電気設備の知識と技術 > 電気の基礎知識 > 扇風機・換気扇とサーキュレーターによる節電
エアコンを使用しない節電方法として、扇風機やサーキュレーターを使う方法がある。エアコンは電気エネルギーでコンプレッサーを運転させるため、大きな電力を必要とするが、扇風機などはモーターによって気流を発生させるだけであり、消費電力は限定的である。
扇風機やサーキュレーターによる気流を身体に直接当てるのは、清涼感を得るには効果的であるが体調への悪影響が懸念される。換気扇・レンジフード等による積極的な換気を行い、扇風機やサーキュレーターによる空気の流通によって清涼感を得て、エアコン稼働を減らすことで節電を図るという方法もある。
ここでは、エアコンと扇風機・サーキュレーターの併用による節電について、また換気扇・レンジフード利用時の注意点について解説する。
夏期はエアコンの稼働率が高く、大きな消費電力を必要とする。節電対策として、エアコンの高い消費電力を低減するために扇風機を組み合わせるという方法がある。エアコンを使用せず、扇風機やデスクファンを主に用いて、節電を図るという取り組みである。外気温が高く室内と外気が同じような温度となっている時間帯には、エアコンは数百ワットを超える消費電力を必要とする。これに対して扇風機やサーキュレーターファンは、20~50W程度という極めて小さな消費電力となっている。
扇風機は風を直接身体に当てることで体感温度を下げ、実際の周辺空気温度を下げずとも、快適な空間を作り出すという効果がある。しかしながら、エアコンをまったく使わず日々を過ごすのは現実的ではなく、どうしてもエアコンを使用しなければならない状況になるのが通常だが、扇風機やサーキュレーターを併用することで暖房や冷房の効率を高めて、節電に繋げるという方法がある。
体感温度とは人間が感じる温度のことで、周辺空気温度だけでなく、湿度や風速などの要素によって変化するため、風を強く当てることで涼しさを感じるという特性を利用して、冷房効果を高めることが可能である。
エアコンによる冷暖房を行う場合について解説する。そもそも空気の特性として暖気は上部に、冷気は下部にたまるという性質がある。そのため、夏季は天井付近が特に暑くなり、冬季は足元が寒くなる。これをエアコンによって温度を調整し、風によって撹拌することで温度を均一化し過ごしやすい環境を構築する。
エアコンは自動で上下する風向板が設けられているため、自動的に上下に風邪の方向を変えることができる。暖房は下向きに、冷房は上向きにすることで温度を均一化することができる。空調された空気が不快な環境となっている部分とミキシングすることで、室内環境が改善する。
エアコン本体に搭載されているファンでも室内空気の撹拌は可能であるが、ここに扇風機やサーキュレーターを組み合わせることで、より効果的に気流を発生させることができる。冷房の場合は人体に直接気流を当てることで体感温度を下げることが可能であったり、部分的に暖気や寒気が滞留する部分が発生していれば扇風機やサーキュレーターで拡散させることもできる。
暖房の場合は天井付近にたまった暖気にファンを向けることで暖気を拡散させ、空気環境が改善できる。天井に溜まった暖気を足元から効率的に拡散させるため、天井に設けたシーリングファンで床に向かって気流を発生させるというのも効果的である。
扇風機と共にサーキュレーターと呼ばれる送風用ファンの普及が広がっている。扇風機は直接風を人体に当て、涼しさを感じさせることを主目的としているが、サーキュレーターは空気の循環を主目的とした製品で、大風量を遠くまで移送する事ができる。反面、風量が大きいため騒音や振動も、扇風機と比較して大きいのが欠点である。
強い風を生み出せるため、サーキュレーターを扇風機の代わりとして購入・使用する家庭が増えている。しかし、サーキュレーターは「空気の撹拌・移送」を主目的とした機器であり、機能は少なく風量が大きいという特徴から、エアコンの気流を補強するような用途や、洗濯物を効率的に乾燥させるといった用途となる。
サーキュレーターは風量が大きく直線的であることから、強い風量による体感温度の低下を感じることができるものの、長時間に渡って人体に当てると身体の負担が大きく体調不良を引き起こすおそれがある。
扇風機では、首振り機能や微風運転といった付加機能が搭載されているが、サーキューレーター扇風機が通常装備している「タイマー機能」すらない製品がほとんどで、就寝時等に使う場合は使い勝手が悪い。
項目 | 扇風機 | サーキュレーター |
---|---|---|
用途 | 人に風を当てて涼しくする | 室内の空気を循環させる |
風量 | 弱い | 強い |
騒音 | 小さい | 大きい |
風の吹き出し方 | 広範囲に広がる | 直線的に吹き出す |
機能 | 風量調節・首振り・ゆらぎなど多様 | 風量調節・首振り程度で少ない |
サーキュレーターの使用目的は、空気の撹拌・熱抜き・冷房効果の向上・暖房効果の向上があり、使い方によって様々な効果を発揮する。
中間期など、暖房や冷房を行なっていない場合、室内の空気が動かずに澱んでしまうことがある。梅雨時期などは湿気が共に澱んでいると、カビの発生の原因となるため避けなければならない。空気を効率良く撹拌したい場合には、サーキュレーターを部屋の角から角へ最も長い距離に風を送るよう運転すると、効率良く空気を撹拌できる。
夏季などで、室内温度が著しく高くなっている場合、冷房を運転する前に室内の熱抜きを行うことで、より効果的な冷房効果を発揮する。
熱抜きをする場合、屋外に向けてサーキュレーターを運転し、部屋の空気を外に追い出すように配置する。これで室内が負圧になるため、室温が高い部屋以外の場所から、外気が流入できる。
