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電気設備の知識と技術 > 電気の基礎知識 > 直流と交流の違いと利点欠点

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直流と交流の違い

身近に使用している電気には、直流と交流がある。壁のコンセントから取れる100Vの電源は、50Hzまたは60Hzの交流電源である。対して、乾電池やACアダプターから得られる電源は直流電源である。

直流電源は、常に一定の電圧を維持している電源で、乾電池や蓄電池は使用するほど消耗し電圧が低下していくが、プラス方向の電圧であることは変化しない。交流電源は、一定の周期で電圧のプラスとマイナスが変化する電源となる。

家庭内で使用している電気機器は、交流のままで使用できない場合が多く、交流を直流に変換して電源供給している。小型の電気機器に100Vは電圧過大であることも多いため、5~24V程度の小さな電圧に変換している場合もある。

家庭内で使用している電気のほとんどは直流であり、交流で送電される住宅では、直流に変換する際の電力ロスも大きく発生している。しかし、発電所から変電所を経て家庭に届けられる電源は交流となる。

このような現況からすれば、「電力会社の発電所で直流電源を作り、直流のまま家庭に送電する」ことで、電力ロスがなくなると思いがちであるが、発電所から家庭まで直流で送電する方式は事実普及していない。

国内の直流送電方式で有名なものには、電気鉄道の電源がある。直流電源はモーター類の動作が良好で、低速・高速への速度変更に対する反応が良いため、電動機の運転がほとんどを占める電気鉄道には最適である。

業務施設や住宅に供給する電力は、電動機の運転に限った使用方法ではなく、電熱、電子機器の駆動など、数多くの用途がある。電力の汎用性が重視されるため、まだまだ交流送電が主流となる。

交流送電の利点

変圧が容易

交流送電の最大の利点は、変圧可能なことである。発電所から供給される電圧は数十万ボルトという高い電圧で送電され、都心部に近づくにつれて降圧させることが可能である。

戸建住宅など小規模の需要家では200Vや100Vの電圧が供給されているが、交流送電では変圧器によって電圧を自在に調整可能なため、発電所から変電所では数十万ボルト、変電所から住宅の付近までは6,600V、住宅の付近の柱上変圧器で200Vに降圧するといった必要な場所ごとに電圧を調整する方法が採用できる。この手法により、送配電の設備コストを最小限に留めることが可能である。

交流電源の容易な電圧変換に対し、直流電源を降圧させるには、直流を交流に変換させるコンバータを通し、交流を変圧器で降圧させ、再度コンバータを通して直流に変換するという手順が必要である。高圧DC → 高圧AC → 変圧 → 低圧AC → 低圧DCという流れとなる。

コンバータ本体のコスト、変換時のロスなどが無駄なエネルギーになり、コンバータの設置に掛る費用や設置スペース、メンテナンス等のボリュームも増えるので、一般に普及しておらず直流の変圧は難しいとされている。

森林を渡る送電鉄塔の写真

事故時の遮断が容易

交流回路は、プラス電圧とマイナス電圧を交互に繰り返す特性がある。電気を停止させたいときや、事故により強制的に遮断しなければならない場合、電流ゼロの瞬間を利用して遮断すれば、電気系統や遮断器本体に与えるショックを最小限にできる。

直流送電では、常にプラス方向の電圧が維持されているため、遮断が難しいという特性があり、保護装置の規模や構造が複雑かつ大規模になってしまい、コストアップにつながる。

交流電源の欠点

目標電圧よりも高電圧が必要

白熱電球や電熱機器に電圧を印加したとき、交流電源は常にプラスとマイナスの変化を繰り返しており電圧と電流が0になる瞬間は電力が発生せず、発熱ができない。所定の熱量を得たい場合には、目標電圧よりも大きな電圧を与えなければならない。

交流電源を考える場合「正弦波の最大値」という考え方がある。一般的に100Vと呼ばれるのは電圧の実効値であり、実際には √2 ~ 0 ~ -√2 という電圧の移り変わりが発生している。実効値で100Vの電圧を印加した電気機器には、瞬間的に141Vの電圧が印加される。

直流電源であれば100Vは常に100Vのままであり、若干の脈動を除き、プラスマイナスの変動もなく一定値を示す。交流の場合は100Vを確保するために 141V ~ -141V という変動電圧に耐える電気機器が必要となるため、本来100Vの性能で良い電気機器であっても、141Vの絶縁性能が求められる。

