乾電池の種類と仕組み | マンガン・アルカリ・リチウム電池の違い

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乾電池の仕組み

電池は、電気を蓄え、必要な際に放電するという機能がある。放電によって発生する電気は「直流」であり、乾電池を使って動作する電気機器は、直流で動作するよう作られている。

乾電池の仕組みは、亜鉛の筒をマイナス極、中心に入っている炭素棒や酸化マンガンをプラス極とし、内部に充填した電解質の反応にマイナス極からプラス極へ電子を動かす。亜鉛の筒と炭素棒だけでは当然反応しないため、反応を促進させるための材料として電解質が充填されている。

鉛蓄電池のように、電解質が液体では時計に入れられず、テレビのリモコンとしても使えない。乾電池に充填されている電解質は、不織布に染み込ませて固体化してあり、保存や運搬、取付が非常に簡単である。

乾電池を分解して中の電解質を見てみると、粉末状の固体が入っていることがわかる。「乾いた電解質」を使用していることが、乾電池といわれる由来である。

単3電池の写真

乾電池の容量

乾電池の単1・単2・単3…という規格は、電池の容量とサイズを規格化している。大容量の電気機器には、単1電池を使用することで効率よく、長時間運転できる。小型化されている電気機器では、運転時間は短くなるが単4や単5電池を使用することで、機器本体を小さくできる。

パナソニックのアルカリ乾電池を参考に比較してみると、単1電池の場合100mAの電流では、150時間後に終止電圧となるが、単3電池の場合100mAの電流では、20時間程度で終止電圧となる。単の数字が小さいほど長時間の運用に耐え、瞬間的な大電流にも耐性がある。

余談であるが、マンガン乾電池は黒色を超高性能、赤色を高性能と区分しており、黒色の方が、同じマンガン乾電池でも長時間運用・瞬間的な大電流を流す性能が高くなる。新品の乾電池を使用する場合、赤と黒は性能が違うので混在させてはならない。

マンガン乾電池の種類と構造

マンガン乾電池は、1個あたり1.5Vの電圧を供給できる乾電池で、テレビリモコンや時計など、微小な電力を長時間使用する機器に適している。従来の単価はアルカリ電池の半額程度であるが、今ではアルカリ乾電池の単価がかなり下がっており、大きな差が感じられなくなった。

マンガン乾電池は掛け時計や置き時計など小さな電力で長時間動く電気機器や、大きな電力を必要とする場合でもそれが瞬間的であるもの(ガスコンロ点火用等)に使用する乾電池として適している。乾電池の中では安価とされている。

マンガン乾電池は、中心に集電体と呼ばれる炭素棒があり、正極活物質に二酸化マンガン、負極活物質に亜鉛を充填し、電解液に塩化亜鉛や塩化アンモニウムを使用した一次電池で、充電できない。正極と負極は互いがセパレータによって区分されている。炭素棒、正極、負極は絶縁チューブによって覆われ、外装に金属ジャケットを施している。

マンガン乾電池の電解液である塩化亜鉛水溶液は、その性質がほぼ中性であるため、万が一液漏れし人体に接触しても被害を小さく抑えられる。電気機器の内部で液漏れが発生しても、粉が吹く状態とはなるが金属を腐食させることもなく比較的安全である。

公称電圧は1.5Vで、放電特性や容量により「普及品」「高性能品」「超高性能品」というグレード分類がなされている。

アルカリ乾電池の種類と構造

アルカリ乾電池は、マンガン乾電池よりも高出力で、瞬時に大出力が必要なカメラのストロボや、モーター等の回転機械の駆動用に適している乾電池である。ミュージックプレイヤーやラジコンカーなど、モーターを長時間駆動させる電気機器に適している。

アルカリ乾電池は、集電体にメッキ処理が施された真鍮棒が使用され、正極活物質に二酸化マンガン、負極活物質に亜鉛、電解液に苛性アルカリを使用した一次電池で、マンガン乾電池と同様に充電できない。自然放電が少なく、長期の保存に適している。公称電圧はマンガン電池と同様、1.5Vである。

アルカリ乾電池の電解液は、アルカリ濃度の高い水酸化カリウム水溶液が使用されているため、液漏れ時の被害が大きくなる。電気機器内部で液漏れが発生すると、端子部の腐食はもちろん、人体に触れることで皮膚を痛める可能性がある。

テレビリモコンや掛け時計、ガスコンロ点火用など、長期間使用する可能性がある電気機器では、アルカリ乾電池ではなくマンガン乾電池を使用するのが望まれる。万が一の液漏れに際しても、マンガン電池であれば内部端子の腐食等を最小限に抑えられる。

オキシライド乾電池(生産終了品)