エアコンを冷房運転する場合、一定方向に冷気が溜まりやすいため、エアコンの冷気が当たる壁に向けてサーキュレーターの風を当てると、高い風速により冷気が拡散されて温度ムラを改善し、部屋全体の温度を効率良く下げられる。
エアコンの設置されている反対方向から、エアコンに向けてサーキュレーターを運転することで、上部に溜まってしまいやすい暖気を効率良く拡散できる。サーキュレーター本体への暖気誘引と、高い風速による拡散効果で、部屋全体がまんべんなく暖かくなり、温度ムラの改善を図ることができる。
一般的な床置き扇風機であれば、弱運転で20~30W、強運転で40~50W程度の消費電力となる。毎日10時間、扇風機を強運転で50W消費している場合の電気料金を計算する。
消費電力50W(0.05kW)、1kWhあたりの電気料金を32円として計算すると、1時間あたりの電気料金は 0.05kW × 1h × 32円/kWh = 1.6円 となる。1日に10時間運転したとしても、16円の電気料金であり非常に安価であると考えられる。エアコンは暖房や冷房運転によりコンプレッサーが稼働していると500~700Wという大きな電力が使われるため、これと比較すると省エネルギー効果は大きいといえる。
扇風機・サーキュレーター共に、近傍から人体に風を当て続けると、体温調整機能がバランスを崩し体調を崩すことがある。就寝中に近傍から風を当て続けると過剰に水分が失われ、脱水症状の問題を発生するので、使用時には注意が必要である。扇風機と比べてサーキュレーターを使う場合、風量や風速が大きいという特徴があるので、人体に直接長時間当てた場合、扇風機よりも負担が大きくなる。サーキュレーターは滞留した空気を運搬する用途とするのが望ましい。
部屋の空気を循環させる目的で、扇風機やサーキュレーターを24時間連続運転させたままにする例が多数あるが、これは危険な使い方となるため避けるべきである。扇風機やサーキュレーターは電動モーターが内蔵された電動機であり、回転部分は熱を発生させている。この回転部分は長期使用による部品劣化や、汚れの蓄積による回転不良が発生しやすく、回転不良となったモーターは流れる電流が発生し、異常過熱を引き起こす原因となる。
電動機が異常過熱した場合、機器の焼損や発火につながり火災のおそれがある。人が近くに居れば異音や臭気等の発生により異常事態に気付ける可能性が高いが、無人状態ではこれら異常に気付くことなく発熱が継続してしまうため、異常発熱、発煙、発火と進行しても気づくことがなく危険である。
そもそもの考え方として、扇風機やサーキュレーターは24時間連続運転を前提とした設計はされておらず、JISで定められた運転時間は1日あたり8時間が必要とされる性能として定められている。この規格を逸脱することがすぐに故障につながるものではないが、1日8時間の運転で4年程度の設計寿命の機器を、24時間運転させるということは、単純計算としても1.3年で設計寿命を超過してしまうと考えられる。
扇風機は10年程度が一般的な寿命といわれている。メーカーの取扱説明書に記載されている事が多いため確認すると良い。扇風機はその性能を、JIS C 9921-1(扇風機の設計上の標準使用期間を設定するための標準使用条件)で規定している。運転時間8時間 / 日、運転回数5回/日、運転日数110日/年、スイッチ操作回数550回/年、首振運転割合100%となっているため、これを超えない運転条件であれば、安全上支障なく使用できるものとされている。
過度にスイッチを入り切りしたり、24時間連続運転するような使い方は、機器に期待できる寿命を著しく短くしてしまう可能性がある。使用方法に十分注意を要する。
エアコン等で空調された室内温度は、外気の導入を止めることで長期間に渡り維持可能であるが、換気を行わなければ室内のCO2濃度が高まり、頭痛など体調不良の原因となる。
室温と大きく違う温度の外気を導入すると、エアコンは室内の温度を調整しなければならないため、電気エネルギーを大きく消費してコンプレッサーを稼働させる。住宅においては、換気扇やレンジフードを回すと一気に室内空気が換気されるが、過度に換気をしてしまうと電気エネルギーが無駄となってしまう。
キッチンの換気扇やレンジフードは、調理時における蒸気や油煙を外部に放出するため、大きな風量を外部から取り入れ、室内空気を調理時の煙とともに外部に放出する。外気の導入は空調された室温を大きく乱し、エアコンは室温を調整しようとしてコンプレッサーを稼働させることにつながり、消費電力が大きくなってしまう。
調理などの大きな換気が必須な状況でなければ、これら大風量の換気設備は停止させることが望ましい。レンジフードや換気扇を24時間換気として利用する場合は、弱運転に設定し、外気の導入を最低限にすることが省エネにつながる。
家庭用に設置されている30cm程度の換気扇であれば、消費電力は20~30W程度である。扇風機の弱運転と同じ程度の消費電力であり、1時間あたりの電気料金は 0.03kW × 1h × 32円/kWh = 0.96円 となる。
比較的風量が大きなレンジフードは、消費電力が大きく、強運転で80~90Wの消費電力となる。1時間あたりの電気料金は 0.09kW × 1h × 32円/kWh = 2.88円 となる。
扇風機、換気扇、レンジフードなど、モーターの回転によって気流を発生させる電気機器は、油脂やホコリで汚れていると、モーターの正常な回転を阻害し消費電力が大きくなる。所定の風量を確保できず異常発熱につながるので、定期的な清掃をすることが望まれる。
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