つまり、直流機器よりも交流機器の方が、より高い電圧に耐えられる絶縁性能が必要となる。絶縁性能の強化により電気機器が大きくなったり、製造コストが高くなることも考えられる。

コイルとコンデンサ成分の影響を受ける

交流電源はコイルとコンデンサの影響を受けるという特性があり、これは交流の欠点として挙げられる。電力分野ではフェランチ効果と呼ばれる送電端電圧よりも受電端電圧が高くなる現象があり、長距離を敷設した電力ケーブルで発生する。ケーブルと大地に発生する静電容量が影響し、進相コンデンサを設置したのと同じように力率を進ませる。

電力系統が進み力率側に振れ過ぎると、送電電圧よりも受電電圧が高くなる系統異常につながる。直流系統であればフェランチ効果による電圧の影響はなく、安定した電力供給が可能である。

直流電源の利点

送電線が単純化

直流で送電する場合、交流送電と違い、どの電圧域であってもプラスとマイナスの2本の電線で送電可能である。交流送電も電線2本で送られるが、単相2線式は100Vのみに限られ、効率が悪いため送電線では採用されていない。

力率を考慮しなくて良い

直流送電は、電圧と電流に位相差がないため、進みや遅れが発生しない。交流回路では問題となる「無効電力」を0として送配電機器を設計できる。

直流電源の欠点

電流遮断が難しい

直流送電にはいくつかの欠点がある。交流電源はプラス・ゼロ・マイナスという電圧周期を繰り返しているため、電源を遮断する時はゼロの瞬間を狙って、もっともショックの少ない電源遮断が可能である。

直流電源は、常にプラス方向に電圧が印加されているため、電圧ゼロの瞬間がない。電流が大きく流れている中での強制的な遮断は、遮断失敗につながるため危険である。切り離した部分にアークが継続発生して電流が遮断されず、放電が引き起こす熱による焼損も懸念される。

直流の遮断器では、コンデンサを開極部分に並列接続し、遮断時には直流回路にコンデンサ放電によって電流を重ねあわせ、電流ゼロの瞬間を強制的に起こして遮断するという技術が使われている。構成が複雑であり、交流回路よりも機器が高価で大掛かりである。

電食作用が強い

直流電源は常にプラス方向とマイナス方向が一定であり、マイナス方向側の電路に接続された金属体は電食作用にさらされる。電源においては、プラス側では防食作用がありマイナス側が腐食しやすくなるという特性がある。

電気鉄道では、枕木程度で大地とレールは完全に絶縁できないため、大地を通じて付近に迷走電流を流出させる。線路に並走して埋設されている金属製の水道管や電配管は、迷走電流の影響を受けて腐食するという問題が発生する。

メンテナンス部品が多い

交流の電動機は鉄心を固定し磁石を回転させる方式のため、磁石の軸受け部分がメンテナンス対象となる。点検項目が少なく、機器の摩耗を最小限に留め、メンテナンスコストが低減できる。

直流の電動機は磁石を固定し鉄心を回転させる方式のため、接点部品が多い。スリップリングやブラシを用いた電動機は、摩耗による汚損や劣化が著しく、清掃頻度や部品交換頻度が高いという特性がある。交流電動機よりもメンテナンスコストが高いのは欠点として挙げられる。

地域による電源周波数と電圧の違い

電源周波数は東日本で50Hz、西日本で60Hzに分けられており、新潟・群馬・埼玉・山梨を境界とし、静岡を分断する形で東日本と西日本で周波数が違う。

周波数の違いは、交流電動機の回転速度にそのまま影響する。住宅用の家電製品では、インバーター等によって入力周波数を変換し、どの地域でも使用できるようにしていることが多いが、旧式の洗濯機では周波数切り替えスイッチを設置した地域に合わせる必要がある。汎用ファンや変圧器に切り替えスイッチなど存在せず、周波数が違う地域で電気機器を使用してはならない、といった制限が設けられている。

電動機やファンは、設置する地域の周波数にあわせた製品が作られている。換気ファンやポンプなど単純な回転機械では、現在でも50[Hz]用と60[Hz]用が別に製作されている。

変圧器も同様、地域によって周波数を変えて設計される。電動機類は周波数によって回転速度が変わるため、設置する地域を間違えると能力が10%~20%も変動してしまい、所定の性能が発揮できない。

