電気設備の知識と技術 > 電気の基礎知識 > 導体・半導体・絶縁体の違い
物質が電気を通せるかを基準として「導体」「半導体」「絶縁体」に区分される。電気を良く通す物質は導体、通さない物質は絶縁体である。半導体は少々特殊で、導体と絶縁体の中間に位置している。
電気設備の分野では、導体はケーブルや電線の心線部分に用いられ、絶縁体は大地への漏洩を防ぐため、ケーブルの周囲に被覆された保護材として用いられる。
半導体は温度により、導体にも絶縁体にも変化する特殊な性質を持っており、LED照明など様々な設備に活用されている。
導体、半導体、絶縁体の区分は、電気の流れやすさ、通しやすさによって左右される。電気の流れやすさは自由電子の数に関係しており、自由電子の数が多いほど電気は通りやすく、自由電子の数が少ないほど、電気を通しにくい。
銅やアルミニウムなど、電線によく使用される物質は導体と呼ばれる。自由電子の数が多く、電気を良く通す物質として、ケーブルの心線に用いられる。金や銀、鉄なども導体である。金属以外の導体で代表的なものに黒鉛がある。黒鉛は金属ではないが、電気を良く通すという性質がある。
銅やアルミニウムなど、電気が通しやすく、かつ安価で調達が容易な素材は、電路のための材料として利用されている。大電流を流す電力ケーブル、通信電線路となる弱電ケーブル、プリント基板の導電部分でも活用されている。
一般的には、電気抵抗が少ないほど良質な導体として分類される。銅やアルミと比較して、銀は伝導率が非常に高いという特徴を持っているが、希少な金属なため多用すると製造コストが高くなるため、大量の電流を流すケーブルの電線路として使用することはない。電子回路や継電器の動作など、小電流で精密な動作を行う分野での利用に限られる。
銅は伝導率が高く、加工が容易でコスト面も安価という特徴があるので、大電流を流す電力ケーブルのほとんどは、導体として銅を選定する。鉄は銅・アルミニウムと比べると抵抗値が高いため、ケーブルの材料としては使われない。
アルミニウムは銅よりも伝導率が悪く、多くの電流を流せないが、銅よりも軽量であるという利点を生かして送電線に用いられる。送電線は数百メートルの鉄塔間を架空敷設するため、導体としての性能のほか、軽量で強度が高いことも同様に重要視される。
水は、一般的に電気を通す「導体」として位置付けられているが、不純物をまったく含まない純水は絶縁体となり、電気が流れない。純水に食塩を混ぜると電気が流れる。水に食塩が溶けこむことで、イオンが電離してプラス極とマイナス極に分かれるため、電流が流れて導体となる。
空気の気体は絶縁体に位置付けられる。最も簡単な絶縁は、導体同士を離隔することである。空気は絶縁性能が非常に高く、高い絶縁性能を確保できる。
空気に対して大きな電圧を印加すると、絶縁が破壊され、強い光と熱を発しながら電流が流れる。落雷によって空気中に大電圧が発生した場合「アーク放電」を伴う電流が、光と熱を生み出しながら大地に向かって流れる。
本来は絶縁体として働く「空気」も、電圧が高くなると絶縁性能を失い、導体として電流が流れてしまう。
自由電子の移動が少ない物質は、絶縁体として分類され、電気を流せない。ゴムやガラスなどは電気を通さない物質であり、絶縁体に分類されている。
絶縁体は、電子が束縛されており自由電子がほとんどない状態のため、よほど高い電圧を印加しなければ自由電子が発生しない。ガラス・ゴムは代表的な絶縁体であるが、プラスチック、木、油なども絶縁体であり、高い電圧を印加しなければ電子が動かない。
「エボナイト」と呼ばれる硬質ゴムも、絶縁体として広く知られている。合成樹脂としての歴史が古く、理科や物理の実験では、エボナイト棒を用いて静電気実験が行われている。
純水も絶縁体に位置付けられており、不純物が含有されない限りは電気が流れないため、絶縁体として見なせる。塩類が含まれていると絶縁性が失われてしまい、水が導体となるため注意が必要である。
絶縁体は、電気の流れをせき止め、回路を絶縁するために用いられる材料として位置付けられる。電力会社が発電した電気は、発電所から変電所を通り、各家庭やビルに送られるが、電気が大地に流れ込まないよう絶縁が施されている。
送電線は、数十万ボルトという極めて高い電圧が印加されており、ゴムやビニルによる絶縁はほとんど効果がない。送電線レベルの絶縁は、大地や電線同士との離隔を十分に確保するという「空気を絶縁体とする」方式で、絶縁が図られている。
非常に高い電圧を印加すれば、空気の絶縁が破壊されて電気が流れてしまうのは前述した通りである。電圧に応じて、電線同士の離隔を十分に確保すれば、電気が互いの電線に伝わったり、大地に逃げることはない。
「送電線の付近で凧揚げなどをしてはならない」というのは、空気で絶縁されている電線同士が、凧糸によって導通状態になることを防ぐほか、凧糸を伝わって大地に大電流が流れ、人体を通り抜けて感電するという事故を防いでいる。
半導体は、導体と絶縁体の両方の特性を持っており、温度によって絶縁性能が変化する特殊な導体として分類される。
シリコンは半導体の代表的な物質で、低温では絶縁体の性質をもっており、シリコンの温度が上昇することに自由電子の移動が活発になり、電流が流れやすくなるという性質がある。トランジスタやICの素材として広く使用されている物質である。
そもそも純粋なシリコンは電気を流しにくい性質があるが、シリコンにホウ素など3価の元素を加えることで「p型半導体」となり結晶内部に電子が欠落した「正孔(ホール)」が生成され、正電荷のように移動することが可能になって電流が流れる。
ヒ素など、5価の元素を加えると「n型半導体」となり、ダイオードやトランジスタの原料となる。n型半導体は結晶内部に自由電子が生まれ、負電荷としての役割を担い、p型半導体と同様に電流が流れる。
半導体は特殊な性質が活用され、電子部品材料として広く利用されている。
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