オキシライド乾電池は、アルカリ電池の後継として販売された乾電池で、電圧は0.1V程度高い1.6Vで供給される。カメラのストロボ用として使われ、アルカリ乾電池よりも多くの枚数を撮影できるが、それ以外の用途では電圧の上昇により、寿命を短くしたり故障原因になったりするため、使い方に注意が必要である。

長時間微弱電流を供給する機器には向かないため、オキシライド乾電池を使用せず、従来のマンガン電池やアルカリ電池を使用すべきとされる。

エボルタ乾電池(パナソニック)

アルカリ乾電池の一種で、きわめて長い放電時間と使用推奨期限を持つ乾電池である。低負荷電流領域から高負荷電流領域まで、総合性能が高められている。

正極材料にオキシ水酸化チタンを添加することで、二酸化マンガンの反応促進を図り、負極材料の亜鉛の純度・粉末度を高めることで、反応性が向上している。初期電圧は1.6V、公称電圧は1.5Vとなっており、アルカリ乾電池とまったく同様に使用できる。

リチウム電池の種類と構造

リチウム電池には、使用開始から終止に至るまでの電圧が安定している酸化銀電池、携帯ゲーム機に多用されるアルカリボタン電池、パソコンやデッキ類の時計機能やメモリー保持に利用されるコイン形リチウム電池などがある。

リチウム電池は液漏れに対して強いが、過放電、逆装填、ショート、新旧同時使用など、適正ではない使い方をすると液漏れを発生する危険性は同じである。

酸化銀電池

酸化銀電池は、使用開始時と終止電圧がほぼ同一という特徴があるため、時計や電子体温計など、精密な動作が必要な電気機器用の電池として利用されている。経年劣化が極めて少なく、20年という長期保存も可能である。他の電池より高価な電池として分類されている。

正極に酸化銀、負極に亜鉛が使用されており、お互いはセパレータで区分されている。公称電圧は1.55Vである。一般用として「SR44」といった名称で流通している。

名称として「SR○○」「SR○○W」「SR○○SW」といった表記がされているが「SR○○」のような無表記製品は一般用途「SR○○W」は腕時計用途でバックライトやアラームなど多機能腕時計に向くもの「SR○○SW」とアナログ時計など指針を動かすだけ腕時計に向くもの、という使い分けがされている。用途と違う電池を使用すると適切な時間計測ができなかったり、消耗が激しくなるといった不具合につながるため注意が必要である。

アルカリボタン電池

アルカリボタン電池は、酸化銀電池と似た形状と電圧を持っているが、正極に酸化銀ではなく二酸化マンガンを使用している。生産コストを抑えられるが、酸化銀電池の特徴である電圧保持性能がなく、放電により電圧が低下していく。

時計など精密動作を求める電気機器への利用は避け、携帯ゲーム機や万歩計など、電圧の低下が影響を及ぼさない電気機器の利用が推奨される。一般用として「LR44」といった名称で流通している。

コイン形リチウム電池

ビデオデッキやパソコン、炊飯器など、電気機器のメモリー保持や時計を動作させるために多用されているリチウム電池である。利用範囲は極めて幅広く、リモコン、電子辞書、万歩計など多様な電気機器の内蔵電池として採用されている。

正極に二酸化マンガン、負極にリチウムを用いたボタン電池で、公称電圧は3V、終止電圧は2Vである。一般用として「CR2032」といった名称で流通している。

乾電池使用の注意点

乾電池の使用方法を誤ると、乾電池内部の電解液が漏れだしたり、破裂するおそれがある。この電解質が人体の皮膚に触れると悪影響を及ぼす。

乾電池の過放電

乾電池は、新しいものと古いものを同時使用できない。新旧の乾電池を混ぜて使用すると、容量の多い新しい乾電池と、容量の少ない古い乾電池が同時に電流を流すため、古い乾電池の方が先に切れてしまう。

この「電池が切れるポイント」の電圧を放電終止電圧と呼ぶが、放電終止電圧を迎えた乾電池に対し、新しい乾電池から引き続き電流を流すと、古い電池は放電終止電圧を下回って電流を流し続け、古い側の乾電池が過放電状態となる。

過放電状態になった乾電池は、液漏れ、破裂などを引き起こす原因となる。一般にいわれている「新旧の乾電池を入れると古い側が充電されるためNG」ということが主たる理由ではない。規定された放電終止電圧に至っても、放電を継続することによる過放電が原因により、負極の亜鉛筒に穴が空き、乾電池が液漏れを起こしたり、破裂する危険性が理由である。

アルカリ乾電池では電圧が0V以下になる「転極」という現象が発生し、乾電池からガスが大量発生する。マンガン乾電池では、亜鉛筒が延々と消費され続け、最後には亜鉛筒に穴が開き、内容物が漏れだすおそれがある。

