電力自由化 | 切り替えのメリットとデメリット・事業者撤退の危険性

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電力自由化とは

電力自由化とは、家庭用、業務用として供給される「電気」を、決められた電力会社以外からも購入できるように、制度化されたものである。

電気を購入する場合、東京電力や中部電力、関西電力など、9つある電力会社のいずれかから供給を受けることが必須であるが、電力自由化により、これら電力会社以外の事業者からも購入可能である。

以前より、家庭用以外の電力は一部が自由化されており、大規模な業務施設で採用される「特別高圧」や「高圧」の受電方式では、すでに電力自由化により「一括受電」といったメニューの選択が可能である。高圧受電の事前協議を行うと、電力会社は電力購入先について確認を行うのが通常である。これが一般家庭の個別契約に対しても開放され、小売事業者を自由に選択できる。

住まいと電気のイメージ写真

発電・送電・小売部門ごとの役割

電力は「発電」「送配電」「小売」の3部門で成立しており、それぞれ自由化されている範囲が異なる。

発電部門の役割

電気を作る「発電所」が該当する。広く知られている火力発電や水力発電、原子力発電、地熱発電など、電気を作る部門が発電部門である。既に電力自由化がなされており、9つの電力会社以外の発電事業者が、電気を作って供給している。

送配電部門の役割

発電所から作られた電力を、安全に送るための送電線、配電線、変電所などを管理する部門である。発電所から送られてくる電気は、周波数や電圧などが一定ではないが、停電や事故が発生しないように調整する部門となる。

安定供給に求められる、高い信頼性を確保するため、電力自由化においても送電線、配電線の部門については広い自由化がなされておらず、特定事業者のみ対応可能である。自由化の対象は、発電部門・小売部門のみとなる。

小売部門の役割

発電所で作られ、総配電線を通って供給された電力を、ビル、工場、マンション、住宅に届けて販売する部門である。工場やビル、大規模マンションなど、業務用の分野は電力自由化によりPPSといった選択が可能であるが、個人住宅は電力会社が小売部門を担っているため、決められたいくつかの契約メニューを選ぶことしかできない。

PPSは「Power Producer and Supplier」の略語であり、9つの電力会社以外の発電事業者で、電力分野に新規事業者として参入した「新電力事業者」である。近年では既存の電力外車と明確に区分するため「新電力」という名称でも呼ばれている。

多くの事業者が全国に渡り事業展開しており、東京電力や関西電力では「画一的な電力メニュー」のみに留まっていたのに対し、色々な割引メニューを駆使して、電力会社との優位性を見出して事業展開している。

PPSを選択しても、原則として「新規の投資が発生しない」「電力の安定性は確保される」ため、需要家としては、料金面のメリットだけを優先して判断することも可能である。

平成28年の電力自由化により、小売部門の自由化がスタートし、ガス会社や通信会社などが小売部門に参入し、様々な付帯サービスが提供できる環境が整えられる。小売事業者は、自らが発電所を運営しつつ、小売も一貫して行っている場合もあるが「一般電気事業者」から購入し、再販している場合がほとんどである。

高圧受電における新築物件での新電力

PPSの営業方法の多くが「今の電気の使い方であれば、既存の電力会社と比べて、○○%の得である。」というスタイルである。一括受電方式とは違い、新築の建物で、当初から小売について新電力を採用する事例はほとんどない。

既存の電力会社と比較して、年間の電力料金が安価となるか判断するには、まず1年以上既存の電力会社と契約し、契約電力の値、照明やコンセント、空調の消費電力、最大負荷の発生時間帯など、多くの電力データを確保して、新電力事業者のコンサルを受けるのが確実である。どの新電力事業者を選択すれば、より金額的メリットがあるか判断するのが重要である。

電力自由化によるメリット

電力会社以外の事業者が多数参入され「電気料金の割引メニューが多様化する」「生活スタイルに適した料金契約が選べる」「使った電力に応じたポイントサービスが受けられる」といったメリットが期待されている。

電力自由化に伴い、従来の電力量だけを計測する電力メーターから、スマートメーターと呼ばれる通信機能を持った電力メーターに切り替えられる。どの時間帯にどれだけ電力を使用しているかを判別できるため、料金体系の設定だけでなく、利用者に適した契約メニューを提案する「省エネ診断」も可能とされている。

地域に限った電力購入ではなく「太陽光や風力発電を主体に購入」「地元や故郷が小売している電力を購入」など、電気の購入先を選択できる。東京にいながら関西の電力を購入するなど、地域を飛び越えた購入も可能である。

競争の原理が働けば、電力も安価になる可能性がある。多数の事業者が参入し、十分な競争が行われた状態であれば、需要家に対して利益となるが、競争が不十分なまま自由化されると、逆に電気料金が高くなる可能性もある。これを回避するため、2020年までは現在設定されている料金体系を継続すると発表されている。