蛍光灯など、インバーターを内蔵している電気機器であれば、電源のヘルツフリーやボルトフリーが一般化しており、新築物件での器具選定ではどちらの周波数でも支障ない。インバーター装置を持たない古い蛍光灯は、設計周波数と違う電源を供給すると、発熱や点灯不良の原因になる。器具の再利用や移設する場合、注意が必要である。

国内の周波数の違いの由来

東日本と西日本で50[Hz]・60[Hz]の違いがあるのは、管轄する電力会社の発電装置がどの国から購入して運用したかによる。東日本地区では、東京電燈(現在の東京電力)の前身会社が、ドイツから50[Hz]の発電装置を購入して運用したため、50[Hz]が周波数として定着した。

西日本では、大阪電燈(現在の関西電力)が、アメリカから60[Hz]の発電装置を購入していたことが、60[Hz]の定着の由来となる。現在に至るも、電源周波数は統一されていない。

国内の電圧設定の由来

国内の周波数は東西で違うが、電圧は100Vで統一されている。諸外国は200Vの電源が普及している中で100Vに設定されたのは、電圧が決定した1910年代、民間に普及していた電気機器のほとんどが100Vの照明用電球であり、電球に100V以上の電圧を印加すると寿命が著しく減少してしまうため、100Vで統一したとされている。

電気機器の周波数の違いと使用可否

50[Hz]と60[Hz]のどちらでも使用できるヘルツフリーのインバーター式蛍光灯器具を除き、グロー式蛍光灯、ラピッド式蛍光灯は、それぞれ機器に定められた周波数の地域で使用しなければならない。設計周波数と違う電源を供給すると、機器の異常発熱による焼損につながる。

グロー式蛍光灯の周波数による違い

グロー式蛍光灯は、60[Hz]専用安定器を50[Hz]電源で使用した場合、明るさは増加するもののランプ寿命が短くなり、安定器の異常過熱を引き起こす。

50[Hz]専用安定器を60[Hz]電源で使用した場合、明るさが低下しランプ寿命が短くなる。安定器の異常過熱は発生しないが、始動不良となり点灯しないことがある。

どちらも正常な運用ではなく、故障の原因となるため避けなければならない。

ラピッド式蛍光灯の周波数による違い

ラピッド式蛍光灯の60[Hz]専用安定器を50[Hz]電源で使用した場合、明るさが低下し、ランプ寿命が短くなる。

50[Hz]専用安定器を60[Hz]電源で使用した場合、明るさが増加するが、ランプ寿命が短くなる。安定器が異常過熱し入力電流も増加するため、発熱・発火の危険性が高くなる。

周波数の違いにより、蛍光灯安定器に過度の負担が発生し、異常発熱や焼損事故の原因となる。ランプの寿命が著しく変化し期待寿命を満足できない。ラピッド式蛍光灯とグロー式蛍光灯は、周波数によってまったく逆の現象となるが、どちらの場合も安定器を損傷する原因となるため、注意を要する。

HID照明の周波数による違い

60[Hz]用のHID安定器を50[Hz]で使用した場合、安定器の温度上昇につながり、寿命が短くなる。

50[Hz]用のHID安定器を60[Hz]で使用した場合、ランプの安定点灯までの時間が長く、ランプは暗くなり、寿命が短くなる。

どちらも寿命の低下を引き起こすので、適正な周波数での利用が原則である。

変圧器の周波数の違いによる使用可否

変圧器は、60[Hz]用変圧器と50[Hz]用変圧器を別に製作しており、地域によって使い分けが必要である。変圧器の特性上、東日本用の50[Hz]対応変圧器は60[Hz]の西日本で使用できるが、60[Hz]用変圧器を50[Hz]地域で使うことはできない。

鉄心の磁束が周波数減少によって大きくなり、変圧器の断面積が不足するため、励磁電流、励磁突流電流が増大する。無負荷損失が大幅に増え、騒音や振動が非常に大きくなり危険である。

50[Hz]用の変圧器を60[Hz]地域で使用した場合、励磁電流や無負荷損失が減少して効率が良くなるが、短絡インピーダンスの増加や、電圧変動率の増加という変化を起こす。地域の特性に配慮し、設計された変圧器を使用することが原則である。

 
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