使用していない電気機器の乾電池は、抜いておくことが推奨される。乾電池を入れたままにしていくと、待機電力として乾電池の放電が継続されてしまい、終止電圧を超えて、電圧が低下する。乾電池の放電終止電圧は1.0~0.9Vを目安にし、それ以上の放電は過放電と判断するのが良い。テスターなどを持っていれば、電池の電圧を測定するのもひとつの方法である。

乾電池の冷蔵保管

電池を冷やして保管すると寿命が長くなると考え、冷蔵庫内収容するのは危険である。冷蔵庫内に保管すると、使用時に電池に結露が発生して絶縁不良を起こしたり、短絡につながる。

低温のまま使用すると放電特性が悪くなるため、電池の容量が低下する。冷蔵庫内に入れるのはやめ、室温に近く直射日光の当たらない冷暗所に保管するのが良い。通常、温度は10~25℃で保管するのが最も適正である。

乾電池の短絡

乾電池のプラスとマイナスを導通させた場合、コンセントの短絡に見られるようなアークの発生はないものの、電子の流れは乾電池内部の抵抗で熱に変わり、異常発熱が発生する。乾電池本体の構造が発熱で破壊されると、充填されている電解質の液漏れや、ガスの異常発生により乾電池が破裂する。

ヘアピンやクリップなどが乾電池と接触しているだけで、短絡状態発生のおそれがある。乾電池を廃棄する場合は、極の部分にセロハンテープを貼るなどして、乾電池の短絡電路が構成されないことが望まれる。乾電池と鉄や銅の部品と、同じ場所には保管しないことが大切である。使用済みの乾電池は、端子部分にセロテープ等を貼り付け、絶縁するのが良い。

一次電池の充電

充電できず、一回だけの使いきり乾電池は一次電池と呼ばれている。充電してはならない乾電池を充電すると液漏れや破裂の原因となる。一次電池は、マンガン乾電池やアルカリ乾電池が代表的である。

一次電池を充電できると記載した充電器が販売されているが、メーカーが注意事項で「充電してはならない」と記載されている電池を充電し事故が発生しても、補償されることがない。電池の破裂・液漏れによって火災、皮膚の火傷などを引き起こす原因になるため、一次電池を充電するのは避ける。

従来生産されていたニッケルカドミウム乾電池や、近年普及しているニッケル水素乾電池は、下記の化学反応を起こす。

それぞれ可逆反応のため、充電と放電を繰り返しても乾電池が腐食することなく、メーカーが保証している回数までの充放電を繰り返すことが可能である。

一次電池のマンガン乾電池やアルカリ乾電池は、基本的に不可逆反応なので、放電するともとに戻せない。充電しても加熱されるだけで、内部の電解液が爆発を防止するため漏れ出す。液漏れが発生しなかった場合、破裂してしまうことも考えられる。

アルカリ乾電池は電池反応「MnO2 + H2 + ZN → Mn(OH)2 + ZnO」の不可逆反応のため、充電器に入れて充電状態にしても、使用可能になる可能性は低いといえる。ここで可能性が低いとしたのは、完全放電をしていない限り、若干の電圧回復傾向が見られるためである。しかし、メーカー保証外かつ危険性が高いため、全く推奨できることではない。

意図しない充電状態の発生

一次電池は充電してはならない電池であるが、電池の装填によって思いがけず充電状態となってしまい、事故につながるおそれがある。多数の電池を直列に接続する電気機器の場合、電池の方向には注意が必要である。乾電池を8本入れる電気機器があり、7本を正常な方向に入れ、1本を誤って逆向きに入れてしまった場合、一次電池の充電事故につながる。

比較的低容量の電源でも動作するような電気機器であった場合、1本が逆向きになっていても動作してしまうので、正常に乾電池を装填したと勘違いして、乾電池を逆向きにしたまま使い続けてしまうことによる。

この状態では、逆向きに入っている乾電池1本が、逆向き電流による充電状態になるため、電池内部に異常反応が起こり、電池内部にガスが発生し、乾電池の液漏れや破裂の原因となる。

液漏れが発生した乾電池の写真

乾電池の処分方法と捨て方

マンガン乾電池やアルカリ乾電池は、水銀を使用しない製品が主流となっているため、一般ごみとして回収をしても環境に対する影響は小さい。現在、乾電池を全数リサイクルするという手法の有用性は確立されていない。

資源の再利用が環境に対して有用であり、かつリサイクルコストの負担を小さく抑えることが明確化されていないため、乾電池の回収方法は自治体が各々定めているのが現状である。

乾電池の廃棄方法は、自治体によって異なる。公共施設に設置されている乾電池回収ボックスを利用するか、大手家電店で実施している使用済み乾電池の回収を利用するのが一般的であるが、近くに回収場所がない場合、所定の方法にて処分する。

乾電池は他の電池と端子が接触すると、異常放電による液漏れや破裂につながるおそれがあるため、プラス極とマイナス極にセロハンテープやビニールテープを貼付し、電気的に絶縁するのが原則である。

 
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