電気料金の割引メニューが多様化する

電力の購入先は電力会社に限られており、料金割引は「使用する時間帯」に応じた割引のほか「電力会社が行っている事業に関連する商品を導入」した場合に限った割引体系である。エコキュートや電化厨房、IHクッキングヒーターなどを用いた「全電化」による割引や、氷蓄熱(エコアイス)によるピークシフトによる割引が挙げられる。

電力自由化により、全電化による割引だけでなく、ガス会社提供による小売を選択すれば「ガス料金」割引などが組み合わせられ、携帯電話会社であれば「電話料金」「通信料金」の割引が組み合わせられる。

生活スタイルに適した料金体系が選べる

電力会社が単独で提供している料金メニューは、東京電力を例として「季節別時間帯別」「おとくなナイト」など、電気を使用する季節や時間帯に応じた料金メニューに限られている。

電力自由化により多くの事業者が参入すると、電気を使う時間帯、全電化機器を使用しているなど限られた割引のほかに、ガスの利用、携帯電話の利用といった項目を組み合わせ、ライフスタイルに合わせた料金メニューの選択が可能である。

賃貸・分譲マンションのどちらでも購入先を選べる

電力自由化は、戸建住宅やマンションなど、住んでいる環境に左右されずに選択可能である。数十~数百世帯がひとつの建物内に入居しているマンションであっても、電気の契約は、家庭ごとに個別であり、100戸のマンションであれば100契約が個別に締結されている。

100戸のマンションであれば、電力メーターは100個、マンションの部屋ごとに設置されている。この電力メーターひとつに対して電力契約が結ばれるので、マンションであっても、個別のメーター交換が可能であれば、自由に電力会社を選定できる。

マンション内に設けられている電力メーター(電力量計)は電力会社の資産であり、マンションの管理組合の所有ではない。電力会社と個別に契約し、電力会社が設置するものであり、メーター交換の許可をマンションに対して行うことは通常ない。

電力会社の検針員が毎月の電力量を測定し、その数値によって電気代が請求される。このメーターは建物の外側に設置されており、スマートメーターに交換するのも簡単である。

マンションが「一括受電方式」と呼ばれる受電を行っている場合は、マンション全体で1つの契約となっているため、電力会社を選ぶことはできない。一括受電方式では、マンションに対して単価の安い高圧幹線を引き込んでいるため、エレベーターや共用部照明の電気料金を低減でき、管理費や修繕積立金の負担を軽減するという思想で運用されている契約である。高圧の電力自由化の恩恵を受けていると考えれば良い。

一括受電方式のマンションでない限り、個々の世帯がそれぞれ自由に電力会社を選定できる。これは賃貸マンションであっても同じで、電力会社から直接「電気ご使用量のお知らせ」の通知が届く限り、個別に契約が可能である。

使った電力に応じたポイントサービスが受けられる

使った電気に応じて、各種ポイントが貯まるというポイントサービス連携もスタートする。TポイントやPontaポイントなど、広く普及しているポイントサービスのほか、事業者参入によりさらに種類が増えることが予想される。

身近で利用しているポイントサービスにあわせて選択すれば、効率良くポイントを貯められる。日常的に多く使用している他サービスと組み合わせて、大きな割引を得られる可能性がある。

小売事業者から省エネ診断を受けられる

電力自由化によって電気の購入先を変更しても、電気が発電所から送られ、送電線や配電線を通って送られることに変わりはないが、設けられている電力量計(電力メーター)が旧式の製品であった場合「スマートメーター」と呼ばれる最新の電力量計に交換される。

スマートメーターは、通信機能を持っている高機能な電力メーターであり、電気の使用量や、重負荷となる時間帯を遠隔で計測できる製品である。昼間に電気を多く使用するのか、平日と休日のどちらが電気を多く使用するのか、ライフスタイルによる電気の使用時間の違いをデータとして計測する。この蓄積されたデータを活用して、どのメニューがより安価であるか、どの部分で省エネルギーを図られるか、といった省エネルギー診断を受けられる。

スマートメーターを設置した需要家は、計測データが遠隔通信されるため、検針員が数値を目視確認する必要がなくなるのも利点のひとつである。

電気の購入先を自由に選択できる

低圧受電の電気の購入先は、その建物がある地域が管轄している電力会社に限られ、東京に住んでいれば「東京電力」が電気の購入先である。電力自由化によって電力会社以外の事業者から電気が購入できるので「風力や太陽光など、再生可能エネルギー主体の小売事業者から購入する」といった選択が可能である。

一般的な電力会社から購入せず、できる限り「再生可能エネルギーを主体としている電力会社」から優先的に購入して、その環境開発や研究に対して協力する・支持を表明する、といった利用方法も可能である。

電力会社や民間の電力事業者ではなく、自治体や地元企業が運営している電力事業者から電気を購入できれば、ふるさと支援につながる可能性もある。

小売電気事業者は、自らが販売する電力の「電源構成」「二酸化炭素排出係数」の情報を開示すことが推奨事項として求められているため、購入する対象の小売事業者がどのようなポリシーで電力を販売しているのか事前に知られる。発電はどこで行われているのか、何の発電設備を使用しているのか、どれだけ環境に貢献しているかなども、電力会社選定の基準となる。

