されていても、5~15cmまでであれば許容範囲となるため、大雑把な計測方法でも大きな問題にはならない。
ケーブルの切断と加工は実地試験の基本技術であり、完成度に大きく影響する。ケーブルのシース剥ぎ過ぎ、心線までのキズといった大きな欠陥が多発すると不合格判定になるおそれがある。
VVFケーブルのシースを剥き過ぎると欠陥として扱われる。レセプタクルやコンセントへの電線接続は、シースの剥ぎ取り範囲をできるだけ小さくし、シースのない「被覆のみの部分」ができるだけ短くなるよう加工する。
シースは重要な保護部分であり、シースが剥ぎ取られた部分は機械的に弱いため電気的弱点となりやすい。器具内に納まる範囲でシースを剥ぎ取る必要があるし。
シースに切り込みを入れる際、被覆にまで切り込みを入れないように力を加減する。被覆まで切り込んでしまうと、心線が露出してしまうため漏電の原因となり危険である。シースの切り込み部分は試験管のチェック項目のひとつとされており、被覆から心線が見えるほどキズが付いていると重大欠陥として扱われる。
ケーブルの被覆を必要以上に剥かないことが重要である。VVFケーブルの心線は「シース」「被覆」で保護されているが、シースと被覆を除去すれば充電部である心線しか残らない。心線は電圧が印加され電流が流れる部分であり、露出した状態で金属物や壁面に接触すれば漏電火災の原因になり、人体に触れれば感電のおそれがある。
心線部分は、器具の端子に完全に収容されるように切断しなければならない。目安として、ゲージに差し込んだ際に、心線部分が見えない程度の長さで加工するのが良い。
差込時に心線が見えなければ良いということはなく、短すぎても危険である。被覆の剥ぎ取りが少なすぎると、心線の差込不足により電気抵抗が増加したり、張力で外れたりすることで火災の原因となる。
リングスリーブやレセプタクルの接続端子に、被覆が挟み込まれないよう注意する。端子に被覆が挟み込まれると、電気抵抗が増大して発熱し火災の原因となる。被覆は絶縁体であるが、ネジに被覆が挟まれて潰れた状態では絶縁抵抗が増加し、汚れが付着することで、漏電や火災の原因になるおそれがある。
試験では、ケーブルだけでなく電線管も支給される。電線管にIV線を通して保護を行うという工程も、電気工事士試験における確認事項に含まれている。
電線管を接続する際に、ボックスと電線管を強く締め過ぎないことが重要である。金属管であればプライヤーで力強く締め付けても破損するおそれは少ないが、合成樹脂管や樹脂ボックスを強く締め付けると、管本体やボックスが割れるおそれがある。
近年はPF管(合成樹脂可とう電線管)の出題が多く、樹脂製の電線管を用いた出題が多い。樹脂製の電線管にプライヤーで過度の力を加えると、管が割れてしまい欠陥として扱われる。軽く手締めをし、プライヤーで軽く回す程度で固定するのが良い。
回路組立の完成後は、致命的な欠陥がないことを確認し、ケーブルの曲がりやたわみを整える。レセプタクルやスイッチを持ち上げると、より整った見栄えとなる。試験監督員の評価を高めるための小技として、覚えておくと良い。
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