電力自由化によるデメリットと注意点

電力自由化に際して、個人が新たに負担を受けることはほとんどなく、何もしなければ現在の電力会社との契約が継続される。2020年3月までの期間は、現在設定されている「従量電灯」の一般的契約体系は維持される。

事業者を変更する場合であっても、分電盤を新設したり、電線を新規に引き込むこともないが、デメリットや注意点がいくつか存在する。下記、電力自由化に伴う注意点、誤解されやすい内容、デメリットなどを解説する。

電気購入先が事業停止しても電気供給は継続する

新たに選択した電気購入先である小売業者が、事業を中止したり、倒産してしまった場合でも、既存の電力会社が不足分の電力調達を行うため、ただちに電気の供給が停止することはない。

事業者が不在となった状態で放置するわけにはいかず、次の電力会社を選定し、契約しなければならない。セーフティネットとして、既存の電力会社が給電を続けるため、倒産する新電力事業者と契約している需要家だけが被害を受けるということはないが、電力会社を選ぶことが負担となることも考えられる。

電力供給先が小規模であっても品質は変わらない

自由化されるのは「小売部門」であり、電気を作る発電部門や、送配電の部門には大きな変更はない。小規模な事業者を選定しても、送電事業者は既存の電力会社が担っているため、電気が止まりやすくなったり、不安定な電力品質となることはない。

小規模な事業者が長期にわたって電力の小売事業を継続するかは不明であり、採算が合わずに途中で事業撤退を決めた場合は、新たに電気の小売事業者を選択するという手間が増える。電力品質が低下するのではなく、事務的な手続きが増えるという意味で、デメリットとして挙げられる。

スマートメーターへの交換が必要(原則無償)

従来型の電力量計では、需要家の電力使用状況の吸い上げができないため、電力自由化による恩恵を受けられない。旧式の電力量計を使用している需要家では、古い電力量計のスマートメーターへの交換が必要である。

小売電気事業者と契約すると、送配電事業者である電力会社に連絡が届き、スマートメーターの交換が原則として無償で行われる。需要家である個人が、スマートメーター交換費用を負担することはないし、電力会社に解約や、契約変更の手続きを直接依頼することもない。

スマートメーターの交換を「原則として無償」と記載したのは、場合によって有償となる、ということを踏まえたものである。

スマートメーター交換費用が有償となる事「メーター固定用の下地板が割れていて、メーターがそのままでは取り付けられないため、新品の下地板に交換する必要があった」「電線が古く損傷しており、新しい電線に引き換えなければ危険を伴う」「個人の都合で、元のメーターの位置ではない場所に設置したい」など、単純な「メーター交換のみ」に留まらない工事が発生した場合、メーター交換に負担金が発生することが考えられる。

契約期間未達による違約金発生の可能性

電力の小売を受ける場合、電気の使用開始から1年以内に契約解除や契約変更をすると、違約金が発生するおそれがある。

引っ越しなど、やむを得ない事情でない限り「契約したプランが思ったよりお得ではなかった」といった理由では、小売事業者を変更できないよう設定されているのが通常である。契約内容を十分確認し、違約金が発生しないように十分な事前検討が不可欠である。

無登録での電気販売は不可

電力自由化といっても、個人邸宅に設置した太陽光発電や風力発電を、隣戸に配ることができるという意味ではない。通常、電力は「1敷地1引込」が原則であり、引き込んだ電力を隣地に供給するのは契約違反となる。無断で電力を販売すると、無登録販売として摘発される。小売電気事業者の登録を行い、法令を準拠した運用が必要である。

過剰な勧誘を受ける可能性が高まる

小売事業者の変更に関する競争はすでに始まっており「個人が事業者を変更できる」という性質上、勧誘が激化するのは避けられない。資源エネルギー庁では登録小売電気事業者一覧を公開しているが、小売電気事業者から取次や代理販売を委託されている業者の場合、リストに記載がないことも考えられる。

悪意のある者が、所在を偽って勧誘するおそれも考えられるので、十分な注意が必要である。

プランやメニューが多く選択手続きが負担

電力自由化に伴って参入した新事業者は極めて多く、従来は電気料金に対する選択はほとんどなかったのに対し、どのキャリアと携帯電話やスマートフォンの契約をしているか、ガスを併用で引き込んでいるか、ポイントカード割引率など、多くの抱合せプランがあり「最もお得なプラン」を見出すのが極めて困難である。

多くの新電力事業者が自らのウェブサイトなどで電力シミュレーションツールを公開し、そのほとんどが「電力会社から乗り換えると5~10%安価である。」といった結果である。コンサル会社に依頼しても、目論見通りの割引率を達成できるとは限らない。「違うプランを選んだほうが安価だったのでは」という意識が働くこともあり、精神的負担が増えてしまう可能性がある。

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